慰安婦「正義連」告発は文政権に致命的打撃|鄭炳喆 2020年5月、元慰安婦の李容洙が会見を開いた。その内容は、「正義記憶連帯」(通称「正義連」、韓国挺身隊問題対策協議会〈挺対協〉の後継団体)と、その元理事長の不正疑惑、資金流用疑惑告発という衝撃的なものだった。一体何が起こったのか。現地韓国のジャーナリストが徹底解説!(初出:月刊『Hanada』2020年8月号)

「慰安婦のヒロイン」の告発

2020年5月7日と25日の2回、韓国大邱市内で記者会見が行われた。会見したのは慰安婦ハルモニの李容洙(91)。内容は、慰安婦団体「正義記憶連帯」(通称「正義連」、韓国挺身隊問題対策協議会〈挺対協〉の後継団体)と、その元理事長で現在は「共に民主党」の国会議員である尹美香の不正疑惑、資金流用疑惑告発という衝撃的な内容であった。

文政権は昨年来、経済失政と北朝鮮政策によって支持率が下落、「文在寅弾劾」の声すら聞こえる危機状況にあったが、今年1月から始まったコロナ危機と保守派の内部対立・失言騒動の連続に救われて、左派政権の継続に成功、4月15日の総選挙では圧勝、「今後百年間、左派政権を維持する」と気勢を上げていた。

そんなタイミングで、文大統領の庇護下においていたはずの慰安婦ハルモニが反旗を翻すように、慰安婦団体幹部の不正を暴いたのだ。

李容洙ハルモニは過去四回も青瓦台に招待され、文大統領に会見。他にも二2007年には、米連邦下院で慰安婦決議案の可決を控える公聴会に参加し、被害状況を証言している。この時の模様は『I can speak』(私は話す)という映画になった。

2017年11月にはトランプ大統領の国賓晩餐会にも招待され、トランプ大統領とハグした映像が世界に流れた。

いわば「慰安婦のヒロイン」とも言われる李容洙ハルモニが、文政権と民主党左派が実権を握る挺対協・正義連の資金流用疑惑を暴露し、韓国で最も信頼されていた慰安婦団体を一晩のうちに、腐敗した醜悪でいかがわしい市民団体に転落させたのだ。

家5軒を現金購入

李容洙ハルモニは会見で、「水曜集会にはもう出ない」 「これまで参加した女子高校生たちは、反日感情だけを煽る正義連の言葉を信じないでほしい」と訴えた。

李容洙ハルモニの暴露内容は、過去30年間、尹美香や挺対協(正義連)は、多額の慰安婦のための寄付金を本人に届けず、横領していた、というものだ。

韓国メディアによると、これまでに団体には27億ウォンもの支援金が集まったが、ハルモニのために使われたのはたったの6400万ウォン。さらに2012年3月から8年間、尹美香名義の個人口座(4件)に11回にわたり支援金が振り込まれていたという。

金銭面だけではない。李容洙は尹美香に「性奴隷という言葉は嫌だ」と言ったが、「米国では性奴隷という言葉が受け入れられやすいから」と一蹴されたと証言した。

李容洙が挺対協幹部だった尹美香に初めて自分の身の上を告白したのは1992年6月25日のことだが、告発後、尹美香はこの時のことを「30年前に李容洙ハルモニと話した時、『私じゃなくて、私の知人の話だが』などと話していた。彼女が慰安婦でない可能性もある」などと中傷を始めた。

尹美香が4月15日の国会議員選挙前に選挙管理委員会に申告した預金額は、約3億2000万ウォン。尹夫婦が過去5年間に支払った納税額は約643万ウォンに過ぎない。

夫婦の年収は5000万ウォン前後なのに、なぜこれほど多額の預金残高があるのか。さらに彼女は家を5軒も購入しており、すべて現金で支払ったというから驚きだ。

娘を米国カリフォルニアに留学させており、現在でもUCLA(カリフォルニア州立大学)の音楽学部(ピアノ科)に在学中である。年間の学費や生活費は最低でも5000万ウォンから1億ウォンもかかると言われている。尹一家は、どうやってこの学費を工面したのだろうか。

