今から備えを! 台風10号の脅威 観測史上最強クラス 暴風、高波・高潮に警戒を

2020年9月4日9時発表の台風10号予想進路図(出典:日本気象協会)

 気象庁は2日、「台風10号は、今後特別警報級の勢力まで発達し、6日から7日にかけて奄美地方から西日本にかけて接近または上陸するおそれがある」と注意警戒を呼び掛けました。みなさん、台風への備えはもう出来ましたか?(気象予報士=安野加寿子)

 ▽こんなに早く気象庁が呼び掛ける理由

 特に沖縄・奄美・九州・中国・四国・近畿にお住まいで、準備がまだの方は至急、防災備蓄品や避難手順等の確認をしましょう。台風への備え方については後述しますので、そちらを参考にしてください。

 気象庁が、予想される気象現象より4日以上も早く、このような注意警戒を呼びかけるのには、やはりそれなりの訳があります。

 台風10号は、「観測史上最強クラスの勢力で沖縄・奄美や九州へ接近し、上陸の可能性がある」からです。そして、特に「暴風」と「高波・高潮」に警戒が必要です。

 なぜ今回の台風が観測史上最強クラスまで発達してしまうかというと、海面水温が原因のひとつと考えられます。

 今夏の猛暑により、8月の月平均海面水温(速報値)が、関東南東方で29・3度(平年差+1・6度)、四国・東海沖では29・8度(平年差+1・7度)、沖縄の東では30・7度(平年差+2・1度)となっており、海も温水プールのようなアツアツの状態になっていました。そのため、台風10号は温かい海上で勢力を増強しながら、接近してくるわけです。

台風10号が発生した9月1日の海面水温(出典:気象庁ホームページ)

 台風10号は、発生当時の予想進路では九州直撃コースでしたが、接近までの時間が近づくとともに、進路は少しずつ西にシフトしつつあります。ただ、台風は中心に近いほど被害が大きいとは限りません。

 むしろ、上陸することで台風の勢力は弱まるため、上陸しないまま海上を進むと、今回の場合は特に九州での被害が大きくなる可能性があります。

 ▽最も強くなる6日と7日、広い範囲で暴風

 台風10号は、4日の夜には猛烈な台風(中心付近の最大風速が秒速55メートル)となり、最も勢力を増す6日には、中心気圧が915ヘクトパスカルまで下がる見込みです。これは日本に接近または上陸した、歴代最強レベルの台風と同じくらいと言えます。

 また、九州へ接近するまでのコースと勢力は、1991年台風19号(通称りんご台風)と似ています。りんご台風は平成1番の風台風と言われ、暴風による被害が顕著だった台風です。東北のりんご被害で知られていますが、九州では倒木や塩害などの被害も目立ちました。

 さらに、もう少し最近の暴風事例では、2018年台風21号(四国・近畿地方に上陸)、19年台風15号(千葉県に上陸)で、陸上で最大瞬間風速50メートル以上が観測されました。これらの台風では、送電鉄塔の倒壊による停電の長期化、倒木による道路寸断や鉄道運休の長期化、被災地への救援物資の配送遅れなど、その後の生活に大きな影響をもたらしました。

 今回の台風では、九州山地の東側などで大雨も心配されますが、それ以上に、広い範囲で暴風が予想されます。また、有明海や錦江湾(鹿児島湾)などでの高潮にも警戒が必要です。

 台風が接近すると、急に風が強くなり、あっという間に避難が困難になることもあります。最新の気象情報をこまめに確認し、今のうちに対策をしましょう。

 ※台風の最新情報はこちらでご確認ください。

 日本気象協会https://tenki.jp

 「台風情報」(https://tenki.jp/bousai/typhoon/

国交省との合同記者会見で、台風10号の今後の見通しについて説明する気象庁の担当者(左)=3日午後、気象庁

 ▽地域別、備えのポイントは?

 ■沖縄・奄美地方から九州地方

 4日中、遅くとも5日までには、台風への備えを完了させましょう。

 九州山地の東側の地域は特に雨量が多くなる可能性があるため、台風から離れていても油断しないでください。

 暴風への備えとして、家の外に出している物干し竿や植木鉢、自転車などは家の中にしまいましょう。家そのものの老朽化が心配な場合は、台風接近前から避難所等に避難することも考えてください。風が強くなってきたら、昼間でも雨戸を閉めましょう。雨戸が無い場合はカーテンを閉めておくと窓ガラスが割れたときの被害を最小限に抑えることができます。

 停電する可能性があるため、お風呂に水を溜めておいたり、温めずに食べられる食料を準備したりしておくと安心です。

 大雨への備えとして、家の周りの側溝や雨どいにゴミが詰まっていないか確認したり、浸水の恐れがある地域は土のうを準備したりしましょう。 高潮への備えとして、まずは自宅の危険性を高潮ハザードマップなどで調べましょう。干満潮の時間も関係はしますが、今回の台風は中心気圧が低いため、最接近したときに急に潮位が上がる可能性があります。高潮による浸水被害の恐れがある場合は、風が強まる前に避難を開始するのがポイントです。

 ■四国・中国・近畿地方

 5日までに台風への備えを完了させましょう。

 台風から離れていても、台風の周辺の雨雲がかかり、広く風も強まる見込みです。特に、四国山地の南側や中国山地の南側、紀伊山地の南東斜面で雨が強まる可能性があります。四国や中国地方では暴風域に入る可能性があるため、暴風への備えをしておきましょう。

 物干し竿や植木鉢、自転車などはあらかじめ家の中に入れてください。風が強くなってきたら、昼間でも雨戸を閉めましょう。雨戸が無い場合はカーテンを閉めておくと安心です。

 広い範囲で停電する可能性もありますので、お風呂に水を汲みおいたり、食料を準備したりしておきましょう。テレビやラジオ、インターネットなどで最新の気象情報をこまめに確認するようにしてください。台風が大陸方向に抜けた後は、台風に向かって吹く風により、日本海側を中心に厳しい残暑になりそうです。

 ■東日本

 台風に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、東日本でも、天気が崩れる所がある見込みです。最新の気象情報をこまめに確認するようにしましょう。台風が日本から離れたあとも、吹き返しの風で、日本海側を中心に厳しい残暑になりそうです。

防災備蓄品の再確認を!

 ▽この秋の台風の傾向

 台風10号が去ったあとも、まだまた台風シーズンは続きます。水は簡単には冷めないため、日本付近の海面水温が高い状態はしばらく続く見込みです。そのため、今後発生する台風も、勢力が強い状態で日本に接近してくる可能性があります。

 太平洋高気圧が弱まってくると、台風のコースが北東に傾いていきますので、東日本でも台風に備えて、防災備蓄品の確認や避難経路の確認など、防災意識を高めておいてください。

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