東京五輪で初めて実施されるバスケットボール3人制で、2014年に日本で創設されたプロリーグ「3×3.EXE PREMIER」を先導するのが中村考昭(なかむら・たかあき)コミッショナーだ。7チームで発足したリーグは台湾にタイ、韓国、インドネシア、ニュージーランドを含めた5カ国・1地域の102チームにまで拡大し、世界的に注目を集める。これまでにないプロスポーツの形を実現したリーグの、狙いや展望を聞いた。(共同通信=大島優迪)
―スポーツ用品店を展開するゼビオグループの、クロススポーツマーケティング社が主催する。リーグ誕生の経緯は。
スポーツの会社なので、さまざまなスポーツの可能性についてリサーチしていた。当時、3人制にフォーカスして定期的にリーグをやろうとしている人はあまりいなかった。リスクと可能性がある中、可能性を強く重要視して世界に先駆けてスタートした。
―リスクについてどう考えたか。
最大のリスクはリーグ本部のコスト。コストが見積もれれば、リスクの最大値はおおむね予測可能だ。「コスト≦リーグ収入」が成り立つ範囲であれば、リスクがマイナス(要素)になることはない。
―事業として成功すると判断できたタイミングは。
まだ成長途上のため「成功した」とはとても言えないタイミングなので、答えるのは難しい。ただ、リーグ構造を設計したタイミングで「成功するはず」とは考えている。
―リーグが大会誘致権を販売し、選手と一括契約するのが特徴。各チームは会場確保や人件費の負担を減らし、年間500万円から運営できる。商工会議所や男子Bリーグの選手など、多様なオーナーが参入してきた。
チームのオーナーはお金持ちなど、限られた人のものだった。それを否定するわけではないが、より多くの人が当事者として楽しめる環境をつくりたい。プロスポーツの大衆化、一般化を目指している。
―102チームを抱える多国籍リーグに成長した。
計画通り。当時はまだ五輪での実施が決まっていなかったが、2020年の節目で100チームを超える体制にしたいと当初から言っていた。ビッグマウスにならなくて良かったと思っている。
―一般企業の会社員や学校教員などと兼業する選手も多い。
社会や働き方はどんどん多様化している。プロスポーツ選手も多様な働き方があるのではと考え、リーグを設計した。1億円プレーヤーを一人つくるなら、バスケをやって100万円もらえる選手を100人つくりたい。一般社会に出るけど、バスケもできて、バスケでもお金をもらえる社会をつくることで、より多くの人に関わってもらいたい。
―新型コロナウイルスの影響で5~9月のレギュラーシーズンが中止となったが、国・地域単位のカップ戦を行う方針。運営の課題は。
みんなが集まって楽しむ、お祭りみたいなものを全般的にやりづらい社会環境になっている。そこにどう向き合うか。リーグのあり方や見せ方を再設計しないといけない。開催場所はアリーナやスタジアムに限定されないので、リーグの特長を生かしながら運営の新たな形をつくりたい。
―3人制のポテンシャルをどう見ているか。
バスケットボールを知っている人は世界的にも多い。地面が固くて平らならどこでもできるので、都市化されて社会が整備されるほどプレーする場所が増える。他の競技からすればすごいアドバンテージだと思う。
―東京五輪への期待。
起爆剤としてすごく大きいので大切にしたい。ただ、選手やオーナーからすれば毎年、毎月活動していた方がいい。われわれが(3人制を)広めて日常的なものにして、より長く、多くの人に関わってもらいたい。
―リーグ発展への意気込みは。
日本発のリーグだが、今は世界最大規模となっている。世界のスポーツ界で、日本のプロリーグが最先端を最大規模で走っているというのは、なかなかない状況だと思う。このアドバンテージを維持し、より成長したい。