第二の曺国事件

さらに尹美香は、京幾道安城市に慰安婦ハルモニのための休息所(平和と癒しが出会う家)を時価の倍近い値段で購入している。だがその家には、慰安婦ハルモニは一人も暮らしていなかった。なぜか、尹美香の父親が管理人という名目で住んでいただけ。

近所の人によると、年に数度、慰安婦ハルモニの姿を見かけたことがあるが、普段は誰もいないという。

一体、誰のための「癒しの家」なのか? 結局、この「癒しの家」も数年前に売却されたが、この売買に使われた銀行口座も尹美香のものだ。

韓国では「第二の曺国事件」と呼ぶマスコミもあるが、弱い立場で高齢の慰安婦を利用して不正蓄財したのだから、国以上に悪質だ。

この金銭問題は尹美香個人だけの話ではない。彼女が理事長を務めていた正義連は、自分たちを「国際連帯事業として各国の団体を支援している」と説明している。

ところが韓国の週刊誌『時事ジャーナル』の取材によると、正義連は2018年にオランダの人権団体に1億2200万ウォンを送金したというが、人権団体に確認したところ、受け取ったのは1998万ウォン(1万4998ユーロ)だけだと回答してきた。差額の1億ウォンはどこへ?

2014年にも、ベトナムでの井戸掘削費用として集めた約1700ウォンのうち、実際にベトナムに届いたのは約1200万ウォンに過ぎず、残りの約500万ウォンが行方不明である。

ナイジェリアの人権団体に対しても333万ウォンを送金したと説明しているが、相手は122万ウォン(100ドル)しか受け取っていない。

正義連だけではなく、他の慰安婦団体の実態や疑惑が連日のように暴露されている。6月6日には、ある慰安婦団体所長がソウル市内で急死した。当局からの追及逃れの自殺説も囁かれている。

疑惑の代表的なものが、ソウル郊外にある「ナヌムの家」運営をめぐる疑惑だ。日本でも知られている「ナヌムの家」は1992年、仏教団体によって作られた。現在でも生存者ハルモニ18人のうち、6名の慰安婦ハルモニが住んでいる。

韓国テレビYTNによると、「ナヌムの家」には民間人(企業)からの寄付や政府の国庫支援金などで合計70億ウォン以上の資産がある。ところが、慰安婦ハルモニの生活実態は非常に貧しく、表現は悪いが「飼い殺し」の生活だったという。

慰安婦がさらし者に

2019年には25億ウォンの寄付があったにもかかわらず、慰安婦に対して使われた金額はわずか6400万ウォンばかりだった。海外からの訪問客が残した寄付金なども、一切ハルモニの手には渡っていない。金は理事会がすべて管理しているのだ。

金の面だけではない。

ハルモニのなかには、いまでも実名や顔を出したくない人がいる。しかし数年前、一人のハルモニが病に臥せっている時、ある韓国人政治家の娘が訪問したのだが、その際、無理やり病床で記念写真を撮らされたという。戦前は生活のために慰安婦になったハルモニが、今度は生活のためにさらし者になったようなものだ。

慰安婦ハルモニたちは不当に利用され、怒りと不信感を持っている。金儲けのために利用された悔しさと屈辱……92歳の老婆が恥を忍んで全世界に訴えた理由はここにある。

慰安婦ハルモニを利用して不正蓄財した罪は重い。韓国の人々の間では、「慰安婦は彼らが金儲けのために作り出したのではないか?」と疑問に思う人すら多くなっている。

不正事実を知った善良な市民たちが、「寄付金を返せ!」という裁判を起こした。23人の大学生たちが「慰安婦ハルモニのための寄付金であり、営利目的の養老院建設のための寄付ではない」として提訴。詐欺罪で検察に告発もしている。

左派から中傷の嵐

韓国では、正義連など慰安婦団体は「聖域」(タブー)だったが、李容洙ハルモニがその聖域を破った。だが、実はこれが最初のことではない。

2004年、沈美子ハルモニら慰安婦33人が「慰安婦ハルモニを二度泣かせた挺対協は解散しろ!」という声明を出した。

「慰安婦被害者のためといって、全国各地で集めた寄付金や募金額は全部で一体いくらか? その多額の金は一体どこに使用したのか?」

「挺対協は、いつ死ぬかわからない慰安婦ハルモニを金儲けの道具として人々の前で物乞いさせて、私腹を肥やしてきた悪党ども」

内容は、今回の李容洙ハルモニの告発に近いものだった。この声明を出した4年後の2008年に、沈美子ハルモニは亡くなった。彼女の名前は、挺対協など市民団体とソウル市がソウル南山公園に建てた慰安婦記念碑に刻まれていたが、それが削除されていたことがわかった。

