『幸せへのまわり道』怒りにあふれた今に優しい教えが詰まった作品

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 トム・ハンクスがアメリカで国民的な人気を誇った子供向け番組「Mister Rogers’Neighborhood」の司会者フレッド・ロジャースを演じ、第92回アカデミー賞(2020年)助演男優賞、第77回ゴールデングローブ賞(2020年)最優秀助演男優賞にノミネートされた作品です。

 ひょんなことからフレッドを取材することになった気鋭のジャーナリスト、ロイドは父親との複雑な関係から、常に心に怒りを抱えてきた人。聖人のような彼をインタビューしながら、なんとか心の闇を暴こうとするロイドでしたが、フレッドは彼が抱える怒りに気づきます。フレッド・ロジャースという人は、アメリカ人ならみんなが知っている<アメリカの宝>だそうですが、あまりの人格者ぶりに疑いの目を向けてしまうロイドの気持ちはよく分かります。でもフレッドの人となりに触れるうち、私自身も彼の言葉にたくさん救われていました。

 ニュースは辛い現実ばかりで、SNSには怒りに満ちたコメントがどんどん流れてくる。暑くてマスクは息苦しいし、ストレスに負けそうになって、怒りをコントロールすることも難しい。この映画には、今だからこそ大切な優しい学びが詰まっています。イライラしてつい怒りをぶつけてしまいガチだけど、私たちはお互いに優しく、大切に思いやっていきたい。私にとって最初の一歩は、なんだろう。そう考えたとき「丁寧な言葉で、丁寧に話すこと」をこの映画から学ぶことができました。

 ちなみに本作の元になったのは、雑誌「エスクァイア」に掲載された記事「Can You Say...Hero?」。英語ですがネットに記事が残っていますので、興味がある方は是非読んでみて下さいね。★★★★★(森田真帆)

8月28日から全国公開

監督:マリエル・ヘラー

出演:トム・ハンクス、マシュー・リス

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