増える横文字

 「もう一般的になっているから」と思い、先ごろの小欄で「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」という言葉を用いた。どうも気になっている。「社会的距離」。訳語でさえ何のことか分かりにくいな…▲感染が広がらないよう人と人との距離を保ち、2メートル以上が望ましい-と、ざっと言えても、言葉が一気に拡散した割に、意味の正しい理解はどれだけ進んでいるだろう。わが身も含めて少々怪しい▲よく紙面の感想を寄せてくださる読者のお一人から便りがあった。コロナ禍で「とてつもなく横文字の多い8カ月間」になり、誰もがそんなに英語が分かるのかしら、と首をかしげるという▲パンデミック(世界的大流行)にクラスター(感染者集団)、リモート(遠隔)にアラート(警告)。よく見聞きするのはここ数カ月のことだが、いま広がっている“新語”もある。「フェーズ」という▲「段階」「局面」を意味する。県は感染の広がり具合に応じて「4」までのフェーズを定め、各段階で確保する病床の数が変わるという▲必要な区分に違いないが、そもそも「フェーズ」の意味が知られていないと、その時々の感染状況に理解も深まらないだろう。世に新しい、片仮名の言葉を使うとき、心にいくらかの引っ掛かりを覚えたい-自戒を込めてそう思う。(徹)

 


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