「日本一小さい牧場」チーズ作りで大賞 北海道仕込みの腕前

近寄って来るジャージー種の牛に草を与える河内さん=厚木市林

 「日本一小さい」と自らうたう神奈川県厚木市林の牧場「牧歌(ぼっか)」がチーズ作りで奮闘している。住宅地に程近い農地の一角で約千平方メートルの敷地を借り、茶色いジャージー種の乳牛3頭とヒツジ11頭、ヤギ4頭を河内賢一さん(45)=同市王子=が1人で飼育する。2月には第5回関東ナチュラルチーズコンテストで「関東チーズ大賞」を受賞した。

 河内さんは牛乳好きが高じて県立高校卒業後、帯広畜産大で酪農を学んだ。卒業してから愛川町の酪農ヘルパーの仕事を続けた後、10年ほど前に自宅から約400メートル離れた農地を借りて牧場を開設。自宅1階を牛乳やチーズなどの加工場に改装した。

 生産するのは牛乳、ヨーグルト、チーズなど。ジャージー牛の乳は脂肪分が多く、こくがあるという。小規模で手間を掛けて生産するだけに価格は安くない。牛乳は500ミリリットルで500円、ヨーグルトは450ミリリットルで800円。厚木市農協の直売所「夢未市(ゆめみいち)」(同市温水)で販売する。

 とりわけこだわってきたのはチーズ作りだ。製造過程で水分を減らしていくハードタイプと呼ばれる硬いチーズは、4キロを作り上げるのに40キロの牛乳が必要になる。5年ほど熟成したチーズは茶色味を帯び、濃厚な味わいが口に広がる。「かんでいるとうま味が出てくる。するめみたいなものですよ」と河内さん。ヒツジの乳も加えるとうま味が増すという。

 チーズ好きの顧客に向けて会員制交流サイト(SNS)などで発信。訪れた客に試食して味を確かめてもらった上で販売する。チーズの品質向上を目的に2月に開かれた同コンテスト(中央酪農会議主催)では、念願の大賞を獲得した。

 今夏の猛暑の中、牧場の牛やヒツジたちは疲労気味。「しばらくは乳製品の生産を休んで、動物が日差しを避けられる小屋などを広げ整備したい」と河内さん。冬を迎えるころから、再び乳製品の生産を再開しようと準備を進めている。

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