「頑張っているね」と伝えて もうすぐ新学期 不安軽減へ”ゆとり”大切 インタビュー 長崎大大学院教育学研究科 内野成美教授

「子どもたちに、あなたも頑張っている1人だよと伝えることが大切」と話す内野教授=長崎市文教町、長崎大

 長崎県内多くの小中高などで、9月1日から新学期が始まる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、風評被害や差別も懸念されている。短い夏休みとコロナ禍が子どもや保護者、学校にどんな影響を与えているのか。心のケアには何が必要か。新学期を前に、県内スクールカウンセラーの指導、相談役を務めるスーパーバイザーの長崎大大学院教育学研究科、内野成美教授に聞いた。

 -新型コロナの影響で、臨時休校や夏休み短縮など学校現場を取り巻く環境は大きく変わった。
 現在、子どもも大人もこれまでとは違った時間を過ごしている。「夏休みが短くても大丈夫」という子もいれば、そうではない子もいる。その個人差に寄り添って、ゆっくりスタートしてもらえたらと思う。
 3月初めの休校で卒業式や終業式など、児童生徒と先生、保護者が一緒になって準備してきたイベントが縮小、中止になった。いろいろな思いを抱えながら長い春休みを過ごし「4月になったら」と期待を胸に耐えてきたところに、また休校。今までに体験したことのない、先が見えない事態に不安や迷いを感じた子も多かったのではないか。
 ただ、みんなで協力して自粛期間を過ごしたからこそ、自分が感染した場合はどうすればいいか、身近な人が感染した場合はどうすればいいかなど、社会全体で対応策の積み重ねは進んできたと感じる。

 -感染拡大と同時に、差別や偏見への懸念も広がっている。
 日本赤十字社はコロナの怖さを「三つの感染」で表現している。一つ目は病気としての感染、二つ目は「不安」の増幅、三つ目は「差別」の拡大。治療薬がない中、ウイルスへの恐怖と不安が膨らみ、感染者や感染が発生した地域を避けるような言動や態度につながって、差別や偏見が生まれてしまう。熱やせきがあっても差別されるのを恐れて、受診をためらったり隠したりして、負の連鎖で感染が広がる懸念もある。
 社会生活を一斉に休止すれば感染を一定防げることは、自粛期間を通じて子どもも大人も学んだ。しかし、休止し続けることはできない。新しい生活様式の中、学校もどのような工夫ができるのか試行錯誤をしており、感染予防と学校生活の両立を見極めている段階にいる。

 -負の連鎖を断ち切るには。
 先生と子ども、それに保護者もマスク着用や消毒、社会的距離の確保など最大限の努力をしている。みんながそれぞれに努力をしていることを、自分自身で知ってもらいたい。そして自分で自分を褒めてほしい。子どもたちに対して「あなたも頑張っている1人だよ」というのを、大人がきちんと伝えることが大切。誰かに認めてもらうことで心にゆとりが生まれ、不安の軽減につながる。不安が減れば、心無い差別や偏見は減らせると思う。

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