「信じて見守りを」 薬物依存症フォーラムで医師呼び掛け

登壇者と参加者をオンラインでつないで開催されたフォーラム=横浜市南区の南公会堂

 薬物をはじめとしたさまざまな依存症者との向き合い方を考えるフォーラムが23日、横浜市南区の南公会堂で開かれた。新型コロナウイルスの影響で人との接触が制限され、多くの依存症者や家族が孤立する中、専門家は「知恵を集めて一緒に取り組んでいこう」と語り掛けた。

 奈良県内の病院「ハートランドしぎさん」臨床教育センター長の長徹二医師がインターネットを介して講演した。依存症治療に長年携わる長医師はまず、患者の視点から依存症について説明。「酒をやめたいけど飲みたい、と両価的な悩みがある。心の奥には家族に話せないような悩みを抱えていることもある」と話し、患者が本音を口にできるような状況をつくることの重要性を指摘した。

 続いて、家族の視点から支援の難しさを指摘。「家族も『支えたいけど、大変だし、つらい』と両価的な悩みがある。まずは家族自身のケアが大事。支援しない権利もある」と強調した上で「患者をコントロールするのではなく、信じて見守る気持ちを大切にしてほしい」と呼び掛けた。

 フォーラムは依存症当事者の自助グループや家族の支援を続けるNPO法人横浜ひまわり家族会などの主催。4回目となる今年は新型コロナの感染防止のため、オンラインでも視聴できるようにし、会場に直接足を運んだ人も含めて約70人が参加した。

 同会の岡田三男理事長は「コロナ禍で患者や家族からは『行き場を失っている』という声が多く届いている。フォーラムでつながった皆さんと一緒に回復の輪を広げたい」と話した。

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