“東京一極集中”は日本の強み 地方に人を分散すべきなのか?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。8月13日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、社会学者の西田亮介さんが“東京一極集中”について述べました。

◆"東京一極集中”は解消可能?

厚生労働省が首都圏の若者らを対象に国の交付金を使うなどして開かれた移住相談会で、一部の参加者に現金が支払われていたことがわかりました。イベントは人材派遣大手パーソルテンプスタッフへの委託事業で、集客に関与した関係者が「現金を支払う条件で参加者を募り、派遣した」と東京新聞に証言しています。

今回の件に関し、西田さんは「2つの問題がある」と指摘。1つは「お金を払う集客の仕方、ヤラセ・サクラの問題」で、これは定期的に起きていると言います。というのも、行政がどうしても貫徹したい政策の際には事業を請け負う企業がやりがちで、有名なところでは小泉内閣時代の「郵政民営化」でタウンミーティングが各地で開かれたときに来場者にお金を払ったことが検証からわかっています。

もう1つは「地域に関連する問題」。この問題とは「そもそも事業自体に問題があるのではないか」、つまり「地方の時代は存在するのか?」、「若い人を含め、本当に人は地方に帰りたいと思っているのか?」ということ。

◆コロナ禍の今、地方に人を分散すべきなのか?

「東京一極集中」は日本の強みの1つでもあると西田さん。現在の東京圏の人口は東京エリア全体で4,000万人弱。北京や上海は2,500万人弱ぐらいで、「東京を中心とするエリアは世界的にもいまだにトップの都市の規模」と話します。

そして、一極集中のメリットとして、人が集積していることで相互作用があったり、ある種のクリエイティビティの源泉にもなっており、「今後日本は人口が減少し、若い人も少なくなっていくなか、積極的に地方に人を分散させる政策が数多く走っていて地方創生など言われているが、これは本当に旗振りすべきなのか。改めて考えてみる必要がある」と主張。

地方創生事業は、過去には田中角栄氏の「列島改造論」や1970年代頃には「全国総合開発計画」が立ち上がり、「国土の均衡ある発展」などが叫ばれてきました。また、近年では「消滅可能性都市に関する議論」が話題に。総務大臣を務めた増田寛也氏が900弱の自治体は将来維持することができないため、「もっと地方を振興すべき」と提言しました。

ただ、これらの事業が功を奏しているかといえば、そうでもなく、総務省統計局による「3大都市圏別転入・転出者数」を見ると、東京圏のみ顕著に人口が増加しており、「さまざまな施策を行ってもあまりポジティブな影響が出ているようには思えない」と分析。そして、「人が地方に行きたくなるように(地方の)町が頑張るのはあり得ると思うが、政府が分散するように政策を打つべきなのかは考えるべき」と改めて強調します。

しかし、その一方でコロナ禍の今、暮らしや働き方も大きく変わるかもしれないという声もあります。西田さんも「テレワークが普及し、可能性としては地方に行きたくなるような雰囲気もある」と言いつつ、「医療に関して、二次医療圏といって広域に高度な医療を集約させるみたいなことをやってきてしまっている。それだけに、(人を)地方に分散させるとそれはそれで困ったことになりかねない問題もあり、そのせめぎ合い」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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