大学野球フューチャーズリーグが開幕 コロナ禍で奪われた新入生たちの“スタート”

7回2安打無失点と好投した国学院大・武内夏暉【写真:佐藤佑輔】

コロナ禍で割りを食うのは高3生よりも新入生? 新環境への適応期間の大切さ

大学野球第1回フューチャーズリーグは21日、国学院大たまプラーザキャンパス球技場で開幕戦が行われ、国学院大が7-4で桐蔭横浜大を下した。下級生の出場機会を増やすために今年から始まった同リーグ。慶大、国学院大、日体大、桐蔭横浜大の4校が所属リーグの垣根を越えて最強の1、2年生チームを決める。

国学院大は先発左腕の武内夏暉投手が7回を2安打無失点無四球の好投。打線は3回に打者一巡の3得点を先制すると、4回にソロ、7回には3ランで追加点を重ね、桐蔭横浜大を突き放した。

日体大の古城監督が発起人となり今年から始まった同リーグ。コロナ禍での開催は予期せぬタイミングだったが、それだけにその意義は大きい。今夏は甲子園が中止となり、高校3年生世代のレベル低下が危惧されるが、国学院大の鳥山監督はむしろ高校1年生、大学1年生の代こそが最もその余波を受けるのではと見ている。

「今年の新入生はまだレギュラーと一緒にウォーミングアップをしたことすらないんです。右も左もわからないまま入学してきて、新しい環境に適応するまでの一番大切な期間に何も教わることができないまま漫然と過ごしてしまっている。上級生になればその期間がいかに大事だったかは相対的にわかるが、当事者の彼らにとっては今この時間がどれだけ大切かがわからない。まだろくに挨拶もできない子がほとんどですから」

高校でも大学でも、上級生は過去の経験から自発的に練習を積むことができるが、下級生、特に新入生は今の自分の立ち位置を客観的に把握することができない。チーム一体となった活動がままならないなか、ようやく巡ってきた公式戦の機会。この日も3年生や4年生が自ら審判や補助員を買ってでて、ようやくチームに健全な一体感が出てきたという。

天理大ラグビー部のクラスター発生について「怖さはある。でも…」

見渡せば大学では全国的にリモート学習が導入されており、学生は大学のキャンパスに足を踏み入れることすらないまま、すでに5か月が経過しようとしている。地方出身者のなかにはアパートを引き払い、地元に帰って授業を続けている者も多いという。サークルやアルバイトなどの課外活動もままならず、大学に入った意味を見出しづらい状況のなか、活動が許可されている部活動は学生にとっては大きな拠り所のひとつだ。

もちろん、活動にリスクがないわけではない。天理大ラグビー部のクラスター発生とそれに起因する大学全体への風評被害も決して他人事ではないという。桐蔭横浜大の斎藤監督は「どうしようもないですよね。やるべきことをやって出たときは仕方ない。だから、選手にはやるべきことはやってくれと伝えています。怖さはある。でも怖いからといってやりたくないという気持ちはない」とキッパリ。鳥山監督も「我々が恐れたら学生たちのチャンスの場がなくなってしまう。そこは大人たちがその場所を守ってやらないと。守ってやるというのは責任を取りたくないから何もやらせないということではなく、あらゆる対策をとってできる限りのことをやっていくことだと思ってる」と指導者としての責任を語る。

六大学の春季リーグ戦、甲子園交流試合は大きな追い風となったと両監督。学生野球もコロナ禍と共存する形を模索している。(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)

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