大学では公式戦登板なし 28歳の苦労人、鷹・渡邉雄大が掴んだ支配下昇格と示した可能性

会見に臨んだソフトバンク・渡邉雄大【写真提供:福岡ソフトバンクホークス】

2017年のドラフトで指名された114人中、渡邉雄が名前を呼ばれたのは111番目

ソフトバンクは31日、育成選手だった渡邉雄大投手と支配下選手契約を締結したと発表した。「140」だった背番号は「48」に決定。オンラインで記者会見を行った渡邉雄は「球団には感謝の気持ちでいっぱいです。支配下ということで責任とプレッシャーが出てくると思いますが、自分のすべきことをやってチームに貢献したいと思います」と喜びを語った。

苦労人の28歳が悲願だった支配下昇格を手にした。新潟県出身の渡邉雄は中越高、青山学院大を経て、2013年にBCリーグの新潟に入団。大学時代は控え投手で、公式戦での登板は1試合もなし。それでも、地元の独立リーグ球団である新潟から指名を受けて野球を続けた。

ソフトバンクから指名を受けたのは2017年の育成ドラフト6巡目。チームで指名された11選手の中では最下位指名、12球団全体でこの年に指名された114選手のうち111番目に名前が呼ばれた。当時26歳。時間をかけて育て上げることを目的とする育成選手では特に珍しい“オールドルーキー”だった。

プロ入りから3年。今季はウエスタン・リーグで11試合に登板していまだに無失点。防御率0.00と快投を続けてきた。今季は3月にオープン戦ながら1軍のマウンドを経験。「緊張して何もできなかった。またあそこでプレーして力を発揮するには、と考えた。ヒット1本も打たれない、失点しないと強く思うことが自分のためになるのでは、と考えてプレーしてきた」と、経験を生かして成長に繋げたという。

現在28歳で、9月19日には29歳になる。チーム内での同い年は今宮健太内野手や石川柊太投手、森唯斗投手ら。他球団でいえば、マリナーズの菊池雄星投手やレイズの筒香嘉智外野手、広島の大瀬良大地投手、西武の山川穂高内野手らの名前が挙がる。渡邉雄の遅咲きぶりがこれだけでも分かる。

「1人でも多くの選手がそういう可能性もあるんだと、野球を長く本気で続けるキッカケに」

会見では「26歳で独立リーグでプレーしていた自分を見つけ出してくれて、29歳まで成長する機会を与えてくれ、支配下契約とまた1つ挑戦する場を与えてくれた球団に感謝の気持ちでいっぱいです。支配下というとうこで責任とプレッシャー出てくる。自分のすべきことをやってチームに貢献したい」と自身を発掘し、そして成長させてくれた球団への感謝の思いを語る。

公式戦での登板がなかった大学時代、4年間の独立リーグでの経験、2年半の育成時代。それでも諦めることなくひたむきに野球を続けてきた渡邉雄は「NPBに入るまでも遠回りをしてここまできている。大学では公式戦で1試合も投げない中で独立リーグに進んで、本当に多くの人に支えられて、助けられてここまできている思っています。そういう方々の思い、応援が自分を奮い立たせてくれて、ここまでやってこれたと思います」と周囲の支えに感謝した。

28歳で本当の意味での“プロ野球選手”となった渡邉雄。この支配下昇格は後進たちの新たな道標となるかもしれない。26歳での育成指名、28歳での支配下登録。諦めず、ひたむきに努力を続ければ、夢が叶うかもしれない――。そんな姿を渡邉雄は示した。

「自分は26歳でドラフトで指名していただいて、29歳の年で支配下登録をしていただける。今までなかなかそんなことはなかったと思います。野球人口が減る中で1人でも多くの選手が、そういう可能性もあるんだと、大好きな野球を長く本気で続けてもらうキッカケになれば嬉しいなと思います」

ようやく歩み出した支配下選手としての第一歩。遅咲きの“オールドルーキー”が1軍の舞台で結果を残す。その姿を見て、またプロ野球の世界を志す若者や子供たちが出てきてもらいたい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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