長崎原爆の日「忘れないで」 熊本・天草で「鐘」鳴らし平和願う

長崎原爆の日に合わせて鐘を鳴らすメンバー=天草市(芳倉正美さん提供)

 世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の一つ、熊本県天草市河浦町の「天草の崎津集落」。その近くの公園の鐘を、長崎への原爆投下から75年の今月9日午前11時2分、地元住民らが平和への願いを込めて鳴らした。長崎原爆の被爆者で、作家の鶴文乃さん(79)=茨城県つくば市=が提唱する「平和の鐘 一振り運動」の一環。鶴さんは「鐘の音をきっかけに長崎原爆を知り、忘れないでほしい」と願っている。
 鶴さんは爆心地から約3.5キロの自宅で被爆。原爆で父と長兄を失った。1982年から長崎をテーマに執筆活動を始め、原爆童話などを書いてきた。2007年からは「長崎を最後の被爆地に」との願いを込め、毎年8月9日の午前11時2分に鐘を鳴らす運動を提唱。国内外に呼び掛け、これまでにドイツや東京の寺社など約80カ所の鐘が鳴らされている。
 構成資産近くの「教会の見えるチャペルの鐘展望公園」には旧河浦町が鐘を設置していたが、老朽化に伴い、14年に撤去された。約4年前、鐘の復活を願う地元住民らが「初日の出を観る会」を結成。天草市に再建を働き掛け、今年5月に最大直径約1メートルの鐘が設置された。鐘のリニューアルを知った鶴さんの妹=熊本県在住=が、同会に運動への協力を求め実現した。
 9日は、同会のメンバーが集まって鐘を鳴らした。会長の出崎修平さん(79)は「被爆75年を記念して、75回鳴らした。二度と原爆を落としてほしくないと、平和を祈りたい。来年も(要望があれば)鳴らす」と話した。6日の「広島原爆の日」にも鐘を鳴らしたという。

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