須永兼次の「アニソンをしゃぶりつくせ!」 第19回 茅原実里・TRUE――歌が、アニソンがくれる”希望” 【アニサマ2020特別編その17】

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第17回目となる今回は、茅原実里、TRUE (五十音順・敬称略)の2人をご紹介。それぞれの”希望”を感じる楽曲を今聴きたい1曲としてピックアップし、今回の”予習”曲とさせていただいた。

また今回は本企画の最終回。最後にアニサマ2020-21テーマ曲「なんてカラフルな世界!」についても取り上げさせていただく。来年への間違いない”予習”としていただければ幸いだ。

【茅原実里】”再生”を感じさせる、希望の歌

声優としては2004年にTVアニメ『天上天下』棗亜夜役でデビュー。同年からアーティストとしての活動も開始し、2006年にTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希役を務めると一気にブレイクを果たす。その際歌唱したキャラソンをきっかけに、2007年にはシングル「純白サンクチュアリィ」で現在のレーベルでのアーティスト活動をスタートさせると、声優活動と並行する形でツアーなど精力的なライブ活動も行ない、日本武道館やさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブも達成。2009年からは毎年夏に、河口湖ステラシアターでのライブを開催し続けている。

「アニサマ」にはソロとしては2007年から、2016年を除く全ての年に出場するいわば常連組であり、2012年には大トリも担当。フェス必殺ナンバーとその年の最新作を組み合わせて、毎年場内を沸かせてきた。

☆この曲を聴け!……「雨上がりの花よ咲け」

アニソンではないが、茅原の楽曲で今いちばん聴いてほしいのはこの曲。苦しい日々を抜けた先の”雨上がり”の日々を過ごす人たちに寄り添ってくれるこの曲が、リリースから12年の月日を経た今、改めて今の世の中に刺さるものになっていると感じたからである。

イントロ冒頭の一気に駆け上がるようなストリングスは、まるで芽生えたばかりの新芽のもとに雲間から射し込む一筋の光。直後に加わるグロッケンや鐘の音色は、まだその身についたままの雨露を思わせる。そんな情景を冒頭わずか8小節だけで、しかもサウンドだけで完全に説明しきり、リスナーに”再生”のイメージを与えてくれているのだ。

サビの途中にところどころ泣きのコードが差し込まれるのは、それでもまだつらさが抜けきらないリスナーに共感するためだろうし、サビ中盤で不意に挟まれる小規模な転調は、先へと進むための変化や転換を意味しているように思える。

茅原の歌声の塩梅も、非常に絶妙。比較的アッパーなこの曲に対して彼女は柔らかめの歌声でアプローチしているが、それは前述したサウンドはもちろん、言葉としても明確にリスナーに対してのエールを送る歌詞からもメッセージを汲み取って、受け手に寄り添えるようなものを目指したこそのものからだろう。

その結果、ドンとエネルギーを注入して出発を急かすのではなく、陽の光のように温かく降り注ぐエナジーのような印象を与える歌声を実現させた。

そんな押し付けがましさのない希望の歌は、これからを生きるうえで、ぜひ心に留めておきたい曲ではないだろうか。

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【TRUE】劇場版前におさらいしたい、TVシリーズOPのおいしいところ

アニソンシンガー・TRUEとしては2014年に活動開始。圧倒的なパワーと神々しさを兼ね備えた歌声をもって、攻撃性の強いナンバーから大きな広がりをもたせたボーカルで歌い上げるバラードまで、多彩なナンバーを歌唱。また、”唐沢美帆”としてアニソン・キャラソンを中心に、作詞家として歌詞の提供も行なっている。

「アニサマ」には、2016年に初出場を果たしてから現在まで連続出場中。前述したようなパワーとオーラを兼ね備えた歌声で、毎回オーディエンスをとりこにしていく。また、アニサマ2018のテーマソング「Stand by...MUSIC!!!」の作詞も担当。アニソン界にとって欠かせない存在であるのと同時に、「アニサマ」の歴史を語るうえでも忘れることのできない重要人物だ。

☆この曲を聴け!……「Sincerely」 (TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』OPテーマ)

劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の公開も目前。作品や主人公・ヴァイオレットの足跡をたどるために、劇場版主題歌「WILL」とあわせてこの曲も歌われるのでは――ということで、本稿では最終回を迎えた後だからこそ味わえるポイントも含めて、改めてこの曲のおいしいところをおさらいしていきたい。

この曲はまさしくヴァイオレットの、1クール・13話の足跡が全て詰め込まれた楽曲。シーズンが完結したからこそ、一つひとつ感情を覚えていくヴァイオレットの心の動きが、繊細に描き出されていることがよりわかる。

特に最終回を経たからこそより味わい深いポイントは、1サビと大サビの歌詞の対比だろうか。1サビの締めくくりは「わたしは あなたに 会いたくなる」であり単なる心情描写にとどまっていたものが、大サビでは最後が「会いたくなるよ」に変化。

ストーリーやDメロ・落ちサビからの流れも踏まえると、彼女が「書きかけてはやめた」手紙を書ききって、たったひとりの大切な存在へと送った姿が見えてくる。それがまた私たちの胸を、たまらなく熱くするのだ。

そんなこの曲を表現するTRUEの歌声は、楽曲の進行に伴って徐々にスケール感を増していくものの無限に広がりゆきはしない。ヴァイオレットの心情を代弁するかのような歌だから、本来想いを届ける先は、ひとりだけでいいからだ。

