新型コロナウィルス感染症の拡大がビジネス環境に大きな影響を与えています。特に顧客接点を担う営業組織にとって、対面接触を制限される中で、いままでの手法を見直さざるを得ない状況になっています。
昨今の「第二波」ともいえる感染の再拡大により、もはや、対面を代替する「時限措置」というだけではなく、多くの営業組織が、本格的にオンライン営業を業務に組み込む必要に迫られています。
緊急事態宣言解除後にオンライン営業の対応の差が拡大
4月の緊急事態宣言の発出直後は、慣れないビデオ会議など手探りで行っていたオンラインでのコミュニケーションも、次第に活用が進んできました。コロナ禍が収束したとしてもテレワークを望むビジネスパーソンが多く、顧客側もオンライン化が進むことが想定されます。
しかし、オンラインか対面の選択には明確な基準がなく、営業担当ごとに判断をしているケースが多くみられます。緊急事態宣言解除後、オンラインを活用し続ける営業担当と、ほとんどが対面に戻っている営業担当との差が目立つようになりました。
法人営業や複雑な商材を扱う営業では、営業担当だけでなく、上司や他部署の協働者が営業担当とともに顧客接点を担うことになります。オンライン化を進めるか否かは個人だけの問題ではなく、組織の生産性にも大きく影響を与えます。
とはいえ、筆者はすべての商談をオンライン化するのが良いと考えている訳ではありません。今後は、オンライン、オフライン(対面)を使い分ける基準を営業担当や営業組織が持ち、そのメリット/デメリットを意図して選択することが重要なのです。
オンライン営業のメリット・デメリット
オンラインや電話アポのメリットは、移動コストがかからず、前後に予定があっても隙間の時間でアポイント調整が可能になることです。特に関係者が多い場合などは日程調整の選択肢が増え、早いタイミングでアポイント設定が可能となり、上司や協働者の陪席も調整しやすくなります。
一方、デメリットは、顧客にも環境を整備していただく必要があるため、不慣れな相手にとっては労力が大きいことです。また、対面アポと比較して表情が読み取りづらく、対面の時よりも形式ばった雰囲気になりやすいという特徴があります。
この様に、メリット/デメリットがあるものの、移動時間の削減により、営業の生産性が大きく変わる可能性があります。ある法人営業担当の1日の活動について、すべて対面の場合とオンライン(在宅)の場合でどのように異なるかを比べてみましょう。
日々の移動時間が削減されることにより、アポイントの数を増やすことができ、専門部門など協働者の同行を依頼しやすくなります。また、新たな企画業務や自己啓発や子育てなどプライベートに時間を割くことが可能となります。
成果を出すオンライン営業のポイント
昨今、ZoomやMicrosoft teamsなど様々なビデオ会議用のアプリケーションが進化し利便性が高まっています。筆者もコンサルタントとして、1日の中で、名古屋、札幌、東京と場所を変えてアポイントを入れることが可能になりました。
しかしながら、対面で行っていた営業活動をオンラインで行ってみると「熱意が伝わらない」「反応がわからない」「雑談ができない」などの意見がよく挙がります。そこで、このようなオンラインのデメリットをカバーする方法を5つのステップに分けて説明していきましょう。
(1) 商談時のアイスブレーク
まず、オンラインの場合は全員に対して話しかけることになり、雑談をする雰囲気が作りづらいものです。この様な時には、WEB会議室に早めに入っておき、全員が揃うまでの間に雑談をします。
また、初めての参加者などがいる場合は自己紹介を行い、顧客のサービスに対する興味や最近話題になっていることを話すなど、アジェンダに入るまえに、お互いに声を出しやすい雰囲気を作ることが有効です。顧客側も自由に意見が出せる場のほうが満足度は高まります。
(2) プレゼンテーション
会議室で複数名が一つのPCで参加している場合やビデオがオフになっている場合には、反応を読み取ることができません。そこで、アジェンダをできる限り事前にお伝えし、進め方を確認します。
プレゼン中はどのページのどの部分を説明しているのかを指し示しながら、なるべく記載どおりに説明をします。また、プレゼンテーションを短く区切り、都度、理解度や疑問点の確認を行っていきましょう。これにより認識の齟齬を防ぐことが可能です。また、顧客側も疑問に思ったタイミングで解消しながら進められるほうが安心感を持つことができます。
(3) ディスカッション
複数名で議論をする場合、話をする人としない人が対面以上にはっきりと出てしまいます。そこで、発言してほしい人を指名して意見を頂きます。最初は意見を言いづらいため、「感想(質問)でも結構ですが〇〇さんいかがでしょうか?」というように発言に対する責任のハードルを下げてから促します。
もし、ある程度顧客側の参加者の人となりを分かっている場合には、いつも一番発言をしてくれる人を最初に指名して発言しやすい雰囲気を作ることもおすすめです。
(4) 次アクションの確認
オンラインのアポイントは終了後に参加者がバラバラになり、その後のアクションが不明確なままになっていることがあります。そこで、商談の最後に議論したことをまとめ、お互いのアクションについて確認をします。
決定事項などがある場合は議事録を作成して共有しながら進めていくと丁寧な印象を持たれます。または御礼メールとともに決定事項を列挙しておくなどリマインドを行うことでアクションの抜け漏れを防ぎます。顧客側も在宅勤務などの場合、メモがあると社内の認識合わせがしやすくなるので有用です。
(5) 余談(エレベータートーク)
帰り際に別件の相談や情報交換などを行うことをエレベータートークと言いますが、オンライン会議では終了後にそれぞれが退席してしまうため、会話を続けることが難しくなります。そこで、アポイントが終了した後、窓口となる担当者など一番関係が近い方に電話して、進め方に問題はなかったか、他の参加者の反応はどうだったかなど振り返りを行います。
このフォローを繰り返し行うとアポイントの場では分からなかった顧客側の反応や課題意識などを把握するとともに、顧客との関係構築にも有用です。
組織として営業活動のナレッジを集める
このように、オンライン商談も工夫によって、デメリットをカバーして成果を上げることができます。また、オンライン対応は顧客側にも会議室やメンバーのスケジュール調整を省けるというメリットがあり、経済合理性を考えると双方にとって効率的なのです。
もちろん、どんなにオンライン環境が整備されても、対面営業が必要な場面はあります。オンラインを上手く活用することによって、ここぞという時に対面でのアポイントの価値を演出することが今後の営業の生産性を高めるためにも必要ではないでしょうか。