メクル第480号<旬感 V・ファーレン>FW富樫敬真選手(背番号9) チームのため献身的に

「決定機はつくれているから決定率(りつ)を上げていきたい」と意気込む富樫選手

 7月の第3節アビスパ福岡(ふくおか)戦。ビクトル・イバルボとのコンビで2点を挙げ、移籍(いせき)後初ゴールを鮮(あざ)やかに決めました。「1試合で複数(ふくすう)得点を重ねていけば、一皮むけれるんじゃないか」。上々の滑(すべ)り出しを見せている今季は、「自分を超(こ)える」と強く思っています。
 アメリカ人と日本人の両親の間に生まれ、4歳(さい)で来日。小学3年の時に、日韓(にっかん)ワールドカップを生で観戦し、「サッカーにはパワーがある。自分もその舞台(ぶたい)に」と夢(ゆめ)を抱(いだ)きました。
 大学4年の時、J1横浜(よこはま)F・マリノスの特別指定選手に。デビュー戦で得点する活躍(かつやく)を見せました。翌年(よくねん)のプロ入り後も、すぐにゴールを奪(うば)うなど最高のスタートを切りました。
 感じた夢への手応(てごた)えと自信。でも「順調すぎた。実力以上のものが出た」とも。好調を継続(けいぞく)させる難(むずか)しさを知り、マリノスで過(す)ごした2年間は厳(きび)しい現実(げんじつ)にもぶつかりました。
 J1FC東京へのレンタル移籍を経(へ)て、2019年はJ2FC町田ゼルビアに完全移籍。この年、30試合で5得点しました。未熟(みじゅく)だった最初の2年に比(くら)べ、「どんな状況(じょうきょう)でもブレずに毎日を過ごすことができた」と実感。プロの世界で生き残っていくメンタルの土台ができました。
 そんな折、V長崎からオファーをもらいました。ボールを引き出すプレー。楽しそうなサッカー。自分が入ったらどんなプレーができるかイメージすることができ、加入を決めました。
 その想像(そうぞう)通り、ピッチに立つ姿(すがた)は躍動的(やくどうてき)です。時に相手DFの背後(はいご)を突(つ)き、時に相手を背負(せお)いながら巧(たく)みにボールをキープ。「スピードがあるわけじゃないけど、『なんかいいよね』みたいなFW」として存在感(そんざいかん)を放っています。
 注目は攻撃(こうげき)だけではありません。ボールを持つ相手に素早(すばや)く寄(よ)せる、前線からの献身的(けんしんてき)な守備(しゅび)には目を見張ります。その姿勢(しせい)に「チームが勝つためには、守備陣(じん)のコンディションを落とさせてはいけない。替(か)えが利く前の選手は90分間もたなくてもいい」という思いが込(こ)められています。
 満を持して戦うプロ5年目は、自分も大事。でも、それ以上にチームのために-。「エースになりたいじゃなくて、全員が主体性(しゅたいせい)を持っているチーム。そのピースの一つとして力になれたらいい」

◎プロフィル

 とがし・けいまん 1993年8月10日生まれ。アメリカ・ニューヨーク州出身。関東学院大-横浜FM-F東京-町田。U-23日本代表。名前の由来は両親の新婚(しんこん)旅行先だったケイマン諸島(しょとう)。ミドルネームはグレイビル。今年1月に誕生(たんじょう)した愛娘(まなむすめ)が癒(い)やし。178センチ、75キロ。27歳。

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