WRC:ラリージャパン実行委員会が会見。2020年は開催断念も「1年の猶予期間でより良い大会に」

 8月19日、2020年11月に予定されていたWRC世界ラリー選手権第8戦『ラリージャパン』の開催を断念するというアナウンスが、ラリージャパン2020実行委員会から伝えられた。2010年以来、10年ぶりの復活が期待されていた“WRC日本ラウンド”の中止決定について同委員会は21日、オンライン記者会見を開きその経緯を説明している。

 既報のとおり、今年の11月19~22日に愛知県と岐阜県の両県にまたがって実施される予定となっていたラリー競技の最高峰WRCの日本ラウンドは、世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの影響をうけてキャンセルされることになった。

 直接的な中止判断の根拠となったのは「WRCに携わるドライバーやチームクルーなど、多くの外国人スタッフの来日の目処が立たないことです」と会見に出席したラリージャパン2020実行委員会の高橋浩司 会長が説明した。

「同じ世界選手権であるF1日本グランプリが6月に中止発表して以来、我々も関係省庁に対してさまざまなヒアリングしてまいりました。そして、さまざまなアプローチを試みてまいりましたが、入国に関わるところは国の重要な政策であるということです」

「来年には1年延期された東京オリンピックも控えており、政府の方でスポーツ選手や関係者に対して特別な措置を検討しているようです。しかし、ラリージャパンは少なくとも300人の外国人を迎えなくてはなりません。そこまでの大規模なイベントに対応する措置を11月までに整えることは困難であると判断しました」

ラリージャパンのプレイベントとして行われたセントラルラリー愛知・岐阜2019の様子

 ラリージャパン2020実行委員会では、開催日の3カ月前となる今月19日を最終判断のタイミングとして念頭に置いていたという。

「セレモニアルスタートでラリージャパンが開幕する予定日からちょうど3カ月前にあたるのがプレスリリースを発行した日です。この3カ月前という期限を念頭に、私どもではさまざま調整や、感染拡大状況の推移を見守って参りました」と高橋氏。

「これ以上判断を引き伸ばすことは物流の観点から、またWRCのカレンダー再構築の観点からも影響が大きすぎると考えました」

「また、参加を検討してくださっている国内外のエントラントの皆さまや我々運営側にとっても経済的なロスが大きくなりすぎます。こうした日本の状況はFIA国際自動車連盟、WRCプロモーターにも理解していただくことができました」

■2021年の開催日は早ければ10月にも決定へ

 残念ながら今季の復活開催は幻となったラリージャパンだが、世界選手権を統括するFIAはラリージャパンの2021年シーズンカレンダー入りを確約。このため、実行委員会はすでに来年に向けた準備をスタートさせている。

 ラリージャパン2020運営事務局の渡辺文緒 事務局長は2021年大会の開催予定日について言及した。

 同氏は「暫定ではありますが」と断りつつ、「2021年の11月11日から14日を第一希望として提出しております」とコメント。

「正式な開催日については他の開催国とともに、主に物流上の兼ね合いのなかで決まっていくものとなっておりますので、早ければ今年10月に開かれるFIAモータースポーツ評議会にて示されるものと思われます」

 また、渡辺氏は来年のラリー開催に向けた準備がふたたび新型コロナの影響を受けて難しいものになることを覚悟しながらも、図らずも1年空いた時間を有効に使い、イベントをさらに良いものにしていきたいと語った。

「2020年は新型コロナウイルスの影響により、実は開催準備にも大変大きな支障が生じていました」

「ラリーの競技設計や運営の準備においては現地での調査、開催地域に入っての活動は必ず実施しなければなりません。世界選手権という水準でさまざまな準備をしていくなかでは、WRC有識者・経験者で組織した“タスクフォース”のメンバーにサポートいただいておりました」

「しかし、渡航規制の関係で今年3月から一度も来場いただくことができませんでした。そうしたなか、2週間に1回、ビデオカンファレンスを実施していましたが、やはり画面を通じてのコミュニケーションでは不十分な面があったと考えています」

■2021年大会は今年の計画をベースに調整

「新型コロナウイルス感染症が今後、どのように収束に向かうのかは不明ですが1年後、その影響が完全になくなるとは考えられません。しかし、ファンの皆さまや関係者の健康を第一に、いわゆる“ニューノーマル”のなかで大規模なイベント開催のあり方を考えなくてはなりません」と述べた渡辺氏。

 同氏は2021年のイベントについて、基本的には2020年のために準備してきた内容をベースに再構築するとした上で「図らずも1年間、時間の猶予ができました。これにより今年やりきれなかったこと、新たなアイディアなどをできる限り反映させ、ラリージャパン2021がコロナ後の“ニューノーマル”つまり、新しい日常の中にいても成功を収めたと評価していただけるようなイベントを作り上げていきたいと思います」と語っている。
 
 前例のない感染症の拡大により世界規模で、先の見通しがまったく立たないなかでの大会準備は並大抵の困難ではないはずだ。しかしながら、関係者すべての努力の末にようやく手にしたWRC開催権はまだ手中にある。2021年、ラリージャパン“復活”が3度目の正直で実現することを願うばかりだ。

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