年金制度が確定給付から確定拠出年金に変更!定年まであと10年弱でどう運用する?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、51歳、会社員の女性。会社の年金制度が確定給付から確定拠出年金に変更になり、どう運用すればよいのかお悩みとのこと。FPの坂本綾子氏がお答えします。

会社員です。勤め先の年金制度がかわり、確定給付→確定拠出年金に変わります。勤続30年定年まで、あと10年切る段階でまとまった大金について、年金制度移換金としてその運用方を自分で決めなければなりません。このコロナ渦短期的に、また定年見据えた中で、どうすべきでしょうか?株式市場も実態経済とリンクしていないような回復ぶりに、一旦定期預金的なものに全額振り向け、徐々に債権株式にスイッチして、半額位を運用に回すことをイメージしております。

【相談者プロフィール】

女性、51歳、会社員

同居家族について:両親、子ども2人(20歳、22歳)

住居の形態:親の家で同居

毎月の世帯の手取り金額:50万円

ボーナスの有無:なし

毎月の世帯の支出の目安:40万円

【毎月の支出の内訳】

住居費:15万円

食費:10万円

水道光熱費:なし

教育費:10万円

保険料:2万円

通信費:3万円


坂本: 老後の生活を考えたとき、会社員にとって退職金や企業年金の存在は大きいですね。企業年金を、確定給付タイプから、確定拠出年金に変更する会社が増えています。確定給付タイプは、受取る年金額があらかじめ決まっていますから老後の生活設計を立てやすいです。一方、確定拠出年金は自分の運用次第で受取額が違ってきます。どんな運用をしたらいいのか悩んでしまいますよね。ご相談者もそのケースです。しかも51歳で、定年退職まで10年を切っています。そんな場合の、確定拠出年金の運用方法について考えてみましょう。

確定拠出年金の仕組みをおさらい

まず、確定拠出年金の仕組みのおさらいです。通常、掛金は会社が負担、社員はその掛金でどの金融商品を買い付けるかの運用指図を行います。利用できる金融商品は、会社が契約している運営管理機関のランナップから選びます。

ラインナップは二つのグループに分かれています。リスクはないけれど金利は残念ながら低い定期預金や保険のグループ、価格変動のリスクがある代わりに大きく増える可能性もある投資信託のグループです。そして、確定拠出年金の大きな特徴のひとつが、複数の金融商品を組み合わせて使うことができ、その組み合わせを割合で決められることです。

例えば、定期預金50%、A投資信託30%、B投資信託20%で合計100%の組み合わせに設定すれば、毎月の掛金からこの割合で購入できる仕組みです。

移換金と今後の掛金、2種類を運用する必要がある

ご相談者の場合、2種類の運用方法を考える必要があります。元の確定給付年金からの移換金の運用と、これから始まる毎月の掛金の運用です。

元の確定給付年金は、勤続年数が長い人ほど、年金原資が貯まっています。ご相談者の勤務先ではこれも確定拠出年金の口座に移すことになっていますが、一度に移す会社と、何度かに分け数年かけて移していく会社があります。また、毎月の掛金とは別の運用割合を指定できる場合と、毎月の運用割合が自動的に適用になる場合があります。ご相談者の勤務先はどうなっているかを確認してください。

いずれの場合も、移換金が振込まれる時期は会社からお知らせがあるはずです。ご相談者は勤続30年、移換金はかなりの額になりそうですから、ご自身のお考え通り、まず定期預金で受け入れて、その後の経済動向などを見て、スイッチングを使って一部を投資信託に切り換えることを検討したほうがいいでしょう。運営管理機関のシステムにもよりますが、金融商品の選択は拠出日(振込日)の数日前にマイページやコールセンターで指示を出せば適用されます。

毎月の掛金をどう運用するべき?

毎月の掛金をどう運用するかは、60歳というゴールが決まっていることを考えると、投資信託の場合はリスクが小さめのもの、例えば資産分散型で株式の比率が低いものが候補になるでしょう。ご自身で株式タイプの投資信託と、債券タイプの投資信託を組み合わせる方法もあります。運営管理機関によってはターゲットイヤー型の投資信託を取り扱っているところがあります。ターゲットイヤー型の投資信託は、例えば2030年など決めた年度に向かって価格変動の大きな資産(株式)を徐々に減らしていく運用をします。利用できるなら、60歳時点でリスク資産が少なくなるターゲットイヤー型の投資信託を選択する方法もあります。

新型コロナがあとどれくらいで収束するのか、なかなか見通せませんが、過去を振り返ってみても、人間は知恵を使って多くの困難を乗り越えてきたわけですから、いずれは経済も回復するでしょう。仮に日本経済が思わしくなくても、投資信託を使って世界全体の経済成長にお金を投じることができます。まだあと10年弱の時間があることも、ご相談者にとってはプラスの材料です。大きなリスクはとらないまでも、一部を投資に振り向けて運用してもよいと思います。

退職後のために考えておきたい2つのこと

相談内容には含まれていなかったのですが、51歳という年齢を考えると、今後のために、ぜひふたつのことについて考えてください。

ひとつ目は、60歳以降の働き方です。勤務先に継続雇用制度があり、いったん定年退職した後も継続雇用で65歳まで働く予定で厚生年金保険に加入するなら、今回導入された企業型の確定拠出年金が60歳で終わった後は、個人型の確定拠出年金、通称iDeCoに65歳まで加入することができます(2020年の「年金制度改正法」により成立、施行は2022年5月から)。掛金は企業型とは異なり自分持ちになりますが、掛金を所得控除できるので所得税と住民税を節税しながら老後資金を増やすことができます。

ただし、現在の企業型からiDeCoに変更の際には運営管理機関も変更する必要があるため、60歳時点でいったん売却して、その資金をiDeCoの口座に移すことになります。もし、値下がりなどにより、売却を待ちたい場合は、70歳までは運用指図者として口座を維持することはできますが、手数料がかかります。iDeCoにスムーズに資金を移すためには、企業型の運用のゴールは60歳に設定した方がいいでしょう。
退職後、仕事をしない場合は、60歳時点で公的年金の加入期間が40年を満たしているなら、iDeCoに加入することはできません。企業型の運用のゴールは60歳です。60歳時点での価格変動がなるべく小さく、かつ利回りが高くなるような運用を心がけることになります。

老後に住まいについても一考を

ふたつ目は老後の住まいの確保です。

現在、両親と同居なさっています。一人っ子か、兄弟姉妹がいても了承済みで、今後も住み続けることができるなら心配はいりませんが、そうでなければ、老後の住まいをどうするか考えておいた方がいいでしょう。お子様二人もそろそろ自立される年齢ですね。

50代前半は、老後を見据えて様々なことを判断し実行していく時期です。より良い選択ができることを願っています。

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