コロナ禍で生活が厳しくなって…年金の繰上げ受給をしても大丈夫?残念な結果にならないために

コロナ禍で、生活費に困っている人が急増しました。失業者も増えています。また、夏のボーナスも大幅減になり、たぶん冬のボーナスはもっと期待できないかも。この状態が続くとかなり生活が厳しくなってきます。そのため、年金の繰上げ受給の相談も増えてきているそうです。

本当に生活ができないという状態ならば、繰上げ受給はやむを得ない事もありますが、年金の受給額が減ってしまい総額でみると損になることが多いので、くれぐれもよく考えた方がいいでしょう。

とくに、会社に勤めている人は、注意が必要です。せっかく繰上げ受給をしたのに、その年金が支給停止になる場合もあります。しっかりと繰上げ受給について知ってください。コロナ禍で、さらに残念な年金の受け取りにならないようにしてください。


繰上げ受給のデメリットとは

年金は、60歳から70歳の間に受け取ることができます。65歳より前に受け取るのが繰上げ受給で、65歳以降に受け取るのが繰下げ受給です。繰下げ受給をすると年金額は増えますが、繰上げ受給をすると減額されます。減額は、1ヵ月ごとに0.5%ずつ減ります。60歳まで減額をすると30%の減額になってしまいます。その減額は65歳になると減額分がなくなり、予定額に戻るのでは? と勘違いをしている人もいるそうです。しかし、これは間違いで、減額された金額が一生涯続くことになります。

繰上げ受給のメリットとしては、先に受け取るので途中までは得になりますが、長生きをすればするほど損になります。デメリットとしては、受取金額が減り、障害年金を受け取ることができなくなるのです。また65歳になるまでは遺族年金と併用ができません。

働いている人が繰下げ受給をすると年金が支給停止に

60歳以降、再雇用になり給料が半減という人も多いと思います。さらにコロナ禍でボーナスが出なくて、生活費に影響がでるという場合もあります。そこで年金の繰下げ受給をしたいと思ってしまうのですが、受け取れる年金の一部が支給停止になるケースがあることを知っていますか?

年金と給料(総報酬月額)の合計が28万円を超えると年金の支給が全額及び一部停止してしまいます。これを「在職老齢年金」といいます。どのくらい減額されるかというと、ざっくりですが年金月額と総報酬月額の合計から28万円を引いた金額の2分の1です(合計金額、年金月額により計算が少し変わります)。

また、「特別報酬の老齢厚生年金」を受け取る人は計算がさらに複雑になります。

少し話が、難しくなったのですが、せっかく年金の繰上げ受給をしても、在職老齢年金で、一部が支給停止になるのでは意味がないですね。ちなみに支給停止になった金額は消えてしまいます。

しかも、24%減額された年金が一生涯続くのです。もちろん65歳になったら、年金額が戻るということはありません。どう考えても損をするだけなので、やめた方がいいですね。

2022年より繰下げ受給が得になった?

「2022年4月より在職老齢年金が引き上げられるので、繰上げ受給の好機」などと書いてあるWebの記事を見ました。これは、本当に繰上げ受給をすると得になるのでしょうか?

2022年4月の繰上げ受給に関係する改定は、繰上げ受給の減額率の変更と、在職老齢年金の減額基準の引き上げです。繰上げ受給の減額率が月あたり0.5%から0.4%になったので、減額される金額が少なくなりました。それに在職老齢年金は、給料と年金が47万円を超えないと減額されません。

これで、繰上げ受給をしても、年金の支給停止ということは、それほど心配しなくてもよくなりました。

繰下げ受給を進めない理由とは

60歳まで繰り上げたときの損益分岐点は約81歳です。81歳だったら、男性の平均寿命を同じくらいだから、損をしないのではと思ってしまいます。だからWebの記事の中には、「繰上げ受給の好機」なんて書いている人がいるのです。

では、本当に繰下げ受給をするのが得なのかというとそうではありません。下記のことについても総合的に考えてください。

・給与が多い人、特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は、在職老齢年金の基準額に注意してください、せっかくの年金が支給停止になります。

・障害年金が受け取れません。この間はたとえ数年であっても、何が起こるかわかりません。そのための保険の機能が備わっているのです。

・平均寿命を超えているからOKというわけではありません。平均余命で考えると、約84歳です(令和元年簡易生命表)。また男性の4人に1人は90歳まで生きます。また、85歳になる20年後には、もっと平均寿命が延びているかも知れません。年金とは長生きしたときの保険なのです。

・一度、繰上げ受給をするとキャンセルはできません。年金を増やすことが不可能になります。

などという理由から、どうしても、生活ができないという場合以外は繰上げ受給はお勧めはしません。年金は長生きをしたときの保険ですから、むしろ、繰下げ受給を検討をするようにした方がいいのです。

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