女子ソフト部元監督にセクハラで賠償命令、部員に「女性として見ている」と発言 東京富士大

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会見に参加した女性(2020年8月28日、東京・霞が関の厚労省記者クラブ、弁護士ドットコム撮影)

東京富士大学(東京都新宿区)の女子ソフトボール部の70代男性監督(当時)からセクハラを受けたとして、当時部員だった20代女性が、監督と大学側に対し慰謝料など約1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(野村武範裁判長)は8月28日、セクハラ行為を認定し、監督と大学側に約79万円の支払いを命じた。

監督は数々の学校や社会人チームで指導し、東京都大学ソフトボール連盟の会長をつとめるなど日本女子ソフトボール界で実力が高く評価されていた。大学側は女子ソフトボール部を強化クラブとし、積極的に広報活動をおこなっていた。

判決後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた女性は「自分がされていることを理解するのに、何日もかかりました。監督という立場を利用し、絶対的な主従関係を作り上げ、密室でセクハラ行為をおこなう計画的犯行。今でも忘れることはないですし、許すこともできません」と語った。

●「言ったらどうなるのか分かるよな」と口止め

判決によると、女性は2016年5月、監督室に一人呼び出され、膝の上に座らされたり胸や太ももを触られたりした。

その際「俺は女性として見ている」「家には女房がいるけど、グラウンドにはいない。お前がその代わりをやれ」などと言われ、「ふたりのことは、チームメイトの誰にもいうな」「言ったらどうなるのか分かるよな」と口止めされた。

別の日にも監督室で抱きつかれたり、パジャマを着た監督から「一緒に寝ないのか」と言われたりした。

女性はすぐに部活の先輩女性にLINEで一連のセクハラを伝え、6月には大学の教授にも相談。7月には病院でPTSDなどと診断された。9月には大学側に報告し、第三者委員会が設置されセクハラ行為について調査がおこなわれた。

野村武範裁判長は、女性が当時監督を信頼しており虚偽の報告をする動機がないことなどから、女性の供述の信用性を認め、「性的自己決定権を侵害するもの」と判断した。

また、監督は部活動強化のため招へいされており、大学のイメージアップや学生を集める上で重要な役割を果たし事業の一部に位置付けられること、部活動の指導の過程において監督と部員という関係性を利用してセクハラが行われたことなどから、大学側の使用者責任を認めた。

●女性「お金で解決されたくなかった」

女性によると、当時は監督から毎日怒鳴られ、「私はどうしようもない人間」と思うほど追い込まれていた。チームは監督の指示が絶対で、練習や食事、入浴も指示がないとできなかったという。

そんな中、事件前に監督から「お前を信頼している。私に対する思いを書いてこい」と言われ、女性は「監督を支えたいし、もっと気持ちを分かりたい」などと手紙を書いて渡した。女性が被害を告発したあと、監督は女性の手紙を持ち出し「はめられた」「手紙を書けという指示はしていない」と主張したという。

女性は「その時初めて、自分を擁護するために手紙を書かせたんだと理由がわかりました。私は逆に加害者呼ばわりされ、悔しくてたまりませんでした」と振り返った。

女性の他にも、セクハラ被害を受けた部員がいた。裁判では監督側から示談の申し入れがあったが、女性は「監督は常習者で、被害を受けた他の仲間のこともあった。お金で解決されたくなかったし、隠蔽されたくなかった」と拒否した。

代理人の宮本寛之弁護士は「賠償額は70万だが、慰謝料を求める事案の中では一定の評価を得られたのではないか」と判決を評価した。

大学側は第三者委員会の調査結果を本人に開示していなかったが、訴訟の中で提出を求められ開示した。宮本弁護士は「当初監督が学長からのヒアリングに対し、セクハラ行為を認めており、第三者委員会もセクハラに該当すると判断していた。これが今回の訴訟でのセクハラ認定における重要な柱となった」と話した。