暗闇を脱したモチュール&ZENTの安堵と、「速すぎる」モデューロへの疑心暗鬼/スーパーGT第3戦予選

 Modulo NSX-GTが後続をコンマ4秒も突き放す驚愕タイムでポールポジションを奪った2020年スーパーGT第3戦鈴鹿の予選。Modulo NSX-GTのタイムには予選後のパドックでも驚きの声が聞かれたが、一方で予選2〜3番手に続いた2台の陣営も、前2戦の悪い流れを断ち切ってひとまずの結果を出せたことで喜びの表情を見せていた。

「今回が特別いいかと言われると、そうでもない。でも、前回までが下がりすぎていたんでね」と笑顔を見せるのは、予選Q2で3番手タイムをマークしたZENT GRスープラの立川祐路だ。

 立川は「Q2のアタックは自分的にはもう少しいける要素があった」と悔しさも口にするが、安堵がそれを上回っているように見える。

 ZENT陣営としては7月上旬に行なわれた鈴鹿でのタイヤメーカーテストが「悪い流れの起点だったかも」と石浦宏明は振り返る。

「パワステのトラブルがあったり、他車がクラッシュしたパーツを使ったりしなくてはいけなくて、それが影響してうまく走らない、走らない……ってガチャガチャといろいろやっていたら、そのあとの開幕戦にも影響が出てしまった」

 新しいトライもあるというが、セットアップの方向性は第2戦から「同じ流れ」(石浦)だという。富士と鈴鹿、サーキットの性格は大きく異なるが「クルマが良くなったのか、ハイダウンフォースにそもそも合っているのかは、よく分からない」と立川。

 予選順位では直後にWAKO’S 4CR GRスープラがいることも、「特別いいわけではない」理由だ。ワコーズは今回ウエイト44kg、対するZENTは24kg。「ウエイト換算したら、負けちゃっている」(石浦)のである。

 決勝に向けたロングランの手応えも悪くないようだが、立川は「もう少しアジャストしたい」と言う。

「ここ(第3戦)で行かないとね。ウチらいま、(チャンピオンシップとしては)首の皮一枚でプラップラしている状態なんで。首が落ちちゃわないように、明日しっかりと結果を出したい。あとは前にいる2台がどういうタイヤか、ですね」

■「前後バランスを改善した」モチュールGT-R

 そのZENTの前、2番グリッドを確保したのはMOTUL AUTECH GT-Rだ。Q1を担当した松田次生は開口一番、「中企(Modulo NSX-GT)がなんであんなに速いのか分からない。想像ができない速さです」と首を傾げたが、モチュールGT-Rとしても「やるだけのことはやって出せたタイム」と表情は明るい。

 開幕戦はノーポイント、第2戦はエンジントラブルで順位を下げるなど、モチュールGT-Rも追い込まれた状態でこのラウンドに乗り込んできたが、今週は走り出しからいい流れをつかんでいた。

「今回は持ち込みのセットが良かったので、朝から(予選まで)ほとんどいじってないです。開幕戦、第2戦と苦労しましたが、いろいろとセットを見直せて良かった」と次生は言う。

 第2戦では、富士のセクター3など小さいコーナーでの改善が顕著だったというが、今回はその部分が効いているというわけではないようで「どっちかと言ったらトータルバランス。前後バランスを少し見直したんです。そうしたら、自分たちのドライビングスタイルにクルマが合ってきた感じですね」。

 次生が担当した予選Q1ではセクター1の最速タイムをたたき出している。鈴鹿の特徴でもある、切り返しのS字区間を含むこのセクター1での速さは「狙いどおり。いい感触です」という。

 決勝に向けては「38号車(ZENT)のストレートが速いし、14号車(ワコーズ)のロングランもえらい速かった」と背後にいる2台のGRスープラ勢を警戒している。

「あとは、ダンロップのタイヤがどこまでもつのか。こんな(予選の)タイム差はなかなかないので、これでもったらすごいタイヤだな、と」

 なお、次生によれば今回持ち込んでいるミシュランのタイヤは「レンジが広く、温度が今日くらいでも、下がっても大丈夫」だという。決勝日の最高気温は30〜31度程度と、予選日よりは低くなる予想だ。

2020年スーパーGT第3戦鈴鹿 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)

■「路面が濡れてさえいなければ」ダンロップが行ける?

 2台が異口同音に警戒するポールポジションのモデューロ。その足元を固めるダンロップ陣営は予選でのタイムについて、「重量ハンデの違いもありますし、それほど差はないと思っています」(ダンロップ開発責任者・安田恵直氏)と冷静だ。

 予選のタイムがあまりにも良かったことに対し、ロングランを不安視する向きも周囲にはあるが、「7月のタイヤメーカーテストの際のタイムは良くなかったですが、今回のコンディション・今回のスペックだと、悪くないと思います」(安田氏)と自信を見せる。

 不安は、決勝日午前中に雨の予報が出ていること。いわゆる“チョイ濡れスリック”のような状況には弱いスペックなのだという。一方でドライで暑くなる分には問題がなく、予想される最高気温もレンジの範囲内。「濡れてさえいなければ」(安田氏)行ける感触はあるという。

2020年スーパーGT第3戦鈴鹿 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)

 予選トップ3に、今季ここまでとは違う“主役”たちが並び、しかもタイヤメーカーもすべて異なっている。決勝では、スタート直後から3台のペースがどう変化するか(しないか)、注目したい。

© 株式会社三栄