積水化学工業、環境中期計画を前進 新たにRE100に加盟

積水化学工業株式会社は、2050年に「生物多様性が保全された地球」を実現することを目指す環境長期ビジョン「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2050」を策定している。また、この環境長期ビジョンに基づく2020年度~2022年度における新環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」を策定し、取り組みを開始した。

さらに同社は8月、新たにRE100に加盟。TCFDに基づいた情報開示を更新するなど、積極的な気候変動対策を継続、加速する。

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環境長期ビジョン「SEKISUI 環境サステナブルビジョン2050」

環境に関するさまざまな問題の顕在化、科学的根拠に基づいた環境課題予測の精度向上などを受け、2050年を見据えた環境課題への取り組みの方向性を環境長期ビジョンとして再設定した。

図 「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」

2050年には「生物多様性が保全された地球」を実現することを目指し、製品や事業といった企業活動を通してさまざまな自然環境および社会環境課題の解決を進める。企業活動では地球上の自然資本、社会資本を利用して活動していることを認識し、地球上の課題解決をすることで、自然資本、社会資本のリターンに貢献。そのための活動として、(1)サステナビリティ貢献製品の市場拡大と創出、(2)環境負荷の低減、(3)環境の保全の3つを重視する。

前環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerate」(2017~2019年度)振り返り

前環境中期計画においては、(1)統合指標「SEKISUI 環境サステナブルインデックス」による進捗管理、(2)環境貢献製品の売上拡大、(3)温室効果ガス排出量削減を3つのポイントとして取り組みを実施した。

注1)リターン率の計算は、東京都市大学伊坪教授らにより開発されたLIME2の考え方に基づいたLCA計算システム「MiLCA」を使用 注2)COD(Chemical Oxygen Demand):化学的酸素要求量。水中の含有物質を酸化するために必要とされる酸素量(酸素消費量)であり、水質の指標の1つ。CODが高いと含有される有機物、無機物の量が多い水であり、水質が悪いと判断される。

取り組みの結果、製品による環境課題解決への貢献が拡大し、統合指標における自然資本へのリタ―ン率は104.5%と目標を達成した。環境貢献製品は、売上高比率に関しては目標に及ばなかったが、着実に環境課題解決型製品の創出と市場拡大を図る。

温室効果ガス排出量の削減に関しては、環境貢献投資枠を活用し、老朽化設備を更新して、省エネルギーとなる設備の導入を積極的に行ったことで、目標通り、温室効果ガス排出を低減した(下図)。

図 事業活動における温室効果ガス排出量の推移

自然環境の保全に関しては、国内の生産事業所において、貴重種の保護や、多様な生物が育つための環境整備を行うなど、緑地の質向上のための取り組みを推進その結果、評価ツールである「土地利用通信簿」の点数は向上した。今後は、欧州でもこの取り組みを展開する。

新環境中期計画「SEKISUI環境サステナブルプランAccelerateⅡ」(2020~2022年度)

環境長期ビジョンにおいて、今後注力していく環境課題を気候変動、資源枯渇、水リスクと考え、おのおのの方向性、長期目標設定を行った。2050年には、気候変動課題については脱炭素社会の実現を目指し温室効果ガス排出をゼロに、資源枯渇に関してはサーキュラーエコノミーの実現を目指し資源循環のための再資源化を推進し、水リスクは最小化を目指してリスクの把握と低減に取り組む。そして目指す2050年の姿からバックキャストした中期のマイルストーンを設定し、新環境中期計画を策定。新環境中期計画では、以下のように取り組むべき重要実施項目と目標値を設定した。

統合指標

統合指標「SEKISUI 環境サステナブルインデックス」による進捗把握は、自然資本に加えて社会資本に対してもその負荷を削減し、貢献が拡大できるようにリタ―ンに努める。2030年には業容倍増を目指しますが、リターン率100%以上の維持を目指す。

サステナビリティ貢献製品

2006年度より推進してきた自然環境および社会環境課題解決の貢献度を高め、普及促進を図るための製品評価制度である「環境貢献製品」制度を、2020年度からは「サステナビリティ貢献製品」制度へと進化させ、課題解決の持続可能性を向上させていく。2006年度より推進してきた自然環境および社会環境課題解決の貢献度を高め、普及促進を図るための製品評価制度である「環境貢献製品」制度を、2020年度からは「サステナビリティ貢献製品」制度へと進化させ、課題解決の持続可能性を向上する。

また同社は従来の課題解決への貢献に高い効果を有する製品を社内基準により認定するプロセスに加え、あらたに企業および製品のサステナビリティを評価する視点を設ける。具体的には、収益性、ガバナンス、サプライチェーン、顧客満足度などの観点から確認・評価を行います。さらに、環境課題解決への高い貢献度と企業および製品の高いサステナビリティを有する製品を「プレミアムサステナビリティ貢献製品」として選定し、戦略的に伸長を後押しする施策を展開する。

図 サステナビリティ貢献製品制度のイメージ

気候変動課題に対する取り組み

脱炭素社会の実現を目指し、2050年に企業活動における温室効果ガス排出量をゼロにする長期目標を設定し、バックキャストした2030年には購入電力を100%再生可能エネルギーに転換することを目指す。

図 温室効果ガス削減のロードマップ注)BAU(Business As Usual):通常の経済活動に伴い、増加する排出量

温室効果ガス削減のロードマップ(上図)において、前環境中期計画は、「エネルギー消費革新」の段階だった。120億円の環境貢献投資枠を活用し、ものづくり、老朽更新等を主眼においた省エネルギー設備への投資を行い、温室効果ガス排出量削減を大きく推進。新環境中期計画では、「エネルギー調達革新」の段階に移行する。2019年4月より始動しているサービス「スマートハイムでんき」の活用や、ESG投資枠400億円の活用などにより、再生可能エネルギーの調達を積極的に推進。

新たにRE100加盟、TCFDに基づく開示情報を更新

積水化学工業は、2018年6月、化学業界として世界で初めてSBT認証※1を取得し、長期目線での温室効果ガス排出量削減の目標を設定し、サプライチェーンと連携して取り組む意思表示を行った。

2020年8月には、再生可能エネルギーの積極的活用を自社のみならず、社会で推進していくために、新たなイニシアチブとしてRE100にも加盟。

気候変動課題に対する戦略においては、気候変動による自社に対するリスクを把握し、そのリスク低減やリスクを機会に転換できるような取り組みを策定。これらの経緯をTCFD※2の提言に基づく情報開示として、2019年1月に賛同して以来、2019年7月より定期的に見直しを行い公開している(2020年8月に見直し、公開)。

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※1) SBT(Science Based Targets):パリ協定の採択を契機として国連グローバルコンパクトをはじめとする共同イニシアチブが提唱。SBTイニシアチブにより、企業が定めた温室効果ガス削減目標が、長期的な気候変動対策に貢献する科学的に整合した目標(SBT)であることが認定される。
※2) TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):2015年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)により設立された気候変動関連財務情報開示タスクフォース。

積水化学工業はこのほか、資源枯渇課題、水資源の課題の取り組みも推進する。

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