削除を指示したのは、当時、挺対協幹部だった尹美香だった。挺対協・正義連に逆らえば、当事者の慰安婦ハルモニですら抹殺される。李容洙ハルモニも、これまで彼女を「慰安婦のヒロイン」として持ち上げてきた左派が、手のひらを返して「親日派」というレッテルを貼って、葬り去ろうとしている。

ある韓国メディアは、李容洙の過去を暴露した。彼女は1944年、16歳の時に故郷・大邱から従軍慰安婦として台湾に連れていかれ、神風特攻隊の兵士に出会った。

その兵士は1945年7月の出撃前夜、「俺がお前を無事に祖国に帰れるように守ってやる」と遺言を残した。その言葉を覚えていた李容洙(当時は「ヤスハラトシコ」という日本名を名乗っていた)は、98年8月、69歳の時に台湾を再訪し、その軍人の慰霊をし、台湾国会議員ら周囲のすすめで霊前結婚式を行った。

韓国メディアは、「日本人に対する愛情には敬意を表するが、日本人の妻だったら日本に帰ったらどうか。韓国民に対して謝罪するべきだ。恥ずかしくないのか」 「結局は売春婦か」という醜い中傷を浴びせた。

SNS上でもたちまち「記憶の歪曲」 「痴呆」 「土着倭寇」 「政治的欲望がある老婆」 「親日派勢力が背後で操っている」といった言葉が乱舞した。

韓国には「左派はで国を亡ぼす」「右派は内部分裂で国を亡ぼす」という言葉がある。左派勢力による手のひらを返した中傷や、で塗り固めた攻撃はその典型だ。

『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河世宗大学教授は、李容洙ハルモニの告発を受けて、5月26日、フェイスブックでこう書いた。

「難しい環境のなかで叫び声をあげたハルモニが攻撃され、『ナヌムの家』の告発者の身辺にも危険が迫っている状況がある。私が交流したハルモニたちも慰安婦団体を怖がり、最後まで沈黙して亡くなった。

今回の爆弾発言で世界の韓国に対する不信感が強まった。せっかく文化コンテンツやコロナ対策を通じて獲得した信頼感に致命的な打撃を与えることになる」

他にも、済州道知事の元喜龍がフェイスブックで、「歴史の犠牲者である慰安婦ハルモニに対して、(慰安婦団体が)居直ったように二度目の加害者となるような歴史にしてはならない。今回の事件は歴史に対する大韓民国の常識と良心にかかわる問題であり、反日陣営の論理で加害者(正義連・挺対協)を擁護するのは正当化できない」と書いている。

李容洙ハルモニの告発で、慰安婦問題そのものが根底から検証されることになった。今後、人権の名前を借りた、いかがわしい市民運動の実態が続々と暴かれることになるだろう。日韓関係の改善に向かう可能性すらある。

何の行動もとらない文在寅

2015年12月28日、朴槿惠政権と安倍政権が電撃的に日韓(韓日)合意したのは、慰安婦問題によってこれ以上、日韓関係の足を引っ張ってはならない、と両者が決意したからである。

日韓合意は、韓国民を100%満足させる合意ではないだろう。しかし慰安婦問題は、韓国の指導者がいかなる非難でも受ける覚悟をして、決断を下さなければ解決できない問題だ。朴槿惠前大統領はまさにこの問題を正面突破し、日本との合意を引き出した。 当時、野党代表だった文在寅はこの合意に「10億円で韓国民の魂を日本に売るのか!?」と大反対をした。

大統領に当選してからは、2017年5月には「積弊清算第一号」と規定して、日韓合意をひっくり返した。しかも「再交渉はしない」と意味不明な発言を繰り返し、日韓間での解決方法も提示しないまま棚上げ状態で今日までやってきた。

文在寅政権は「正義、公正、平等」を謳って誕生し、慰安婦被害者問題と日帝徴用被害者問題で「被害者中心主義」でやってきたはずだが、李容洙ハルモニの告発に対しては何の行動もとっていない。

