進む晩婚化と出産年齢の高齢化
女性の社会進出や価値観の多様化などにより日本では晩婚化が進み、それに伴って第一子出産年齢が高齢化していることは周知の事実であろう。第一子出生時の母の平均年齢の年次推移を見てみると、ここ5~10年の間に30歳を超え、令和元年では30.7歳となっており、ここ50年で5歳ほど上昇、35歳以上の出産をする母親の年齢の割合も上昇している。
(厚生労働省、令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況より)
(厚生労働省、不妊治療をめぐる現状より)
年齢が上がるとともに出産に伴う母子へのリスクが高まることなどもあり、近年では不妊治療の件数も増加しているが、世界では同性婚をめぐる背景の変化などもあり、代理母出産についての許認可やサービスが増加、多様化している。
特別養子縁組と代理母出産
子を望みながらも出産が難しい夫婦やカップルにとっての選択肢に特別養子縁組と代理母出産による出産がある。
不妊治療を受ける際には母子へのリスク回避などの理由から特別養子縁組の説明が行われているが、特別養子縁組では認知の低さや遺伝子的に実子を持つことができないという理由から不妊治療をせずに特別養子縁組をするカップルは少なく、2014年の成立件数は513件とその他先進国における成立件数に比べて低いのが現状である。
(厚生労働省、平成28年12月26日里親及び特別養子縁組の現状についてより)
代理母出産では、カップルの受精卵、夫の精子と第三者の卵子を体外受精した受精卵、第三者の精子と妻の卵子を体外受精した受精卵あるいは第三者同士の受精卵を代理母の子宮に入れて出産をすることになるので特別養子縁組とは異なり夫婦の遺伝子をもった子の出産を望むカップルにとっての選択肢として世界では件数が増加している。
日本の現状としては法整備が行われていないため法的に違法ではないが、日本産科婦人科学会では以下のような理由から代理懐胎については認めないという見解を発表している。
1)生まれてくる子の福祉を最優先するべきである
2)代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う
3)家族関係が複雑化する
4)代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない
アメリカでの代理母出産の費用例とその内訳
日本でもプロレスラーとタレントの高田延彦・向井亜紀夫妻が話題となったように、子を望む夫婦が海外の代理母に依頼をして出産を行うことが一つの選択肢となっているが、アメリカでも音楽プロデューサーのカニエ・ウェストとキム・カーダシア夫妻が第三子と第四子を代理母による出産を行ったことが話題となった。
そこで今回はWest Coast Surrogacyでの代理母出産の費用を一例としてご紹介する。
(West Coast Surrogacyウェブサイトより)
上記のグラフの通り、West Coast Surrogacyでは$90,000-$130,000というおおむね1,000万円-1,500万円程度の費用となっている。その内訳としてはおおむね600万円以上、半分以上が代理母に対する支払いとなっており、加えて契約書の作成や出生など法的な手続きとサポートを受ける費用、そして心理状況や犯罪歴、通院歴などのスクリーニング費用、そしてその他心理的サポートや保険、ホテルの滞在費用などがその内訳となっている。
他の国での事例や価格例
代理母に関する規制は国やエリアによって大きく異なっており、商業目的でない、かつ異性夫婦のイスラエル人にのみ代理母出産を認めるイスラエル、インド国籍者のみに認めるインドなど国によって規制は様々で、代理母出産に必要な費用についてもウクライナやジョージアなどの東欧諸国ではおおよそ500万円程度と様々で、オンラインで代理母や精子や卵子のドナー、関連する弁護士を見つけられるFindSurrogateMother.comのようなサイトも存在する。
倫理的、法的に様々な課題がある代理母出産だが、家族の形が多様化するなかでどのような法整備、社会の変化が起きていくか、今後も注目していきたい。