「ジューシーで胸肉に厚み」 〝湘南チキン〟で苦境打開へ

「湘南チキン」のヒナを見守る長田代表=オサダファーム

 小田原の地鶏「湘南しゃも」の生産で知られるオサダファーム(小田原市上町)が新たな銘柄鶏づくりに取り組んでいる。その名も「湘南チキン」。新型コロナウイルスの影響で出荷が激減する中、新商品で打開を図る。シャモ同様のオリジナル飼料で飼育するが、シャモの半額程度での販売を予定している。長田龍典代表(41)は「ニワトリはシャモと違い、他の鶏肉と比較しやすいので違いがはっきりする。負けない自信はある」と手応えを感じている。

 同ファームは、市内鴨宮地区で約400年続く農家の長田代表が約10年前に開いた。当初は競走馬を育てたりしていたが、4年ほど前にレストラン格付け本「ミシュランガイド」で「星」を獲得した都内のレストランの知人シェフから「こういう鶏がつくれないか」と提案を受け、湘南しゃもを育て始めた。

 抗生物質を使わずタンパク質が多いオリジナル飼料を与え、小田原の自然の中で伸び伸び育てたシャモは、味や肉質が良いと評判になり、現在は30を超える有名料理店などで扱われている。

 そのシャモの生産を今年2月ごろやめた。新型コロナの感染拡大で取引先である横浜や箱根の料理店などが休業し始めたのを受け、すぐに決断。養鶏でも肉鶏の場合、出荷するまでは「在庫」になる。早めに対応しないと大きな損害を出してしまう懸念があった。さらに「命を大事にしたい。無駄になるならつくらない」と長田代表は振り返る。

 7月下旬から状況を見ながら再びシャモのヒナを飼い始めたが、出荷までには4カ月かかる場合もある。また、「いまはコロナ前の2割ぐらいしか取引が動いていない。完全に戻るのは難しい」と影響がいつまで続くのか見通せない状況だという。

 そこで平行して新たな銘柄鶏の生産を始めることにした。シャモと違って価格は安いが、早く出荷できるニワトリの飼育に取り組んだ。「在庫が少なくてすむので、もしコロナの第2波が来ても経営的に耐えられる」と長田代表は考える。飼育期間は60日ぐらいと想定していたが、これまでのノウハウもあって半分ほどの期間で育っている。今月24日には初出荷を迎えるという。

 長田代表は「抗生物質を使っていないので安心だし、ジューシーで胸肉には厚みがあっておいしい」と自信を持つ。小田原市本町の三河屋商店で購入できる。問い合わせは、同店電話0465(22)9195。

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