光免疫療法、世界初の実用化へ 厚労省部会了承

厚生労働省は4日、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会の定例会を開催し、楽天メディカルが研究開発する「光免疫療法」の核となる薬剤について、薬事申請することを了承した。正式な手続きを経て、年内には世界で初めて日本で実用化される見通しとなった。

年内にも実用化 頭頸部がんの再発例などに適用

了承された薬剤は、「セツキシマブサロタロカンナトリウム(商品名:アキャルックス)」。2011年に米国立がん研究所(NCI)の小林久隆主任研究員が開発した新しいがん治療法の鍵となる物質で、がん細胞に特異的に結合し、可視光と赤外線の間の波長(700nm)の近赤外線に反応する。赤外線を照射されれば化学変化してがん細胞を破壊する。この機序が「光免疫療法」の命名の由来となっている。

この物質はがん細胞以外に結合することがないうえ、近赤外線以外には反応せず、しかももともとは安全な色素由来の物質で、この物質による副作用の危険はほとんどない。また、近赤外線はリモコンなどで活用されている安全な光であることから、その面でも副作用発現の可能性が極めて少ない、革新的な治療法であると大きな注目を浴びた。2012年1月、当時のオバマ大統領が議会への一般教書演説で「偉大な成果」として取り上げ、世界中に知られることとなった。

また、当時親族の治療法を探していた楽天の三木谷氏が小林氏の研究を聞きつけ、個人的な出資を決めたことが、楽天グループの医療分野進出のきっかけとなったことはあまりにも有名な話だ。

国もこの療法の実用化に向け全面的に支援を行ってきた。日米での臨床試験の経過をみて2019年、早期の審査完了を支援する「先駆け審査指定制度」の対象として指定し、さらに今年5月、販売開始後に必要な調査などを行うことを条件に治験の工程を一部省略して承認する「条件付き早期承認制度」の対象にも適用していた。この療法に必要となる近赤外線を照射する医療機器についても、今月2日にすでに医療機器として承認しており、薬剤が正式に承認されれば年内にも、保険診療としての光免疫療法が実用化することになる。

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