台風10号 長崎県迫る 備え急ぐ 離島は「復旧」と「備え」同時並行

台風10号に備え、台風9号で壊れた屋根を修理する男性ら=4日午後2時42分、五島市長手町

 非常に強い台風10号が迫る中、長崎県内では9号の猛威にさらされたばかりの離島を中心に、「復旧」と「備え」を同時並行で急いでいる。五島市では避難先として規模の大きいホテルが予約で埋まり、家屋の修繕や補強をする資材、食料品などの不足が目立ち始めた。「今回ばかりは予想がつかない」。島民らは、特別警報級の猛烈な勢力に発達することが予想される脅威を前に、緊張感を高めている。

 「電話が鳴りっぱなしだが断るしかない」。4日朝、五島市中心部のホテル担当者は申し訳なさそうに語った。台風10号の最接近が予想される6、7日、頑丈な大型ホテルなどは島民らの予約で既に満室になった。
 同市栄町のホテル三国(庄司清社長)も4日までに90件ほどの予約を断り、代わりに市の避難所情報を提供した。梅木志保支配人(52)は「台風の威力に加え、コロナ禍で避難所を避けたい人もいるようだ」。客には食料や懐中電灯などの持参を求め、断水に備えてバケツを新たに購入した。壱岐市や平戸市などでも、満室のホテルが出ている。
 五島市では、台風9号で止まっていた物流が動きだし、スーパーやホームセンターには買い出しの長い列ができた。五島列島内でスーパーなどを展開する小売業「ドゥイング」によると、インスタント食品や飲料水のほか、家屋の補修などに使うビニールシートやベニヤ板、木材などが品薄。道津一政専務は「食料品など、多めに発注している。島民の不便にならないようにする」と語った。
 県内各地で、被災者らは強風で飛ばされた屋根瓦を補修したり、窓をベニヤ板で覆ったりする作業に追われている。対馬市で特産品開発などに取り組む須澤佳子さん(42)は、台風9号で割れた事務所の窓に合板を張り「前回も相当な風圧だったのに、それ以上だと持ちこたえきれるだろうか」と不安げ。自宅の窓などを補強した五島市長手町の光武督己さん(83)は「9号の時は自宅で過ごしたが、今度は避難所に行こうかと思う。無事を祈るしかない」と表情を曇らせた。


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