自営業者「一軒家を購入したい」通りやすいローンや審査のポイントは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、40歳、パートの女性。一軒家の購入を検討していますが、夫が自営業になったため、現金がいいかローンがいいかお悩みとのこと。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

夫が昨年から収入が不安定な自営業になりました。今はマンションに住んでいますが、子どもが大きくなり手狭になったのと、夫の仕事道具を置くスペースのために一軒家に買い替えを検討しています。今の住まいは駅近のマンションでローンは1000万ほど残っているものの、2500万以上で売却はすぐに可能と査定されています。

ただ、これから子どもの教育費が本格的にかかることや、夫の収入が不安定なことを考えるとローンを組まずに買える中古物件で購入すべきか、あるいはどれくらいまでならローンを組んでもいいのか悩んでいます。子どもの教育費は基本的に公立で18歳時に1人500万程度で考えており、進路によって足りない時は私のパートを増やすなどして対応しようと考えています。今は車は一台だけですが、家の場所によっては車が二台必要になることも考えられ、毎月のランニングコストが上がることも気になっています。

【相談者プロフィール】

女性、40歳、既婚、パート・アルバイト

同居家族について:

●夫41歳→特殊な資格職で80歳でも仕事は可能。月収40万〜100万と繁忙期によってバラツキあり。最低40万は現在確保。

●妻→資格専門職。現在は仕事を月10日程度のパートにセーブし月収15万程度

●子ども2人→7歳、15歳

住居の形態:持ち家(マンション・集合住宅)

毎月の世帯の手取り金額:55〜115万円

年間の世帯の手取りボーナス額:妻のみ30万円

毎月の世帯の支出の目安:48〜58万円( 支出が多い月の翌月は収入が増える)

【毎月の支出の内訳】

住居費:7.5万円

食費:6万円

水道光熱費:2万円

教育費:7.2万円(長男が受験で通塾中のため高額)

保険料:1.8万円

通信費:2万円

車両費:仕事用車両のため夫小遣い・事業資金に含む

お小遣い:夫10〜20万円(事業資金含む)、妻1.5万円

その他:10万円(国保、年金、住民税、固定資産などの積立として)

【資産状況(万円)】

毎月の貯蓄額:7〜57万円、 iDeCo夫6.8万円・ 妻2万円

ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

現在の貯蓄総額:2800万円

現在の投資総額:250万円( iDeCo2人分)

現在の負債総額:住宅ローン残債1000万円


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

自営業の方のマンションの買い替えのご相談ですね。昨年に自営業になったとのことで、まだ収入が安定していない中での住宅の買い替えですが、これからより教育費が掛かってくるので慎重に検討する必要があります。また、自営業の方は住宅ローンの審査がサラリーマンと比べると厳しくなります。そこも含めて考えていく必要があります。

自営業者は審査の際どこを見られているか

まず、自営業の方の住宅ローン審査のポイントについて解説します。

一般的に金融機関が住宅ローンの審査をする場合、「将来にわたってしっかりと返済を続けられる人」かどうかが一番重要なポイントとなります。

会社勤務の方であれば、基本的にはそこに勤めている限り毎月安定した給与を受け取れるので、安定した収入があり返済能力もあるとみなされます。一方で、個人で事業をやっている自営業の方は、景気の動向や、自身の健康状態により収入の変動するリスクが高く、住宅ローンの審査においてはネガティブにみられる傾向にあります。

自営業の方が住宅ローン審査に通るポイントは「収入の安定性」です。企業にお勤めの方の場合、前年度の年収で審査されますが、自営業の方は直近3期分の「所得」で審査されるのが一般的です。ご相談者は、昨年から自営業になったとのことですので、住宅ローンを組むには条件が厳しくなると思われます。もし今すぐにでも住宅ローンの借入れをする場合は、個別に金融機関に確認しましょう。銀行によっては、3年未満の事業年数でも決算内容によって審査を通してくれるところもあります。

自営業者でも通りやすいローンは?

銀行でどうしても審査が通らない場合、「フラット35」を検討しましょう。フラット35は自営業でも会社員と同じように「年収」で審査を受けられます。自営業の方にとっては強い味方となります。フラット35でも現在は金利が1%台の前半で借り入れ可能ですので、選択肢に入れて良いでしょう。

今すぐ住宅ローンを組むのが難しい場合、キャッシュで購入するか、購入の時期を遅らせるかになります。もし、仕事道具を置くスペースが今すぐ必要で、どうしても住みかえなければいけない場合は、住宅ローンを組まずにキャッシュで購入するか、住みかえの理由がスペースだけであれば、倉庫を借りるというのも選択肢になるかと思います。

確定申告にもコツあり

キャッシュで購入ではなく、3期分の事業年数を経てから住宅ローンを検討する場合、自営業の場合、審査は「所得」で見られますので、いくら収入(売上げ)があったとしても、経費率が高く、申告する際の「所得」が低い場合は、審査には通りません。住宅ローンを将来組む為には、直近3期分に関しては「所得」を意識して申告することも重要になります。

また、ご相談者は、iDeCoを活用されておりますが、iDeCoは掛金が全額控除出来るので節税の効果はありますが、60歳まで引き出せないので、あまり大きい金額を掛けてしまうと、流動性がなく注意が必要です。老後資金準備と節税としては効果的ですが、よりトータル的に掛金を検討する必要があります。

最低限確保可能な金額でプランを組むこと

また、キャッシュで購入する場合も、将来住宅ローンを組む場合も、注意しなければいけないことがあります。

個人で事業をする場合は、今はある程度の収入が見込めたとしても、何があるか分かりません。必要以上に支出を増やしてしまうと、事業がうまくいかなくなった場合の資金繰りが難しくなります。そこも含めて検討が必要です。

ご相談者の場合は、今現在のマンションを売却して約1500万円くらい手元資金が増える計算になります(売却した際の譲渡益に対しての課税については加味していません)。現在の貯蓄総額に加えると4300万円となります。そこからお子さま2名分の教育費準備の為の貯蓄1000万円を差し引くと3300万円となります。

手元資金3300万円と今後出来るであろう貯蓄で、住宅に関しての費用と老後資金準備を賄うことになります。ご主人様の収入にかなり幅があるので、最低限確保が可能な金額でプランニングすると良いでしょう。

優先順位をつけてライフプランを組み立てる

最後に、ご相談者がまず考えるべきことについて整理します。

ご相談者の経済的な目標としては大きく4つです。

1)住宅の買い替え
2)子どもの教育費
3)自動車購入
4)老後資金準備

まず、これらに優先順位をつけましょう。優先順位の高いものの資金を確保した上で、ライフプランの作成(生活設計)をしていく必要があります。

また、ライフプランの作成にあたり、前提条件を定める必要があります。特に、個人事業であるご主人様の収入に幅があるので、前述したように、最低限確保できるであろう金額で設定した方が良いでしょう。特殊な資格職で80歳まで働くことも可能とのことですが、こちらも80歳まで働く前提で考えるのか、例えば70歳までにはリタイアしたいと考えるかによってもプランは変わってきます。

これらを整理した上で、専門家に相談しましょう。住宅購入は大きな買い物です。特に個人で事業を始めたばかりとのことなので、事業計画と合わせて慎重に進めていくことをおススメします。

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