出前館が急伸!!外食産業で好調な銘柄・厳しい銘柄

5月25日に緊急事態宣言が解除され、落ち着きが見えたかのように思えた新型コロナウイルスの感染拡大ですが、7月以降は第2波が到来し、消費の回復にもブレーキがかかっています。

引き続き外出を控える動きが目立つ中、人々の食生活も外食が減少し自炊やデリバリーを利用する機会が増えてきています。新型コロナウイルスを受けた食生活の変化を追いながら、外食産業の注目銘柄についても見ていきたいと思います。


外食産業には厳しい状況が続く

新型コロナウイルスの到来で人々の行動が制限された結果、外食産業は大きな打撃を受けています。外食産業全体で見ると5月までは大きく下落し、緊急事態宣言解除後は回復基調にあるものの85%程度までの回復にとどまっています。

さらに、外食産業の中でも業態によって回復には大きな差が出ています。最も戻りが早いファーストフードはデリバリー・持ち帰りの需要が元から存在したため、95%程度まで回復しています。一方で居酒屋は、店舗での消費が中心である上に地方自治体から営業時間の短縮要請も出ている影響が大きく、50%に満たない回復にとどまっています。

個別企業の月次情報を見ても差は歴然です。ファーストフードでは家族層への人気が高いケンタッキーが好業績を記録しています。第1四半期(4~6月)期間の既存店平均月商が過去19年間で最高を記録したほか、7月の月次実績でも顧客数・顧客単価共に増加し、既存店売上高は前年同月比127.3%となるなど、逆境下でも業績向上に成功しています。

一方で居酒屋での消費は低迷が続いており、特に7月の月次既存店売上高では「はなの舞」を展開するチムニーが前年同月比39.0%、「和民」を展開するワタミが前年比47.1%と苦境を強いられています。

外食産業は株主優待が用意されている銘柄も多く個人投資家に人気です。月次の経営状況に注目しながら銘柄を選んでいくと、現在は厳しい銘柄でも今後の回復局面では値上がり益のチャンスがあるかもしれません。

スーパーは好調続くも野菜価格高騰が向かい風に?

外食需要が消失している中、消費の受け皿となっているのはスーパーマーケットです。緊急事態宣言前後にスーパーでトイレットペーパーなどの紙製品が品切れになっていたのは記憶に新しいでしょう。

全国スーパーマーケット協会のデータを見てみると、新型コロナウイルスが蔓延した3月以降、惣菜は前年比で減少傾向にある一方で食品関係の売上は一貫して増加しており、自炊頻度が高まっていることが予想できます。

一方で7月以降は農産物の価格高騰が顕著に現れてきました。というのも、上半期の日本列島は新型コロナウイルスの流行だけでなく、4月は九州の豪雨被害、6月以降は梅雨明けが13年ぶり8月にずれ込むなど長雨にも見舞われました。雨による日照不足の影響から野菜価格に影響が出てきています。

平年比で価格を見ると8月17日の週時点でキャベツは約1.9倍、レタスは約2.2倍と特に葉物野菜が高騰しています。また九州での生産も多いばれいしょ(じゃがいも)や、本来は価格が安定している玉ねぎも平年比で高く推移しています。

梅雨が明けた8月は梅雨から一転して猛暑が続いているため野菜の生育には好ましくなく、秋から冬にかけても不安定な価格は続く見通しです。農産物の価格が高止まりとなるとスーパーで買い物をして自炊をするにも食費がかさんでしまうため、デリバリー市場への思わぬ追い風が吹くかもしれません。

デリバリーへの期待は今後も高まる

外出自粛の影響で自炊需要と同様に需要が急増したのが食のデリバリーです。今回は外出自粛による巣ごもり消費で利用者が急増し株式市場でも注目を浴びている出前館(2484)、オイシックス・ラ・大地(3182)について触れていきたいと思います。

出前館はアメリカのUberが日本でも展開しているUber Eatsと共にフードデリバリーの2大勢力となっています。オーダー数は新型コロナウイルス流行後の第3四半期(2020年3~5月)期間で前年同期比150%と飛躍的に増加しています。3月にはLINEとの資本業務提携も発表しており、今後は更なる飛躍が予想されます。

業績面では広告宣伝費やオペレーションコストの増加により利益は赤字であるものの、第3四半期の売上高は前年同期比約73%増と急上昇しています。株価も3月につけた安値から約4倍の水準まで上昇しており、期待の高さがうかがえます。

オイシックス・ラ・大地は有機野菜や加工食品をサブスクリプション方式でネット販売しています。新型コロナウイルス流行後は会員数が急増して出荷が追い付かなくなり、3月後半からの1ヶ月は主要サービスのOisixで新規加入を停止する事態となっています。

そのような中でも業績は急激に成長し、第1四半期(4~6月期)の売上高は前年同期比で42%増、純利益は338%増となっています。2020年10月には新施設の稼働開始も予定されており、安定した会員数の増加も望めるでしょう。株価も決算発表を受けて連日の大商いで3月の安値から約3倍にまで上昇しています。

外出自粛がやむを得ない中で、いままで外食や自炊が中心であった人たちが第3の選択肢としてデリバリーやネット購入を経験したというのは大きな変化と言えるでしょう。株式投資というと距離の遠い存在のような気がしますが、このように日々の食生活の動向から成長している企業を見つけることもできます。自分の行動のちょっとした変化をきっかけに楽しみながら銘柄選びを始めてみてはいかがでしょうか。

<文・Finatextホールディングス アナリスト菅原良介>

© 株式会社マネーフォワード