もはや”クルマではない何か”!? イーロン・マスク率いる「テスラ」の独創力【外車のススメ】

テスラ モデルX 75D

テスラとは「自動車のカタチをしたスマートデバイス」!?

テスラ創業者のイーロン・マスク氏

2003年、イーロン・マスク氏によって設立された電気自動車メーカー、テスラ。

2008年にはロータスの技術を流用したスポーツカー「ロードスター」を開発したのち、2012年には完全オリジナルモデルの大型サルーン「モデルS」を、2015年からはSUVの「モデルX」を発売。さらに2016年になって、それまで1000万円以上という高価格車だったテスラを、一気に身近な500万円台で購入することを可能とした「モデル3」の生産を開始するなど、車種も確実に増加しています。

電気自動車は、今や珍しい乗り物ではありません。テスラも常識的なクルマのカタチをしています。しかしテスラは、メーカー自らが「車輪がついたアプリ」と称するように、「自動車のカタチをしたスマートデバイス」なのです。え、どういうこと!?

ここからは、その意味を紐解いていきましょう。

常時インターネット接続、ソフトウェアで機能もアップデート!?

日本市場にも導入が始まった「テスラ モデル3」

まず、テスラが「コネクテッドカー」であることに注目です。

クルマがインターネットに接続することも今では常識的になりつつありますが、テスラでは常にインターネットにつながっており、スマートフォンのような「ソフトウェアアップデート」によってクルマがいつも最新の状態に更新されています。

従来のクルマではまず「メカニズム(ハードウェア)」ありきで開発されてきました。テスラももちろん機械なので、クルマとしての基本はハードウェアですが、クルマの制御をほぼソフトウェアで行なっていることもあり、アップデートによって不具合の改良や機能改良・追加まで行うことが可能です。これはまさしくアップデートで充電時間が伸びたり、操作性が向上するスマートフォンと同じです。

スマートなデジタル機器という印象のテスラですので、スマートフォンにインストールするテスラのモバイルアプリも、むろん存在します。このアプリでは、充電状況の確認、空調のコントロール、防犯モードの設定、自車位置のチェック、車両の簡易的な移動(!)などを行うことができます。

シンプルさを極めたインテリア

テスラ モデル3のシンプル過ぎるインテリア

テスラの最新版「モデル3」に乗り込むと、ダッシュボードには大きなタッチスクリーンが一つとステアリングしかない、というシンプルさに驚くことでしょう。しかも画面は大きく、モデルSでは17インチ、モデル3では15.4インチもあります。これは、テスラの各種操作はすべてタッチスクリーンで行うため。

しかも画面の役割はナビだけに止まらず、エアコン・ワイパー・ミラー、さらには室内灯の設定にまで及びます。しかもそれをフリック操作で直感的に行えるため、スマートフォンで慣れ親しんだ人にはとてもわかりやすいのです。

物理的なスイッチはほとんどないため、運転中の操作は危ない……という気もするのですが、もしいつか先、ライトやワイパーなど、人為的操作を行なっている装備が完全に自動化され、そのほかの設定も「音声入力」になったならば、タッチスクリーンがひとつだけ鎮座しているというデザインは、とても合理的だと考えることもできます。

テスラのキーは、クルマのカタチ!

モデルSとモデルXでは、キー(キーフォブ)がなんと「テスラ」を模したミニカーのようなカタチになっています。ボンネット・トランクはキーによって外部からロック解除・開閉が可能で、ボンネットを開けたければキーの前部を押すとロックが解除し、ミニカーの後部を押せばトランクのハッチが開きます。このように、キーまで直感的に操作できるようになっているのです。ドアロックは屋根部を押しますが、キーを所持してテスラに近づくとドアロックは自動で解除され、離れれば再びロックされるため、キー自体を触る必要がありません。

さらにモデル3では、スマートフォンを持っているだけでドアロックの自動操作が可能となりました。なお、スマートフォンの電池切れや、他人にクルマを貸す場合を想定し、かざすとドアロックを行ええるカードキーも付属しているほか、モデルS・モデルXのようなキーフォブも別途用意しています。

このほか、画面にサンタクロースが現れる「サンタモード」や、ウインカーの音が「おなら」に変わる「ブーブークッションモード」などの隠しコマンドを備えているなど、テスラには楽しい遊び心がいくつか見られます。

圧倒的な高性能と、レベル2自動運転の「オートパイロット」

テスラ 新型ロードスター

電気自動車が遅い、というイメージは最近覆されつつありますが、その先鞭をつけたのはテスラかもしれません。モデルSでは前後に搭載したモーターによって、0-100km/h加速を2.5秒で駆け抜けます。これは、ホンダ NSXの3.0秒、日産GT-Rニスモの2.7秒も超える速さです。

テスラは、前述のようにソフトウェアアップデートで機能が向上しますが、加速力をアップさせることもできます。現在の0-100km/h加速2.5秒という数値は、2020年5月のアップデートで得られたもの。モデルSでは、サスペンションを自動調整・フロントエンドを下げる「ローンチモード」を起動させ、0-100km/h加速を0.2秒短縮したのです。テスラも車種によっては、「物理的に」強力なモーターが搭載される場合もありますが、従来のクルマの加速アップが物理的なチューニング・コンピュータチューンだったことを考えると、インターネットからのダウンロードでクルマの性能がよくなる、というのは隔世の感があります。

クルマとスマートフォンが合体したような未来のかたち

テスラ モデルS

そしてテスラといえばやはり「自動運転」です。テスラには、完全自動運転機能対応のハードウェアを搭載。テスラのオートパイロット機能は、レベル2自動運転に分類されます。レベル2では、同一車線内での自動ステアリング操作・加減速などの自動を行うことができますが、ドライバーは常に、自動的に走るクルマと交代できるようにスタンバイしている状態をキープする必要があります。

クルマという移動するための機械でも、インターネット+電気自動車によって新しい自動車像を作り上げたテスラは、まさにスマートデバイスそのもの。クルマとスマートフォンが合体したような、未来のクルマの姿を示唆しているのかもしれません。

[筆者:遠藤 イヅル]

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