三井氏が感じる進化「去年と比べて格段にレベルアップしている」
■阪神 7-4 ヤクルト(21日・神宮)
ヤクルトは21日、本拠地・神宮球場で行われた阪神戦に4-7で敗れた。敗戦の中で気を吐いたのが、3年目・20歳の4番、村上宗隆内野手だった。村上は9号ソロを含む4打数2安打1打点。打率.333はDeNA・佐野に次いでリーグ2位で、打点もトップの岡本にわずか1差の44を稼いでいる。
「1番驚いたのは、3回先頭で迎えた第2打席のセンター前ですよ」と語るのは、巨人で22年間にわたってスコアラーを務めた経験のある三井康浩氏だ。初球の外角寄り151キロ速球をジャストミートし、投手の藤浪がとっさに避けたほどの強烈なピッチャー返しを見舞った一打に、三井氏は「一振りで仕留めたのがすごい。去年と比べて格段にレベルアップしているのは明らか。ミスショットが激減している」と村上の進化を感じ取った。
5回の第3打席ではやはり藤浪に対し、カウント0-1から2球目の外角カットボールを、逆方向(左翼席)へ運んで9号ソロ。三井氏は「前の打席でストレートを打ったので、今度は変化球で攻めてくると読んでいたのでしょう。初球のストレートには見向きもしませんでしたから。コースも、制球に不安のある藤浪なら内角にはまず来ないとみて、外に目付けをしていた。そういう読みが深くなっています」と読み解いた。
昨季は36本塁打を量産して新人王を獲得した村上だが、打率は規定打席に到達した選手で最下位の.231だった。セ・リーグ新記録の184三振を喫するなど荒さが目立っていたが、今季はここまで打率.333と進化を伺わせる。いったい、なぜ、これほど確実性がアップしたのだろうか。
「去年は困ったらインコースに投げておけばいい打者」だった村上
三井氏はスコアラーとしての目線から「去年は相手から見ると、困ったらインコースに投げておけばいい打者でした。しかし、今年は“良い詰まり方”をしている。去年どん詰まりだったものが、今年はバットの芯に近い部分でとらえるようになり、内野手の頭を超えるようになった」と驚嘆する。
ヒットになれば、相手投手は内角一辺倒というわけにはいかなくなる。昨年は内角球を意識するあまり、開きが早くなり打撃フォームを崩すことがあったが、今年は外角球が増えた分、安定したフォームで打ち続けている。そういう好循環が生まれているというのだ。
今季の村上を打ち取るとすれば「外角のストレートには、長いリーチで完全に届くのでダメ。内角も、低めは距離を取れるので危険です。インハイの速い球を見せた後、低めのボールになる変化球を振らせることが基本線になるでしょう」と分析しているが、昨季よりも格段に手ごわくなっていることは間違いなさそう。持ち味の一発も増えはじめており、今シーズンを終える頃にはどんな成績を残しているのか楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)