巨人菅野、開幕10連勝が持ち越しに 沢村賞右腕が見た「たった1球の計算外」

巨人・菅野智之【写真提供:読売巨人軍】

元ヤクルトの川崎憲次郎氏が解説「勝ち星が付かなかった理由は…」

■巨人 3x-2 DeNA(1日・東京ドーム)

巨人は1日、本拠地でのDeNA戦に3-2で勝利した。同点で迎えた9回、無死満塁の絶好機で代打・吉川尚輝が一二塁間を破るサヨナラヒット。開幕10連勝がかかっていた菅野智之投手に勝敗は付かなかったが、チームは3連勝で2位との差を6.5ゲームとした。

菅野はこの日、4回までDeNA打線をわずか1安打に抑える好投を披露。5回こそ無死満塁のピンチを迎えたが、これを1失点で凌ぐと、7回まで2-1と1点リードを守った。だが、8回に2死から2四球を与えて降板。マウンドを継いだ中川皓太が、DeNAの4番・佐野恵太に右前へ同点打を許し、勝利は消えた。

1938年に開幕11連勝したスタルヒン以来、球団史上2人目、82年ぶりの快挙達成はお預けとなった菅野だが、ヤクルトOBで沢村賞に輝いた川崎憲次郎氏は「勝ち星が付かなかった理由は、あの1球にありますね」と分析する。川崎氏が「あの1球」と指摘する場面とは……。

8回表、2死一塁の場面。マウンド上の菅野が打席に迎えたのは、昨季2冠王のソトだった。だが、この日の対戦は空振り三振、見逃し三振、空振り三振と菅野が圧勝していた。

「今日のソト選手は、菅野投手にまったくタイミングが合っていませんでした。外角のスライダーはボール球でも振っていたし、内角2シームはバットの根っこに当たっていた。ヒットを打てる感じはなかったですよね」

この打席、菅野の1球目は内角低めの2シーム。これがボールとなったが、2球目、3球目と続けた外角スライダーは空振りでカウント1-2と追い込んだ。4球目は外角ストレートのボール。平行カウントとなった場面で、菅野が決めに行った5球目は内角2シームだった。ストライクゾーンいっぱいに決まったかに見えたが、判定はボール。マウンド上の菅野も悔しげな表情を浮かべるしかなかった。結局、6球目の外角スライダーがボールとなって四球。134球を投げた菅野は、ここでマウンドを降りた。

悔やまれるソトへの5球目…「たった1球、計算通りにいかなかった」

川崎氏が「あの1球」と話すのは、ソトに対する5球目。カウント2-2からの内角2シームだった。

「あそこは外角スライダーか、内角2シームが考えられた場面。ただ、外角スライダーだとバットに当たってライト線に転がるヒットになったり、セカンドの頭をフワリと越えるヒットになる可能性がある。僕が菅野投手でも内角を攻めたと思います。

ただ、菅野投手にとって、この試合で唯一計画通りに投げきれなかったのが、あの1球でした。菅野投手は先の展開を読むことができるタイプ。勝負球と結果を決めてから、流れを逆算して投球を組み立てていると思います。この日は決して絶好調ではないながらも、そこまでは上手くいっていた。たった1球、計算通りにいかなかったのが、あの球です。もう少し、ほんの少しだけストライクゾーン寄りだったら、ソト選手は空振りしていたでしょうし、判定もストライクだったでしょう」

5球目でアウトを取れると計算していた菅野にとって、四球を与えることになった6球目は「予定外の1球ですよ」と川崎氏。さすがの菅野も対応しきれずに終わってしまった。

もし計算通りに5球目の内角球でアウトを奪っていれば、2-1とリードしたまま、勝利投手の権利を持ってマウンドを降りているはずだった。たった1球が、その日の結果を大きく左右する。その危うさにこそ、野球の醍醐味があるのかもしれない。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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