会社員も会社を作るべき? 税理士が教える「法人化」のメリット

副業や独立を考えている人は、「個人か法人か」で悩んだ人も多いのではないでしょうか。それぞれにメリットがありますが、腰を据えて稼ぐなら法人化した方が有利です。その理由とポイントを「税理士YouTuberチャンネル!!」のヒロ税理士(田淵宏明)さんに聞きました。


個人よりも法人のほうが有利なケースが多い

――ヒロさんは著書『日本一わかりやすい 一人社長の節税』の中で会社設立や、個人事業の法人化のメリットを書いています。節税面でも個人より法人のほうが有利なのでしょうか。

有利になるケースが多いと思います。というのも、個人事業主には使えず、法人だから使える節税の方法は多く、その逆はほとんどないからです。

例えば、赤字が出た時の繰越は、個人の場合は3年ですが、法人は10年です。赤字は翌年以降の利益と相殺して減らす役割があり、節税につながります。経費面では、法人は倒産防止共済を経費にできますし、保険料控除についても、会社で加入する法人保険は2019年の法改正によって節税効果が小さくなりましたが、それでもまだ個人より大きな額を控除できます。

――会社員の中には、将来的な独立を見据えていたり、その準備として副業に取り組んでいる人がいます。売り上げがどれくらいになったら法人化を検討するのが良いのでしょうか。

目安としては所得が300万円を超えたら法人化を検討したいですね。

所得300万円の個人事業主が法人化(通称:法人成り)した場合でも、ざっくり計算して納税額は25万円ほど少なくなります。また、個人よりも法人の方が信用力がありますので、取引先に対する信用度を高めたり銀行などから融資を受ける予定がある場合なども法人化を検討するのが良いと思います。

――利益で300万円ですか。「売り上げで1,000万円を超えたら」という話をよく耳にしますが。

売り上げはあまり関係ありません。売り上げ1,000万円という数字の根拠もありません。税金は利益に対してかかるものですので、売り上げではなく利益を見ることが大事です。

資本金はどう用意する?

――会社設立は資本金が必要です。いくらで作れば良いのでしょうか。

上限と下限で分けて考えてみましょう。下限から先に考えると、昔は有限会社という枠があり、有限会社なら300万円、株式会社なら1,000万円という下限がありました。今はその下限が撤廃になり、資本金1円でも会社が作れます。

とはいえ、資本金が会社の純資産規模を表していることを考えると、1円の会社では信用力は高まりません。取引先からの信用や融資を受けることを考えるのであれば、昔の有限会社の下限である300万円か、少なくとも100万円くらいは用意したいところです。

一方の上限は、1,000万円以上にするとその年から消費税課税事業者になり、1,000万円未満なら設立した年から2年間は消費税が免除されます。※諸条件あり。節税という点からみると免税事業者の方が良いと言えるでしょうね。

――そうですね。資本金を用意したら、具体的に会社を作る手続きに進みます。ここでも、自分でやるか専門家に任せるという選択がありますが。

そこは考え方次第です。

会社設立の手続きは、おそらく誰にでもできます。最近は会社設立の支援サービスもありますし、このサイトの運営会社であるマネーフォワードさんも会社設立サービスを手掛けていますよね。そのようなサービスを使えば、必要最低限のコストで会社が作れます。

ただ、時間と手間はかかります。会社員の場合は日々の仕事が忙しく、そのための時間が作れない人も多いと思います。その場合は司法書士に頼むのが良いでしょう。代行手数料はかかりますが、楽ですし、専門家ですのでミスもないと思います。

ちなみに、会社設立時には定款を作る必要がありますが、この作業は行政書士にも頼めます。ただし、会社の登記は司法書士の独占業務ですので、司法書士にしかできません。

税務や法務についても同じことが言えますが、法人の業務は「餅は餅屋」の部分が数多くあります。勉強のために自分でやってみるという姿勢は素晴らしいと思いますが、法人を作る目的はおそらく勉強ではないはずです。効率よく、円滑に事業をしていくことを優先するのであれば、頼れる専門家を見つけて、任せられるところは任せた方が良いと思います。

税務知識はどう学ぶ?

――会社員の副業で、最初は少額の利益だったとしても、法人化は一度は検討してみた方が良さそうですね。

そうですね。利益が少ない時は会社の維持費などがかからない分だけ個人事業主が有利ですが、利益が増え、所得が大きくなっていくほど法人が有利になるのは間違いありません。

ずっとお小遣い程度でやっていくというのであれば個人事業のままで十分だと思いますが、将来的に事業を伸ばしたい場合や、とくに資金の借入などをしたい場合などは、法人化のメリットや手順などを今のうちから勉強していくのが良いと思います。

――税に関してはとっつきにくさを感じる会社員も多いのが現状です。お勧めの勉強法はありますか。

税に関して多少の予備知識があるなら、本で勉強するのが良いと思います。私も『日本一わかりやすい 一人社長の節税』という本を書いていますが、法人化や独立起業に関する本で具体例や注意点などを読んでいくことで、自分の会社を作るイメージも湧きやすくなるだろうと思います。

もっと基礎からスタートしたい場合は、YouTubeなど動画で学ぶのが良いでしょうね。動画はわかりやすいですし、楽しく、手っ取り早く学べます。動画で噛み砕いて税の基礎がわかってきたところで、本を読むという順番が良いと思います。あとは、自分で確定申告してみるのも良い方法です。実際にやってみることで、どこが分からず、何が難しいのかが実感できます。

――勉強したり情報収集する際に注意することはありますか?

税理士の私がいうのもおかしいのですが、税務は勉強しにくいジャンルだと思います。専門用語も多いですし、法律が不定期に変わりますし、そもそもの仕組みも複雑です。そのため、なるべく税の専門家が発信している情報をみるのが良いと思います。

ネットなどを見ていても、悪意はないのでしょうが、勉強不足や理解が浅いために間違った情報が正しい情報のように掲載されていることがあります。情報が簡単に入手できるようになった一方で、嘘や間違いはどうしても増えてしまうのです。ですので、情報発信者のプロフィールなどを見て、専門外の人が発しているものについてはちょっと疑ってかかった方がいいと思います。

副業、起業、独立などに取り組む人の役に立てるように、私もわかりやすく、楽しい情報発信に取り組みます。

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