尼崎のリケジョ、敵は「偏見と無理解」道のり語った 女性科学者の権威ある賞を受賞

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研究する姿がりりしい高垣菜式さん

パリに本社がある世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人・日本ロレアルは、2020年度の第15回「ロレアル―ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者4人を選出した。同グループは「世界は科学を必要としており、科学は女性を必要としている」との信念のもと、世界規模で女性科学者を支援している。

フランスのロレアル本社が主催する「ロレアル―ユネスコ女性科学賞」と並行し、日本国内の若手女性科学者支援や研究活動の奨励を目的にした「―日本奨励賞」を2005年に創設。生命・物質科学分野における博士後期課程在籍または進学予定の若手女性科学者を支援する奨学金制度で、受賞者はこれまでに59人にのぼる。

今年度の受賞者のひとりで、甲南大大学院自然科学研究科研究員の高垣菜式さん(なつね、28歳)は「信じられなかった。受賞を知らせるメールを開く手が震えた」と振り返る。人間と似た遺伝子を多く持つ線虫を使い、低温への耐性を研究。温度を感じる新たなメカニズムを発見し、人間への応用につながることが期待されている。

高垣さんは兵庫県尼崎市の出身で、現在も在住。幼い頃から生物が好きで、周囲がゲームで遊ぶのを尻目に虫補りに夢中になっていたという。近くの公園では飽き足らず、大阪府の服部緑地公園まで遠征。「ザリガニとか虫を捕っていました」とワイルドな幼少時を振り返る。

高校生になり、光合成の原理などを授業で教わるうちに科学の面白さを知った。大学院生で博士課程に進むか、就職するかという決断を迫られた時「博士課程に進まないことが後悔する。後悔しない方を選ぼう」と決意。大学4回生からの6年間にわたる研究の成果で、権威ある賞に輝いた。

「ロレアル―ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を受賞した高垣菜式さん

「女性なのに院生になるのか」。理系女子の心を折るのは、周囲の偏見と無理解だと力説する。高垣さんも祖母に、博士課程に進学することを理解してもらえなかった。研究者は男性の職業という偏見が、女性科学者の道をふさぐ。「支援が望みにくく、生活が苦しくなってしまう。成果がなくても、勉強したい女子学生への給付型奨学金を国や大学で構築してほしい」と、奨学金での後押しを望んだ。

結婚や出産、育児をしながらの研究に、不安を訴える女性科学者も多い。研究室をまとめる教授の理解度によって、育児などとの両立の可否が決まる現状を憂える。「やっていけるんだろうかという不安がある。私がいる研究室では、2人が出産や子育てをしながら研究している。産休や育休を理解してあげられる研究者になりたい」と不安を払拭するシステムの構築を願う。

休日には猫カフェや爬虫(はちゅう)類カフェに行くのが好きだという高垣さん。オフの日でも、生き物からは離れない。「受賞で自分の研究により自信を持つことができ、自分自身にも自信を持つことができた。女子学生もあきらめずに目指していってほしい」と、将来のリケジョたちにエールを送った。

<第15回「ロレアル―ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞者>
「物質科学」分野
・小野寺桃子、グラフェンを用いたテラヘルツ発光・光検出素子の実現と素子品質の向上に貢献
・藤代有絵子、電子スピン構造のトポロジー制御により、次世代の省エネルギー型磁気メモリデバイスの基盤構築に貢献
「生命科学」分野
・坂上沙央里、大規模ヒトゲノム解析により、日本人集団のゲノムの多様性を明らかにし、またヒトの健康寿命・病気リスクに関連するバイオマーカーの特定に貢献
・高垣菜式、温度を感じる新たな受容体を発見し、生物の温度感知メカニズムの解明に貢献

(まいどなニュース/デイリースポーツ・杉田 康人)