龍智江子さん死去 「言葉にならない」 被爆者ら悼む声

 龍智江子さんの訃報に、生前交流のあった被爆者らからは悼む声が相次いだ。
 龍さんの被爆体験を聞き取り、証言集に掲載したことがある「長崎の証言の会」の森口貢事務局長(83)は「(犠牲になった)母親や弟の遺骨も何も持たずに大川市に行かれたことを、ひどく後悔されていた」と生前の様子を振り返った。「被爆で本当にすさまじい体験をした方がまた一人亡くなった。言葉にならない」と残念がった。
 10年ほど前、龍さんの被爆体験を基に紙芝居を作った長崎市の被爆者、三田村静子さん(78)。制作の際、大川市に何度も会いに行き、つらい経験を丁寧に話してもらった。「絶対に戦争はだめ」。何度もそう繰り返していたという。龍さんの紙芝居は今も長崎を訪れる修学旅行生らの前で披露している。「龍さんの反戦への思いをこれからも伝えていく」と、託された思いをかみしめた。
 写真を常設展示している長崎原爆資料館の篠崎桂子館長は「写真は被爆地の惨状を広く伝えている。亡くなられて大変残念に思うとともに、改めて75年という年月の経過を感じる。ご冥福をお祈りする」と語った。


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