これまで文大統領は、金学義前法務部次官の性接待疑惑、性暴力被害者のタレント、チャン・ジャヨン自殺事件、インターネットメッセンジャーを通じた性的虐待・性搾取事件などに対して迅速な捜査と監察、真相調査を指示してきた。 ところが、正義連と尹美香の不正疑惑については指示もない。

6月8日になって、ようやく首席補佐官会議で「慰安婦運動の大義を守れ」と発言しただけだ。そこでも「李容洙ハルモニは慰安婦運動の歴史」とは言ったものの、尹美香には触れなかった。「被害者中心主義」を主張していたはずの文政権は、不正疑惑の中心人物であり、加害者の尹美香議員を守ったのだ。

文大統領は、日本が10億円を拠出してできた「和解・癒やし財団」を2018年11月に解体し、日本に向けてこう主張した。

「日本が真実を認めて被害者ハルモニに心を尽くして謝罪し、そのようなことが再び起きないように、国際社会とともに努力する時になったらハルモニも日本を許すことができるだろう。それが完全な日本軍慰安婦問題の解決だ」

慰安婦問題は北の戦術

いまや、この文大統領の言葉は虚しく聞こえる。現在、文政権が主張すべきことは、「正義連(挺対協)は真実を認めてハルモニたちに心を尽くして謝罪すべきであり、また政府はこのようなことが二度と起こらないように約束し、不正疑惑の真相を究明する」ことだろう。

文政権が慰安婦問題の解決策を提示せず、慰安婦問題での合意を、すなわち日韓合意の精神を無視しているのは、北朝鮮の対南統一戦線戦術に呼応しているからに他ならない。

北朝鮮の対南統一戦略戦術の核心は、韓国内の「反米」と「反日」を扇動することであり、それによって韓国から米国と米軍を追い出して、親日派の清算を通じてわが民族同志による統一を実現することである。

文政権の大統領直属の政策企画委員会委員長を歴任した同党の丁海亀氏の論文「解放前後史の認識」によると、

「韓国における国家権力掌握において、米軍政の支援を受けた極右勢力が反革命の分断政権創出に成功した。 反帝反封建の民主主義革命のために、人民政権を立てようとした左翼勢力は国家権力掌握に失敗。 これは米国を追い出さず、親日派清算をしなかったという反省に立っている」

北朝鮮の対南戦略は一貫している。金日成主席の「冠(笠)の紐理論」が基本路線だ。2007年、元朝鮮労働党国際担当書記の黄長は「冠(笠)の紐理論」をこう説明した。

「金日成は反米統一戦線戦略を立てる時、韓国の政権は冠(笠)を被った政権のようだと見た。 冠(笠)の紐の片方は米国との同盟であり、他方は日本との同盟だ。

冠(笠) というものは、どちらの紐であっても、一本切ってしまえば口で吹いても飛んでいってしまうものだ。我々(北朝鮮)の戦略的目標は、韓米同盟、韓日関係を悪化させて、韓国と米国の関係、日本との関係を切り離すことなのだ。そのために韓国で反日、反米勢力を強化するようにしてきた」

まさにこれこそが慰安婦問題の本質である。すなわち慰安婦問題は、韓国と日本を離間させるためのもので、文政権が半永久的にこの問題を争点化にし続ける理由がこれなのだ。

韓国で反共主義を掲げる自由共和党は、「親日派の清算」を主張する文政権左派勢力を「土着化したパルゲンイ(共産主義者)」と批判。代表の趙源震も、「文在寅政権は親中、親北朝鮮、従北政権だ。 大韓民国の共産主義者たちが凝縮した政権」と主張している。

尹美香を囲む北朝鮮人脈

実は、今回の不正疑惑の中心人物である尹美香議員を囲む人脈は、全て北朝鮮につながる左派勢力である。

1990年に創設された韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の幹部は、1980年代に大学生として左派運動に参加した女性活動家が中心だ。尹美香は92年から挺対協幹事を務めた。その後、事務局長や事務総長を歴任。2018年に慰安婦関連市民団体が組織を統合運営することになり、正義記憶連帯の理事長となった。

