社説(9/4):ロシアの憲法改正/強まる専制 厳しく注視を

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 ロシアのプーチン大統領(67)の長期続投に道を開く憲法改正が成立した。

 7月初め、改憲すべきかどうかを国民に問う全国投票が行われ、賛成が8割近くに上り、「信任」を受ける格好となった。

 ウクライナのクリミア半島併合や軍備増強に見られるように、強硬で権威主義的な国家運営をさらに進めるのではないかと懸念される。

 ロシア国内では、プーチン後の展望を描けないというジレンマも抱える。「北方領土問題」を抱える日本をはじめ、国際社会は慎重に出方を見極めていく必要があろう。

 改憲の提案者であるプーチン氏は、実質20年にわたってトップの座にある。

 従来の憲法では、連続3期は禁じられており、2024年の任期切れ後は出馬できなかった。

 改正憲法では、大統領任期を通算2期までに制限する一方で、過去の任期はリセットされる。このため、プーチン氏は24年から2期12年務めることができるようになった。

 最長で36年まで続けた後は、「終身上院議員」などとして国政に関わることもできるという。

 今回の改憲案をひもとくと、大統領続投のほか、「最低賃金の保障」や「医療の充実」「年金の改定条件」など聞こえのいい条項を数多く盛り込んだ。

 その数は206項目に及ぶ。これらを一括して承認を問う方式を取っている。プーチン氏の信任と言えるかは、ロシア国内でも首をかしげる向きがある。

 14年のクリミア半島併合のころ、愛国心をかき立てて8割台の支持率を記録した。

 その後、欧米からの経済制裁、主要輸出品である原油の価格低下、さらに新型コロナウイルスの流行も加わって支持率は落ち込んでいる。

 政治姿勢を見直し、国民の声を聞いて歩み寄るソフト路線を取らないと、低迷から抜け出せないのではないか。

 改憲では、「領土の割譲」を禁止する条文も盛り込まれた。67条で「ロシア領土の割譲に向けた行為は認めない」とされた。

 他方で、「近隣国との国境画定作業は除く」とされている。好意的に見れば、日本との北方領土交渉は例外とも読める。

 しかし、ロシア国内の保守派勢力やサハリン州の首長などから、改憲を盾にして一層、強い態度を取るよう求められる可能性もある。交渉に影響するのは避けられないとみられる。

 ロシア政府は「第2次世界大戦の結果、自国領になった」との立場だ。その半面、両首脳の間では、早期に平和条約を結ぶという合意がある。

 改憲の前に何とかしたかったとの思いは残るが、日本の新しい政権は相手の真意を確かめた上で、粘り強く国益追求を貫くよう求めたい。