2020年1-7月「太陽光関連事業者」の倒産状況

 「太陽光関連事業者」の倒産は、年間件数は2017年の87件をピークに、その後は減少をたどっている。固定価格買取制度(FIT)による電力買取価格が年々下落し、相次ぐ新規参入もあって過当競争が激化し、2011年から2017年まで増加をたどったが、近年は競争力の劣る企業の淘汰が進み、落ち着きを見せている。
 しかし、2020年1-7月累計の倒産は、件数が44件(前年同期比4.7%増)、負債総額は95億3,100万円(同8.2%増)と、件数、負債総額がそろって増加した。経営体力の乏しい企業の淘汰を反映して、負債1億円未満の小規模倒産が約6割(61.3%)と大勢を占めたが、大規模計画の頓挫などで負債10億円以上の大型倒産も2件発生した。2020年は新型コロナウイルス感染拡大で景気の先行きが不透明なことから、企業の投資意欲も後退が見込まれ、淘汰が加速する懸念もある。さらに、事業計画の甘い大型倒産にも目が離せず、3年ぶりに前年を上回る可能性が出てきた。

  • ※本調査は、ソーラーシステム装置の製造、卸売、小売を手がける企業、同システム設置工事、コンサルティング、太陽光発電による売買電事業等を展開する企業(主・従業は不問)を「太陽光関連事業者」と定義し、集計した。

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負債額別 1億円未満が6割を占める

 負債額別は、最多は1千万円以上5千万円未満の17件(前年同期比21.4%増)。また、5千万円以上1億円未満も10件(同42.9%増)発生し、1億円未満の倒産が6割強(構成比61.3%)を占めた。前年同期より1億円以上5億円未満が6件減少する一方、1億円未満は増加したことで負債の小型化が進んだが、5億円以上の大型倒産の増加で、全体の負債総額は膨らんだ。

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原因別 「販売不振」が約6割

 原因別では、販売不振が26件(構成比59.0%、前年同期比7.1%減)と全体の約6割を占めた。
次いで、事業計画の甘い放漫経営など事業上の失敗が6件(同13.6%、同50.0%増)で続く。
 このほか、設備投資過大は2件(前年同期ゼロ)にとどまったが、負債総額は29億8,600万円(構成比31.3%)と投資に見合った回収ができず、多額の負債を抱えた倒産が目立った。

 2019年11月以降、FIT制度の改訂で住宅用太陽光発電などの余剰電力の固定価格の買取期間が順次満了を迎える。FIT制度の度重なる電力買取価格の引き下げで、資金力が乏しく参入歴の浅い企業は厳しい経営環境下に置かれている。また、一部管内では出力制御の要請などで、最終的に採算性を維持できず破産を申請した売電事業者も出ている。
 改正再エネ特措法により、2022年度から市場価格と連動し、補助額を上乗せするFIP制度が創設される。ただ、参入企業の採算性は乖離しており、新制度でもすべての企業が救われるわけではない。今後も、再生可能エネルギーへの国民負担の低減と、事業者の採算維持への自助努力は欠かせない。新型コロナで景気の先行きが不透明な中、業界の競合は厳しい状況は変わらず、2020年の太陽光関連事業者の倒産は3年ぶりに前年を上回る可能性も出てきた。

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