1日に弁当1食、ガスや風呂も使えず… 熊本豪雨、在宅避難者へ届かぬ支援

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身を寄せていた長女宅から自宅に戻った男性(手前)。壁にはカビが繁殖しているが、足が悪いため浸水した1階部分で暮らす。奥はエアコンを取り付ける支援団体「minori(みのり)」の高木聡史代表ら=8月25日、人吉市

 熊本豪雨は発生から2カ月近くたつが、生活環境が元に戻らず、深刻さを増している人たちがいる。行政による被災者の所在や避難状況の確認は全容把握には至っておらず、中でも支援や情報が届きにくい在宅避難者は孤立を深めている。

 球磨川が氾濫した人吉市の市街地。8月25日の昼下がり、上薩摩瀬町の女性(49)は自宅2階でテレビを見て過ごしていた。周りには発泡酒の空き缶やカセットこんろなどが雑然と並ぶ。パニック障害と睡眠障害で「人の横では眠れない」ため、避難所は敬遠した。水に漬かった1階は床板をはがした状態だ。

 食事は、近くの避難所で受け取る弁当が頼り。1食分を夜と翌朝に半分ずつ食べ、昼は抜く。医療機関を通じて支援に入った熊本学園大の高林秀明教授(地域福祉論)らが相談に乗り、熱中症対策でエアコンを急きょ設置した。近所付き合いがないという女性は「エアコンがないままだったら1人で死んでいた」と話した。

 九日町の女性(74)は同居の次女と孫に持病があり、避難所暮らしは難しかった。自宅2階で過ごすが、ガスや風呂が使えず状況は厳しい。「大変だけど、ここで生活するしかない。温かいみそ汁や生野菜が食べたい」とつぶやいた。

 人吉市健康福祉部によると、これまでに保健師らが避難所や被災家屋を訪ねて被災者の健康状態を調べる「1次調査」を実施。罹災[りさい]証明に必要な家屋調査なども並行してきた。しかし「在宅避難者の数は分からない」。仮設住宅への入居が始まる一方で未復旧の自宅に戻る人もおり、被災者の実態把握は急務だ。市は外部への調査委託も検討している。

 駒井田町で1人暮らしの男性(81)は近くの長女(48)宅に身を寄せたが、23日に自宅に戻った。耳が遠く、足も不自由。浸水した自宅はカビの繁殖も目立つ。それでも自宅に帰ると言って聞かなかったという。

 要介護認定は要支援1で、週2回のデイケアと週3回のホームヘルプのみ。長男(50)は自宅での生活にこだわる父を見つめ、「もっと介護サービスが利用できないか」とおもんぱかった。

 在宅避難者らに食事を届けている同市の農村レストラン「ひまわり亭」の代表、本田節さん(65)は「被災した家に戻る人は他にもいる。それぞれに事情や思いがあり、適切な支援が必要だ」と指摘する。高林教授は「在宅避難者の多くは劣悪な環境で、放っておけば状況は悪くなる。関連死の心配もある」と懸念。「行政は在宅避難者を支援の対象に明確に位置付け、制度設計を急ぐべきだ」と訴えている。(福井一基、小多崇)