692日ぶり白星の藤浪晋太郎 専門家が見る勝因と「まだまだ良くなる」理由とは?

阪神・藤浪晋太郎【写真:荒川祐史】

全盛期のボールは「縦のスピンが利いていてバンバン空振りを取れた」

■阪神 7-4 ヤクルト(21日・神宮)

阪神の藤浪晋太郎投手が21日、敵地・神宮球場で行われたヤクルト戦に先発し、692日ぶりの白星をあげた。7回1死まで投げて6安打6奪三振3四死球4失点(自責点2)。2018年9月29日の中日戦(ナゴヤD)を完封して以来の白星となる今季初勝利(4敗)を挙げた。

待望の、そして久々の白星をマークすることになった藤浪。この日の投球を、巨人で22年間スコアラーを務め、宿命のライバルである阪神の各選手を研究してきた三井康浩氏が徹底分析した。

3月下旬に新型コロナウイルスに感染し、5月末には練習に遅刻して2軍降格。そんな波乱万丈の今年を象徴するように、この日の藤浪も苦闘の連続だった。2回の攻撃では、自身の三塁適時内野安打で、チーム38イニングぶりの得点を奪って先制したのを皮切りに一挙4点をあげた。

ところがその裏、1死二、三塁で西田から空振り三振を奪ったものの、捕手・梅野が後逸してまさかの振り逃げに。これで1点を献上すると、続く吉田大喜にはセーフティースクイズを決められ、にわかに試合展開は怪しくなった。それでも、味方打線が3回にボーアの2ランで加点。藤浪は村上、坂口にソロ2発を浴び、7回途中でマウンドを降りたものの、岩崎、ガンケル、スアレスの無失点リレーにも助けられて、2年ぶりの白星に漕ぎつけた。

まだ「“抜け球”が全体の7割」、それで抑える藤浪の類稀なる力量

「勝因は圧倒的な球威。そして荒れ球の中でも、要所でいいコースに決まっていたことでしょう」と三井氏はこの日の投球を分析。点の取り合いとなっていた3回、先頭の村上に中前打されたものの、続くエスコバーを142キロのフォークで投ゴロ併殺に仕留め、無失点で切り抜けた。5回に村上に9号ソロを浴びた直後にも、エスコバーを内角高めの151キロ速球で一邪飛に切って取り、相手を勢いづかせなかった。

ヤクルトは藤浪対策として1~4番と6、7番と6人の左打者を並べて臨み、山田はスタメンを外れていた。「シュート回転してくる藤浪の球は、右打者には打ちにくい。左打者を並べたのは理にかなっているが、藤浪の球威を打ち返せたのは1番の坂口、3番の青木、4番の村上だけ。力勝負でねじ伏せましたね」と三井氏は見る。

もっとも、ルーキーイヤーの2013年から3年連続2桁勝利を挙げていた頃の藤浪と比べると、「あの頃のストレートは、縦のスピンが利いていてバンバン空振りを取れた。今は腕がやや横振りになっている分、シュート回転する。まだまだ良くなると思うし、かつての藤浪のボールをぜひもう1度見たい。“完全復活”を期待しています」と語った。

三井氏のチェックによると、この日の投球でもなお「指にしっかりかかっていない“抜け球”が全体の7割」。それでも相手に決定打を許さず、勝利をものにできてしまうところに、藤浪の類稀なる力量が表れている。指にかかったボールが増えれば、どんなすごい投球を見せてくれるか。2年ぶりの白星は、復活劇の序章に過ぎない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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