新幹線長崎ルート アセス同意 月末までに 国交省、期限“再設定” 佐賀県議会特別委

 九州新幹線長崎ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)の整備方式を巡り、国土交通省の寺田吉道鉄道局次長は2日、同省提案の五つの整備方式に対応できる環境影響評価(アセスメント)について9月末ごろまでに佐賀県の同意が得られれば、2023年度着工に向けた与党の財源論議に間に合うとの認識を示した。
 参考人として招致された佐賀県議会新幹線問題対策等特別委員会で答弁した。
 環境アセスを巡っては同省がいったん設定した7月末の期限までに同県が同意しなかった。アセスは2~3年かかるため23年度着工は極めて困難になっていたが、期限を“再設定”した形だ。
 寺田氏はこの日、アセスでは今冬から猛禽(もうきん)類の営巣調査に着手する想定で、今夏から準備を始める必要があったとしつつも、「今月ぐらい」に同県の同意を得て事務作業を急げば、23年度着工を目指す北陸新幹線(敦賀-新大阪)と合わせた財源論議に乗り遅れないとの見通しを示した。
 寺田氏はまた、五つの整備方式のうちフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)について、22年間で約500億円を投入しても技術開発のめどが立たず導入を断念したことについて「責任を痛感している」と陳謝する一方で、開発の再開は「現実的な対応ではない」と明言した。
 これに対し、委員の1人は「導入するつもりがないFGTのアセスも実施するのはおかしい」と指摘。寺田氏は「今回は佐賀県知事と国交相の間で複数の整備方式について幅広く協議するとしており、無駄との批判もあるかもしれないが、やむを得ない対応と考えている」と理解を求めた。
 また複数の委員が、新鳥栖-武雄温泉間をフル規格で整備した場合、並行在来線がJR九州から経営分離されることや、国交省試算の建設費約6200億円と地元負担約660億円が資材・人件費の高騰などで上振れすることへの懸念を相次いで示した。寺田氏は「在来線は地域の重要な足なので、JR九州は地域とよく意見交換をしてほしい」「佐賀県との整備方式の議論が収れんしていく中で、建設費の地元負担についてもいろんな可能性を議論したい」などと答弁した。

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