尹美香以外にも、慰安婦問題の多くの女性活動家が政府高官や青瓦台に入った。池銀姫前女性部長官は元正義連理事長、五期議員を務めた李美卿韓国国際協力団理事長は挺対協総務、シン・ミスク前大統領均衡人事秘書官は挺対協実行理事出身だ。韓慶煕正義連事務総長は青瓦台(大統領府)広報企画秘書官キム・グチョル氏の妻である。

さらに尹美香議員の夫・金三石氏は、京畿道水原市の水原市民新聞代表という肩書をもった、筋金入りの左翼活動家である。

金氏は1993年、日本とも関連したスパイ事件に関連して、国家保安法違反で拘束された。前年の92年は反核平和運動連合政策委員として、デパート店員だった妹と日本に渡り、韓国政府から反国家団体と指定されていた「在日韓国民主統一連合」関係者と会い、金銭を授受した疑いで立件されたのだ。大法院で金氏は懲役4年の実刑、妹は懲役2年、執行猶予3年の宣告を受けている。2014年の再審請求で一部減刑されたが、事実は変わらない。

1997年に出所した金氏は、2005年に水原市民新聞を創刊。同地域の教会関係者や牧師らと図って「京畿民主言論市民連合」 「水原経済正義実現市民連合」などの地方組織を作り、左派系牧師らとともに容共組織を作った。妻の尹美香が権力を掌握した正義記憶連帯の運営委員にもなり、背後から操っている。

2008年3月から水曜集会を主導したのも水原市民新聞グループであり、日本大使館前の慰安婦像に集まった女子高校生らも、水原地域から多く動員されたことが判明している。

この水原市民新聞の実態は、相当いかがわしい。同紙は京畿道庁や水原市庁に三名の記者登録をしている。

しかし、キム・ヨンアと名乗る記者が2012年10月から2020年5月12日まで、なんと合計7万2000件もの署名記事を書いているのだ。公休日を除いて、毎日平均38本の記事を書いている計算だ。

しかもあるメディアの取材で、「キム・ヨンアと名乗る記者は実在しない」と水原市庁が答えている。つまり、幽霊記者が一人で記事を書きまくっているのだ。

夫も金銭疑惑で追及を

金三石氏は、2008年には韓国インターネット言論社協会常任会長に就任。弘済言論人協会会長の肩書を利用しながら、左派陣営の言論形成に影響を与えてきた。2013年4月には、戦争反対平和実現水原非常時局会議の中心メンバーにもなっている。

興味深い点は、金三石氏も妻の尹美香と同じような金銭疑惑、公金不正流用などの追及を受けていることだ。

水原市民新聞は2005年5月に発足した際、個人と団体を対象に発起人を呼びかけ、設立基金として1億8000万ウォンを集めた。文化体育観光部の資料によれば、同新聞は法人でなく、個人事業者として登録されているため株式を発行することができず、設立資金の行方はいまでも不透明だという。

さらに、韓国では1000万ウォン以上の寄付を集めるには地方自治体に登録しなければならないが、水原市民新聞はその登録をしていない。

それだけではない。金氏は水原市民新聞を武器にして、全国の16大学を相手に脅迫まがいの情報公開請求を繰り返していた。

ある法曹関係者は、金氏が2013年頃、水原市内で某大学広報関係職員と会い、「情報公開請求をすると、弁護士費用だけでも1000万ウォン以上かかる。それに大学の業務が麻痺する可能性もある。自分の新聞に300万ウォン出してくれれば、情報公開請求を撤回する」と金銭を要求したと証言している。

このような脅迫で約6000万ウォンを騙し取ったとして、2019年6月には一審で懲役1年の宣告を受けている(現在、上告中)。

夫は左翼ゴロツキの常套手段を使い、妻は慰安婦団体という聖域を隠れ蓑にして私腹を肥やしてきたのだ。とんでもない夫婦である。

今後の行方は、尹美香議員と正義連の問題は、検察の捜査結果にかかっている。 検察が慰安婦という聖域を避けるのか。それとも、その恥部を満天下に明らかにするか。

日韓両国の聖域(タブー)である慰安婦問題と慰安婦団体の実態が明るみに出ることによって、新たな日韓関係の局面が生まれてくることを期待したい。

(翻訳:成田順美)

鄭炳喆 | Hanadaプラス

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