新型コロナで加速、アマゾンやフェイスブックも注目する「中国ショッピング革命2020」の実態とは

新型コロナウイルスを契機として、中国で今、大きな変化が起こっています。「ネットの新たな成長分野の開拓で内需拡大を促し、中国経済をいち早く回復させる」。これは今年5月に開催された全人代の「政府活動報告」で、李克強首相が掲げた今年の重点方針の一つです。

インターネット上で音声や動画をリアルタイムで配信する「ライブストリーミング」サービスの利活用は、中国政府の内需拡大策の一環として重要な役割を期待されています。


5.6億人がライブストリーミングを利用

中国政府系の統計報告によると、2020年3月末時点で「ライブストリーミング」サービスの利用者数は5.6億人に達し、19年6月末時点から1.3億人増加しました。インターネットネット利用者数に占める割合も62%まで上昇しています。

今後も政策的後押しなどを背景に、中国では「ライブストリーミング」サービスは急速に発展するとみています。

中国EC業界で一番の話題「ライブコマース」とは

「ライブストリーミング」サービスのなかで、最近中国で最も急成長を遂げている分野は、インターネット上で生放送の動画を配信し、動画内で商品やサービスなどを紹介・販売する「ライブコマース」です。現在、中国EC業界で一番の話題となっています。

欧米の調査会社によると、3年前は話題にも上がらなかった「ライブコマース」が、19年は前年比3倍以上の急成長を遂げ、市場規模も4,200億元(約6兆4,000億円)を突破。中国のオンライン小売市場に占める割合は4%、小売市場全体でも1%を占めるまで成長したと指摘しています(「Amid Stable Growth,Covid-19 Changed Shopper Behavior」Bain & Company,Kantar Worldpanel,p12)。

また、今年6月に実施された「618ネット商戦」で、中国ネット通販各社は「ライブコマース」を積極的に利活用した結果、中国ライブコマースの今年の市場規模は9,610億元(約14兆4,150億円)と、前年比で倍増する見通しです。今後、中国のネット通販業界で「ライブコマース」は一段と重要な役割を担うとみています。

アマゾン、フェイスブックも参戦

「ライブコマース」の将来性を見込んでいるのは中国企業だけでありません。海外でも通販大手の米アマゾンは、売り手が顧客に商品を直接アピールできる「Amazon Live」を19年からスタートしています。

また、世界最大のSNSサービスを手掛ける米フェイスブックも、電子商取引プラットフォームを手掛けるカナダのショッピファイと提携して、「ライブコマース」機能を強化した「Facebook shops」、「Instagram Shops」などのサービスをスタートさせています。米国でもコンテンツマーケティング強化の流れは本格化しています。

日米でも展開、注目の中国ライブ配信関連企業とは

「声網(Agora)」は13年創業の中国系企業です。企業や開発者向けに、ソフトウェア開発キット(SDK)として自社サービスのアプリやWebサイトにライブ配信サービスなどを簡単に実装できるツール群を提供しています。

同社のコア技術である「リアルタイムロック(RTC)」技術は、SNSライブ配信、教育、ゲーム、医療、金融など10余りの業種に提供されています。中国ではSNSクロスメディア企業の8割以上、オンライン教育の7割以上が、同社の提供するリアルタイム音声・動画ソリューションを採用しています。

同社は今年6月に米ナスダック市場に上場。上場初日に株価は売り出し価格の20ドルから50.5ドルに急騰しました。ライブ配信が急速に伸びている中国だけでなく米国でも、同社サービスは企業がライブチャット機能を実装するためのツールとして活用されています。

また、日本でも、遠隔地の相手と映像でつながるシステムを提供している「ブイキューブ」が総代理店として販売・サポートを展開しています。今後の成長が期待できる分野で、グローバルに事業を展開している同社の行方は注目に値するとみています。

<文:市場情報部シニアマネージャー 佐藤一樹>

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