『世宗大王 星を追う者たち』王と科学者の友情物語

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 恋愛映画をみずみずしく撮らせたら韓国屈指のホ・ジノ。だが、その新作は時代劇。しかも、身分の差を越えた男同士の友情物語だ。ハン・ソッキュとチェ・ミンシクが『シュリ』以来となる共演を果たし、ハングルの創製などで知られる朝鮮王朝第4代王・世宗(セジョン)と、彼に奴婢の身分から重用された実在の科学者・大護軍チャン・ヨンシルを演じている。

 実は前作『ラスト・プリンセス―大韓帝国最後の皇女―』も歴史上の人物にフォーカスした時代劇だった。ただし、本作と違って恋愛要素はたっぷり。例えば少女時代の初恋のシーンなどに、さすがホ・ジノと思わせるみずみずしさがまだ残っていた。それだけに、着実に得意分野=自らの作家性を手放してきている彼に、どこへ向かおうとしているのか?と問わずにはいられない。

 とはいえ、ハン・ソッキュの演技はいつものように(つまり現代劇のように)ナチュラルだし、雨や風もホ・ジノ作品らしい叙情性を醸している。何より、ヨンシルが星座をプラネタリウムのように再現して王を楽しませるシーンや、二人で寝そべって星空を見上げるシーンは、まるでラブシーン…あ、そうか、これはラブストーリーだったのだ。だとしても、決して対等とは言えない二人の関係性が、“友情”というより“献身”であるように、ラブストーリーだと捉えると、あまりにも時代遅れ。やはりホ・ジノは、模索途上にあるのかもしれない。★★★★☆(外山真也)

監督:ホ・ジノ

出演:ハン・ソッキュ、チェ・ミンシク

9月4日(金)から全国順次公開

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