修道士・小崎さんの被爆体験描く 「17歳の夏」紙芝居に 若い世代 語り継いで

「体験を語り継ぐため、若い人に上演してほしい」と話す小崎さん=諫早市高来町、聖フランシスコ園

 諫早市高来町在住のカトリック修道士、小崎登明さん(92)の被爆体験を描いた紙芝居「原爆を見た17歳の夏」が完成した。小崎さんは「修学旅行生に直接、体験を語ることが難しくなり、紙芝居を使い、代わりに伝えてくれる人が出てきてくれたら、うれしい」と期待を込める。
 制作したのは、被爆者の末永浩さん(84)と漫画家の西岡由香さん(55)=いずれも長崎市=。末永さんはこれまで故山口仙二さんら4人の紙芝居を手掛けており、今回は長年、交流のある小崎さんの手記を基に企画、脚本を執筆。西岡さんが水彩絵の具などで作画した。
 小崎さんは17歳の時、長崎市の三菱長崎兵器製作所の住吉トンネル工場で被爆。母親が被爆死し「原爆孤児」に。その後、同市の聖母の騎士修道院に身を寄せ、修道士になった。
 紙芝居はA3判、17枚。被爆後、助けを求めた男の子や女学生を助けられなかった自責の念を抱き続けた思いを描いた。ポーランド出身のコルベ神父の生き方に触れ、人間の弱さや許す心に向き合うようになった軌跡を追っている。
 末永さんは2007年から、「紙しばい会」で紙芝居を上演。「本人に及ばないかもしれないが、第三者が心を込めて話せば、より具体的に個人の体験が伝わる」とし、今回の作品の絵本出版を模索する。
 西岡さんは約10年前、小崎さんの被爆体験を聞き「『原爆投下で突然、肉親や家を失った時の人間の驚きやあがきを考えてほしい』という言葉が心に残っている。そんな気持ちを伝えられたらと思って描いた」と話した。

© 株式会社長崎新聞社