炎越しの丸い地平線を撮る 学生プロジェクトが資金募る(1)

プロジェクトサイトのトップ (Credit: Earth Light Project)

2020年7月24日から、学生プロジェクトの「アースライトプロジェクト」(Earth Light Project)が資金募集を行っています。

「炎越しの地球を撮影したい!国境線のない宇宙に炎を掲げる、人類史上初のプロジェクト」とうたい、クラウドファンディングサイトのCAMPFIREにて、賛同者からの出資を募っています。(宇宙と言いますが、実際には、高高度バルーンで高さ30km程度の成層圏に到達することを目指しています)

750万円を目標にしており、2020年9月2日現在で270万円余りを集めているこのプロジェクトについて、目的や託した思いと技術面とについて取材しました。3回に分けてお送りしたいと思います。

【関連リンク】
アースライトプロジェクト 公式ページ
クラウドファンディングページ

第1回は、プロジェクトの目的と託した思いについて、Earth Light Project代表の都築さんのコメントを中心にまとめていきます。

1. プロジェクトのきっかけ

プロジェクトの目的 (Credit: Earth Light Project)

この計画の資金募集が始まったのは、2020年7月24日。日付にはこだわりがありました。本来ならば2020年東京オリンピックの開会式が行われる日だったのです。

クラウドファンディング開始のオンライン記者会見(https://www.youtube.com/watch?v=lhNNrU7nVG0&feature=youtu.be)で、都築さんは「僕たちはオリンピックの意思を受け取って、炎を宇宙に掲げたい。分断の現実を乗り越えるために」と述べ、延期となった東京オリンピックへのリスペクトと分断される世界への危惧を述べています。高高度に炎を掲げる目的としては、クラウドファンディングサイトに掲載された挨拶文(https://camp-fire.jp/projects/view/300851#main)で、自国第一主義や人種差別問題の再燃、移民問題といった姿で加速していた分断が新型コロナウイルス感染症で急速に進んでいるさまを憂いています。

「高高度から見た地球は国境がない。それを背景にただ一つの炎が灯ることを統合の象徴としたいと願っているので、ぜひこのクラウドファンディングを成功させ、計画を実現させたいのだ」と、そんな思いが伝わってきました。

2. 学生主体で夢を発信

世界と繋がりたいという意思を表明している。 (Credit: Earth Light Project)

アースライトプロジェクトは、大学生・大学院生主体のプロジェクトです。都築さんは2020年東京オリンピックに協力する学生団体「おりがみ」の代表もつとめており、プロジェクトの種は「おりがみ」内部で芽生えたとのこと。

ただし、アースライトプロジェクトは「おりがみ」とは別プロジェクトとして進行しており、メンバーもこのプロジェクトから参加した人物が多いといいます。

関わっている人数は現在およそ140名で、役割分担をしつつ予備開発をしている段階です。現在、新型コロナウイルス感染症対策のため大学は閉鎖状態で、学生は夢に描いたキャンパスライフが実現できず、教員も学びの場の維持に精一杯で大変な状態にあります。

そんな中、都築さんの呼びかけに賛同した学生達が、同じ学生に向けて頑張っている様子を見せ、明るい話題を提供していこうと団結し、オンライン会議を繰り返し、時には本開発に向けた予備実験を行っているのが現状です。

3. クラウドファンディングを何に使うのか、成立したら、計画はいつごろ実行するのか

クラウドファンディングによってまかなうのは新規開発の予算と機材購入費が主で、目標金額を達成してもギリギリなのだといいます。開発で重要なのは、炎を成層圏まで持っていく燃焼器です。バルーンは実績のある既製品を使用し、燃料や空気の容器は法規制や安全性を考え既製品を使うとのこと。放球場所は沖縄の宮古島で、時期は2021年の5月頃、天候の良い日を見計らって打ち上げるそうです。

このクラウドファンディングはAll-or-Nothing方式で行われています。目標金額に満たなければ一円も得ることができず、計画は中止。そうならないよう、「多くの人に賛同し、支援をしていただければ」と都築さんは述べていました。

4. 成立した場合のスケジュール

2020年9月 技術開発開始
10月
11月 地上実験開始
12月
2021年1月
2月 機体制作開始
3月 関係機関・省庁への手続き
4月
5月 本番

技術開発については、現在の予備的な実験を行う段階から本格的な開発への移行だとのことです。
既にどのような技術を使い、どんな開発を行うかはプロジェクト内で絞り込まれているとのことです。次回はメンバーの役割分担と開発要素について、技術的な部分を書いていきます。

画像提供:Earth Light Project
文/金木利憲

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