【気になる一言】事実上のチーム代表を務めたクレア・ウイリアムズ。最後の会見で語った感謝と父への敬意

 第7戦ベルギーGPに続いて、1週間後の第8戦イタリアGPの金曜日の記者会見にも、ウイリアムズの副代表を務めるクレア・ウイリアムズが出席した。その理由は、前日の木曜日に副代表を務めるクレアと、代表を務めるフランク・ウイリアムズが、イタリアGPを最後にその役職を退任すると発表していたからだ。

 その件についてマイクを向けられたクレアは、「まず初めに、先日の発表以来の多くのご支援、誠にありがとうございます」と語った後、こう続けた。

「これはこれまで私たちをサポートしてきたパドックの方々だけでなく、多くのファンに対しての感謝です。私たちには多くの最高のファンがいて、昨日は何千人もの人々からメッセージをいただきました。それらを見て、とても勇気づけられました。本当に感謝しています」

 今回の発表は、ウイリアムズ家がF1から退くというだけでなく、現在F1界でただひとりしかいない女性の事実上のチーム代表が姿を消すという意味でも、大きな注目を集めた。なぜなら、かつてクレアはスージー・ウォルフという女性ドライバーをフリー走行で走らせるなど、女性のF1進出に積極的だったからだ。クレアの退任によって、女性がF1で活躍する日は、再び遠のいたのか。

「私がいなくなっても、才能があれば、性別に関係なく活躍できる社会を築くという哲学はこれからもチームが受け継いでくれると信じています。さらにウイリアムズだけでなく、F1自体が大きく変化しています。いまではパドックで多くの女性が活躍しています。世界は変化し、それに対応し、F1も多様化を受け入れてきました」

「ただし、私はこのスポーツは実力主義であるべきだと思っています。そのうえで、実力のある女性がこれからも活躍できることを願っています」

2014年F1イギリスGP スージー・ウォルフ(ウイリアムズ 開発ドライバー)がフリー走行に出走

 メディアからの質問がなくなり、約30分間の会見が終わろうとしたとき、司会者が「クレア、これで私たちがあなたとFIA会見でお会いする最後の時間となりました。最後にメッセージをお願いします」とマイクを向けられた。クレアはひと言ひと言、噛み締めるように語り出した。

「私たち家族は特別な時間をこのF1の世界で過ごしてきました。そのなかにはとても良い思い出もありますが、それ以上に辛い時期があったことも事実です。それでも私たちはそれらすべての瞬間を愛してきました。私が言うのもなんですが、ウイリアムズ家がF1に貢献してきたものは決して小さくはないと思っています。だから、フランクが、彼が達成したことを、私はいつまでも畏敬の念を抱いて大切にしたいと思います」

「そして、世界中の多くのファンがこれまでの40年間そうしてきたように、これからもウイリアムズを支えてくれることを願っています。そして、ファンだけでなく、これまでウイリアムズと一緒に仕事してきた人たち、パドックのすべての人たちに心から感謝します」

「今週末は私たちにとっては、とても悲しい日々となりましたが、私が下した決断は正しかったと信じていますし、私たち家族はウイリアムズというチームがこれからも新しいオーナーの元でうまくやっていくことを祈っています。もちろん、ウイリアムズだけでなく、私たちが愛したこのスポーツで戦うすべての人々を私たちウイリアムズ家は見守り続けていきます」

2020年F1第8戦イタリアGP金曜会見 (左から)トト・ウォルフ(メルセデス チーム代表)、クレア・ウイリアムズ(ウイリアムズ 副チーム代表)、シリル・アビテブール(ルノー マネージングディレクター)

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