感情が盛り上がる部分もありつつも壮大にしすぎないという難しい匙加減を見事に具現化してみせたTRUEのボーカルワーク、本当に素晴らしいものである。

ヴァイオレットの心情を代弁し『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という物語へと宛てられた、哀しみと希望が歌声・サウンドに共存するこの曲。ご紹介したようなポイント以外も含めて、劇場版公開前にぜひもう一度味わい尽くしてみてほしい。

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【アニサマ2020-21テーマソング】おいしいとこ全部のせ! 生でもっと化けちゃう”お祭り”ソング

「アニサマ2020-21」のテーマソングは、作詞・作編曲の全てに大石昌良が携わったものに。

CDでの歌唱メンバーは、オーイシマサヨシ、KISHOW(GRANRODEO)、i☆Ris、亜咲花、雨宮天、東山奈央、幹葉(スピラ・スピカ)、鈴木愛奈、仲村宗悟、伊藤昌弘(Argonavis)(※以上、CD記載のクレジット順)だ。

余韻に浸れる大バラードだった2019年のテーマソング「CROSSING STORIES」とは打って変わって、最後にもう一度場内をハッピーで満たし一体とするものへと仕上がっている。

この曲の最も大きな特徴は、徹底した観客目線のように感じた。それを象徴しているのが、曲中で「アニサマ」を”祭り”に例えた点だ。もちろん「アニサマ」は、多くのアニソンシンガーや声優アーティストにとって目標となる舞台。

だが同時に、観客としては毎年恒例のかけがえのない"お祭り"でもあるはずだ。だからこそ今回は、最後に出演者・観客一体となって、2万8千人が一緒に夏の楽しい思い出を作れるような曲を用意したのだろう。なのに落ちサビでサウンドが静かになると、メロディラインを変えることなく切なさが醸し出されてくる。まるで魔法のようなサウンドメイキングがなされているから、不思議なものである。

加えて、コールの入れどころの多さとその気持ち良さも”観客ファースト”なポイント。オーディエンスとして「ここでコールしたい!」と思うポイント全てに、最良のタイミングでコールが織り込まれているのには、もう脱帽だ。また、観客が声を上げるポイントとして”祭り”が最もダイレクトに反映されている、サビ頭の「Wasshoi! Wasshoi!」があえてアルファベット表記にされている点も見逃せない。

これは昨年急逝した、前回までのアニサマバンドでドラムを務めていた山内”masshoi”優を意識したものだろう。こうすることで本来だったらともに立つはずだった「アニサマ2020-21」のステージに連れて来れるだけではなく、彼の名は「アニサマ」の歴史の中に改めて刻まれ、永遠となるのだ。

キャッチーで癖になるメロディに、気持ち良すぎるコールパート。さらにはサビの途中で不意にサウンドを引いてソロの歌声を立たせるなどなど、大石の全手札を投入して生み出されたようにも感じられるこの曲。それも全て、アニサマのオーディエンスはもちろん、アニソンファンがあまねく痛快でハッピーになれる楽曲を目指したから。この決して容易ならざる挑戦に真っ向から立ち向かい、見事形にしてみせた。

本当にどこを取っても楽しさにあふれたこの曲は、言い回しとしては失礼千万かもしれないが、率直に"キャッチーの暴力"でさえある楽曲だと思う。理屈抜きでこの曲と一緒にあなたも”アニサマ”になって、濃密すぎる5分間を楽しみ尽くしてほしい!

――――――――――――――――――――――――――――――――――― 今年の夏は、残念ながらさいたまに祭り囃子は鳴り響くことはなかった。だが日々音楽から希望をもらい、それを抱えたまま、「アニソンが好き!」という想いを大事にして生きていこうではないか。来年こそは祭り囃子が響くはずの、2021年の夏を目指して。

☆あとがき

「アニサマ2020」の順延が発表されてから、3ヶ月ほどが経ちました。

この企画の第1回でも書いたことではありますが、この連載を提案したのは「アニサマ2020に出場を決めていたけれども、順延になることで"出場予定だった"という記録だけが残り、多くのアニソンファンに曲を聴いてもらう機会が失われてしまう」アーティストの方が生まれてしまいそうで、そのことがとても悲しいことに思えたからです。

なのでアニソン自体と、そのシーンを豊かにする一翼を担ってきた「アニサマ」への感謝をただただ形にしたく、企画させていただきました。

今回はご紹介していくなかで、あえてド鉄板曲を外した方もいます。それも今回の”COLORS”というテーマになぞらえた考えで、「仮に2曲歌うなら鉄板曲は絶対にみんな聴いてくるだろうから、もう1曲を提案したい」という想いからのものです。

どのアーティストさんにも、鉄板曲以外にもたくさんの楽曲と世界を持っています。

そういった”カラフルな世界”を少しでも多くの方に知っていただければ――という想いのもと、選曲させていただきました。

お読みくださった皆さんに、少しでも「今まで聴いたことがなかったけど、この人のいいな!」とか「この人、こういう曲も歌うんだ」のように感じていただけたら、これ以上幸せなことはありません。

最後に、この企画を了承してくださったマイナビニュースさん。
勝手に始めた企画にもかかわらず見守ってくださった、「Animelo Summer Live」に携わる全ての皆さん。
そして何より、毎回毎回記事を読んでくださった皆さん。
本当にありがとうございました。

皆さんのアニソンライフが、これからももっともっと楽しく豊かなものになりますように……!

来年の夏こそ、すんごく熱い”オレタチノアニサマ”にしましょう!!

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12