“赤ちゃん返り”はなぜ起こる? 弟妹ができて上の子が甘えてきたら

今までは少しずつ成長していたはずなのに、下の子が生まれた途端に、上の子がベッタリ甘えて赤ちゃん返り。ただでさえ、下の子のお世話で手一杯なのに「そんなにいっぺんにできないよ!」と爆発寸前のママもいるのではないでしょうか。

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“赤ちゃん返り”は、なぜ起こる?

「赤ちゃん返り」とは、今まである程度自分のことができていた子が、赤ちゃんのように振る舞うようになること。急に甘えて「できない」「着替えさせて」などと言ったり、ママにくっついたり、抱っこをせがんだりするようになります。

赤ちゃん返りは、下の子の誕生以外でも、引っ越しや進級・進学などのときに起こることがあります。つまり、生活に大きな変化があったときに起こりやすいです。コロナ禍でも、赤ちゃん返りが増えていることが指摘されていました。

もちろん年齢にもよりますし、個人差もあります。赤ちゃん返りが激しい場合もあれば、ほとんどそのような様子が見られない場合も。

子どもは変化への不安を「甘え」で表現しています。不安なときは、安心して受け止めてくれる人に、くっつきたくなるもの。お世話を焼いてほしくなるものです。それが赤ちゃん返りです。

不安な気持ちを受け止めてあげる

不安だから、「やってほしい」「一人じゃできない」などと言います。また、今までは一人で集中して遊ぶことも多かったのに、やたらと「ママ見て!」と声をかけてくることもあるでしょう。

このときNGなのは、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なのに、なんで着替えられないの!」「大きいのに、できないなんておかしい」「忙しいのに、何度も呼ばないで!」などと突き放してしまうこと。

赤ちゃん返りは不安な気持ちの表現です。ママとしては下の子のお世話も大変ですが、「不安な気持ちを伝えているんだな」と受け止めましょう。突き放されると、「そんな風に言ってはいけないんだ」「甘えてはいけないんだ」と思ってしまうことも。そうすると、自分の不安な気持ちを表に出すことを我慢するようになってしまいます。

“赤ちゃん返り”にどう対応するか?

「受け止めましょう」と言っても、下の子のお世話もありますから、今まで通りになんでもすぐに対応することは難しいでしょう。

たとえば、着替えができるのに「できない。ママやって!」という場合。「こうやって、Tシャツはかぶるんだよね」などと言って、ちょっとだけ手伝ってあげましょう。そのあと自分でできたら「できたね!」と認めるという感じです。

「ママきて!」「ママ見て!」と声をかけてくることもあります。これは、自分を見てほしい、自分に注目してほしいということ。ママが赤ちゃんに集中していて、自分を見てくれていないと感じたり、寂しかったりしているサインです。

可能なら「なになに?」と聞いてあげましょう。もし、授乳中などですぐに対応できない場合は、「ミルクが終わったら見せてね」などと声をかけて、終わったら見てあげましょう。ママも忙しいと思いますが、約束したら忘れないで対応することが大切です。その繰り返しを重ねることで、子どもも安心して待ってくれるようになります。

場合によっては、赤ちゃんを見て「ボクもミルク飲みたい」「ボクもオムツにしたい」なんて言ってくるかもしれません。これは、赤ちゃんみたいにお世話してほしい甘えからくるときと、赤ちゃんのミルクやオムツ自体に興味をもっているときがあります。

ママに余裕があれば、真似だけでもよいので、させてみるのも一案です。抱っこして牛乳を飲ませてみたり、オムツを替えるフリをしてみたり。対応してくれたということで、気が済む子もいます。また、「ミルクはどんな味なんだろう」という興味なら「ちょっと飲んでみる?」と飲ませてみるのもよいでしょう。オムツ交換を見せてあげて「こんな風になっているんだよ」「こう替えるんだよ」と教えてあげるだけでも、満足するかもしれません。

“赤ちゃん返り”をしない子は?

赤ちゃん返りが見られない子もいます。これには二通りあります。1つは、妹や弟ができても心に不安の波が起きていない場合。この場合は、今まで通りのペースで上の子に対応していけばよいですね。

もう1つは我慢してしまう場合です。先に書いたように、「甘えてはいけないんだ」と思うと、自分の不安な気持ちを出せなくなってしまいます。このような場合、親の手伝いをしてくれるなどしてとても助かりますが、上の子は気持ちを張って頑張っている状態。本当は、上の子も甘えたり、本音を出せたりする時間がとても大事です。

下の子が生まれると、ママは下の子のお世話に時間を取られます。週末などにパパに下の子を預けて、上の子との時間をもつようにしてみましょう。ほんの数時間でも、お散歩に行ったり、「パパには内緒ね」とジュースを飲んだり。そんなちょっとした時間に、上の子の気持ちや園生活で困っていることなどの本音を聞けることがあります。

赤ちゃん返りはずっと続くわけではない

赤ちゃん返りは大変ですが、ずっと続くわけではありません。下の子が生まれると、自分のことも大事にしてくれているのかと、ちょっと不安になる時期があります。そんなときに、親としてできるだけ対応してあげましょう。

もし、ママだけで対応するのが大変なら、パートナーや祖父母の手を借りたり、子育て支援サービスなども使ったりしてもよいです。

きちんと向き合ってあげることで、上の子の心が整っていきます。そうすることで、今まで通り自分でできるようになり、上の子は親にとって心強い助っ人になってくれるはずですよ。

著者紹介
高祖常子(こうそ・ときこ)

子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント

資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事や行政の委員も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。

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