熱中症とコロナ、似る症状 県内の医療現場 対応に苦慮

内科医院が設けている、隔離の診療スペース=長崎市内

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、連日の猛暑で熱中症患者が相次いでおり、長崎県内の医療現場でも負担が増している。熱中症は新型コロナと症状が似ているため対応に苦慮。小規模の医院では限られた人数で感染防止対策に傾注し、地域住民の健康を支えている。
 長崎市のある内科医院では、お盆を過ぎたころから熱中症の症状を訴える患者が目立ち始めた。この医院では、発熱などの症状がある患者には県外への行動歴や細かな症状などを確認する質問項目を用意し、回答を求めている。新型コロナが疑われる場合は、ほかの患者と接触しないよう隔離の対応を取る。
 ただ、熱中症による発熱や体のだるさといった症状は、新型コロナと共通している。回答を基に隔離が必要かどうかを判断するが、女性看護師は「待合室に通した人が、後で陽性と分かったらどうしよう、と常に不安がある」と明かす。
 勤務する看護師は3人。発熱などを訴えた患者には看護師1人が付きっきりとなり、現場の慌ただしさは増す。さらに終日、消毒を徹底。ウイルスを広げていないか神経をとがらせ、精神的な負担もあるという。
 診察などで防護服を着ることもあるが、ほかの来院者の目に触れないようにするなど、目立たないよう心掛ける。男性院長は「『あそこはコロナ感染者を診ていた』と、付近住民を不安にさせないため」と理由を説明する。
 どこまで用心すればいいのか分からず、「不安が不安を呼ぶ」ような現状には疑問を感じることもある。院長はこう強調する。「熱中症も命に関わる。コロナだけを特別視して、日常の医療活動を見失わないようにしなければいけない」
 熱中症になりやすい時季のため「屋外での無理な活動を控えるなど予防をお願いしたい」と看護師は言う。また、症状があったり、感染者との接触があったりする人は事前の電話連絡を求めている。
 「あなたたちが頼り。何かあったら頼むわよ」-。看護師は、通院する高齢女性から掛けられた言葉が忘れられない。現場は疲弊しながらも、地域に求められる医院として、その役割を果たし続ける。

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