生涯打率は打数が基準、投手の失策は自責点にならない? 今更聞けない野球用語

「打席、打数」と「失点、自責点」の違いとは?

NPBの生涯打率は「打席数」ではなく「打数」が基準

野球にはよく似ているが、意味が違う用語がいくつかある。その中から「打席、打数」と「失点、自責点」について紹介しよう。

○「打席」と「打数」

野球記録における「打席(Plate appearance 略称PA)は、打者が安打を打ったり、四死球で出塁したり、アウトになったときにつく記録だ。よく似た記録に「打数(At Bat略称AB)」があるが、打数と打席は異なるものだ。

打席には安打、凡打、三振、四死球、犠打、犠飛、(打撃・走塁)妨害出塁がすべて含まれるが、打数は安打と三振、凡打だけだ。凡打には失策による出塁も含まれる。なお打者が打席に立ってから、代打を送られた場合には、代打の打者に「打席」がつき、交代した選手にはつかない。交代した選手は「試合数」だけが記録される。

打数は「打率」や「出塁率」を計算するときに必要になる。安打が出なくても、四死球や犠打、犠飛、妨害出塁は打数にカウントされないので、打率は下がらない。また四死球は出塁とカウントされるので、出塁率は上がる。

打率の算定基準は当初は「規定打数」だったが、同じ打席数で四死球が多い選手が規定打数に達しないケースが出たため、のちに「規定打席」に改められている。NPBとMLBでは、規定打席は「チームの試合数×3.1」が算出基準となっている。しかしマイナーリーグでは「試合数×2.7」が基準となっている。

ただし、NPBの生涯打率は「打席数」ではなく「打数」が基準となっている。現在は4000打数以上の選手のランキングが載っていて青木宣親が通算打率.325で1位だ。イチローのNPB通算打率は.353だ。しかし4098打席に立っているが打数が3619のため、ランキングには載っていない。

今季は阪神の藤浪が8月5日の巨人戦の6回に3失点も自らのエラーもあり自責点にならず

○「失点」と「自責点」

投手の「失点(Run 略称R)」とは、投手が投げている間に相手チームに入った点だ。これに対し「自責点(Earned run 略称ER)」は、投手の責任で失った点だ。自責点は「防御率(Earned run Average)ERA」の算出の基準になっている。

失点は、投手が投げている間に、相手チームに入ったすべての点が含まれるが、自責点には野手の失策、捕逸、打撃妨害、走塁妨害によって入った点は含まれない。ただ失策が絡んでも、その失策がなかったとしても得点していたと認められるケースでは公式記録員の判断で自責点が付くことがある。

2死後に失策による出塁があり、それが失点に結び付いた場合は、以後の失点はすべて自責点にならない。大量失点しても自責点0というケースがしばしばみられる。「失策がなければ3アウトチェンジで、以後の失点はなかった」と解釈されるからだ。

投手が走者を塁上に残したまま降板し、替わって登板した投手が安打を打たれて失点した場合は、降板した投手に自責点が付く。つまり、走者を残して降板した投手の自責点は、降板した時点では確定しない。

自責点に関しては「投手の失策がもとで点が入った場合は、自責点とすべきではないか」という議論がある。「記録の神様」故宇佐美徹也氏もそう主張していた。今季でいえば、8月5日の阪神-巨人戦の6回、藤浪晋太郎は3失点したが自身の失策が絡んだために自責点が付かなかった。投手も野手だから自責点はつけなくていいという意見もあり、この議論にはまだ決着がついていない。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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