アロンソに立ちはだかる高い壁。3度目のインディ500挑戦も厳しい結果に「いろいろあり過ぎたレースだった」

 F1モナコGP、ル・マン24時間、インディ500を制覇するトリプルクラウン達成を目指しているフェルナンド・アロンソだが、最後のひとつ、インディ500制覇は3回目のチャレンジも成功しなかった。

 インディ・デビューだった2017年にはトップ争いに加わったアロンソだが、2回目の挑戦となった2019年は予選落ち。

 インディ500では、「どんなに才能のあるドライバーでも速いマシンがなければ勝てない」と言われるが、二度ワールドチャンピオンになった男が33台の決勝出場枠にさえ入れなかった。

 今シーズンに向け、シュミット・ピーターソン・モータースポーツにマクラーレンが参入し、アロウ・マクラーレンSPという新チームに生まれ変わった。

 彼らは若いふたりをインディカー・シリーズにフルシーズンエントリー。エンジニアリングも強化し、インディ500にはアロンソも加えた3台体制でエントリーした。アロンソにとっては、2回目より良い体制が整ったと言える。

 パトリシオ・オーワードとオリバー・アスキュー、ふたりの若手は開幕から大健闘。オーワードは初優勝目前までいった。チャンプカーで四度のタイトル経験を持つ敏腕エンジニアをテクニカルディレクターに迎えた体制強化が効果を発揮したのだ。

 迎えたインディ500。プラクティス初日にアロンソは5番手のスピードをマーク。順調な滑り出しを見せた。

 しかし、2日目にアクシデントを起こした。数台のマシンの後ろを走っていたアロンソは、ターン4でタービュランスを浴び、ラインをインに寄せ過ぎて単独クラッシュ。

 この日だけで120周以上をこなし、6番手のスピードもマークしていたが、リズムを掴んで走っていると見えていた127周目、フロントウイングに風を当てようとコースのイン側に入り過ぎ、縁石的な部分に左前輪が乗った直後にバランスを崩し、外側のウォールに滑っていった。

 ヒットした角度は悪くなく、サイドポッドと右フロントサスペンションは大きく壊れたが、マシン左側とリヤウィングにはほとんどダメージはなかった。スピンしながらピットロードに滑り込み、フロントノーズを破損。アロンソに怪我はなく、メディカル・センターで検査を受けると、すぐに解放された。

「残念なことだが、またミスを冒してしまった。このコースではマシンのコントロールを失うとすぐに壁が近づいてくる。明日、また再スタートを切る」とアロンソ。これで2年連続クラッシュと、嬉しくない記録を作ってしまった。

クラッシュを喫し運ばれるフェルナンド・アロンソの66号車

 今年のインディ500は、最初の2日間で決勝用セッティングをほぼ仕上げておかねばならないスケジュールとなっていた。水曜、木曜と走ると、もう予選用セッティングを行うファストフライデーがやってくる。

 この日から3日間は予選用にブースト圧の上がったエンジンで走る。アロンソは決勝用セッティングを順調に仕上げてきていながら、アクシデントでマシンを壊してしまった。いちばんやってはいけないミスだった。

 翌朝からの走行にマシンは間に合ったが、予選で上位を狙える状況にはなかった。ほんの小さな差、狂いがスピードダウンに繋がる。クラッシュさせたマシンはいきなりトップスピードで走らせることはできないのだ。

 エントリーが33台きっかりで、予選落ちの心配がなかったのは幸いだった。アロンソは焦らず着々とスピードを上げていき、自分とマシンの自信を回復させることに努めた。今年は予選ブーストでホンダエンジンが強く、シボレーユーザーは不利。アロンソの予選結果は26番手となった。

予選は1回のみのアテンプトで26番手となったアロンソ

## ■2度目の決勝レースはトラブルに泣く
 快晴、気温30度以上というコンディションとなった決勝レース。スタンドに観客はいない。しかし、いつもと変わらない激しいレースがコース上では展開された。

 9列目スタートのアロンソ。吹き荒れるタービュランスの中で走り出し、ハンドリングの不安定さに悩まされた。それでもポジョションを上げ、折り返し点の100周目は15番手で迎えたアロンソ。

 トップ10フィニッシュが見えたが、ここでクラッチにトラブルが発生し、上位フィニッシュの可能性は潰えた。

ピット作業でポジションを落とすフェルナンド・アロンソ

「いろいろあり過ぎたレースだった。楽に走れたラップは1周もなかった。スタート直後はオーバーステアが酷く、マシンのバランスに悩まされ続けた」

「ピットストップでフロントウイングを寝かせ、タイヤの内圧も調整するとマシンは良くなっていった。順位も15番手まで上がった。その辺りまでは行きたいと考えていた」

「クラッチのトラブルは解決できず、ピットインのたびに押しがけが必要になり、タイムロスが大きくラップダウンに陥った。残念ながら最後までそこから抜け出すことはできなかった」

「それでも、今回レースを完走できたのはよかった。ネガティブな点は、クラッチトラブルで戦う権利を失ってしまったこと。チームは素晴らしいパフォーマンスを見せた。この数週間の自分たちの仕事、チーム全員の働きぶりを誇りと感じる。チームの全員がレースを戦おうと奮闘したが、今回は運がなかった」とレースを終えてアロンソは語った。

 来年はルノーからF1に復帰するアロンソ。インディ500への4度目の挑戦は、しばらく先となりそうだ。

初めての完走を果たしたが、1周遅れの21位となったアロンソ

© 株式会社三栄