映画のようなストーリー、ザ・スミスにまつわる思い出ばなし 1986年 6月16日 ザ・スミスのアルバム「ザ・クイーン・イズ・デッド」がリリースされた日(ゼア・イズ・ザ・ライト 収録)

私、モリッシーが大好きすぎて…

待望の『モリッシー自伝』の日本語版が出ましたね。「待ちに待った!」という方も多いのではないでしょうか? 内容だけでなく、印刷や、装丁、フォントまで、すべてがしっとりと美しい珠玉の1冊ですので、未読の方は是非お手にとって見ていただきたいです。

私も、モリッシーがザ・スミスの頃からずーーーっと、大好きです。確実に自分を作った一部です。でも、大好きすぎて冷静に分析とかそういうのは出来ないので、今日はモリッシーに関する思い出のひとつをご紹介させてください。

リアルに体験? 映画「(500)日のサマー」的ストーリー

ザ・スミスといえば、映画『(500)日のサマー』を思い出す方も多いかも(そうですよね?)。主人公のトムが偶然サマーという同僚の女の子と同じエレベーターに乗り合わせたとき、トムのヘッドフォンから流れ漏れる曲を聴いて、サマーが「わたしもザ・スミスが好き」と声をかけ、そしてそこから二人の交流が始まるというストーリーです。

そんな『(500)日のサマー』のような私の大学時代の油画の授業での思い出がございます―― ある日の授業で教室に来た男性モデルさん。彼は短髪で、太い眉、どことなくモリッシーを思わせる風貌… ときめかないわけ、ないですよね? 嬉しくなった私は「モリッシーに似てますね」なんて、休憩中に話しかけたりして、交流をさせてもらいました。実際、その時出来上がった絵は、眉毛とすね毛の表現に高い評価をいただいた思い出の1枚です。やはり、モリッシーといえば “眉毛” ですから、力の入りようも違ってたわけで。

その時は、まあ、そんな感じにちょっとお話しただけでモデル期間の2週間が終わり、それきりだったのですが、その後、彼と仲が良い他のモデルさんから驚きのエピソードを聞いてしまいました。

彼がその後、私を思い出してくれたらしく、1991年9月、モリッシーがソロになって初めての来日の時、絶対に私も行くだろうと予想して、横浜アリーナの公演に行ったというのです。そして、会場の出口で私を待っていてくれたと!

もちろん、私もその場に行っていました! でも、残念ながらお会いできなかったんですよね…。これで、彼と出会えていて、その後付き合ったりしていたら、それはそれでロマンティックではありますが。実際には会えずに、それを伝えることもできなかったというミゼラブルさ…。しかし、それが、私的には逆に、ザ・スミス的過ぎる感じがして心を震えさせます。

映画を象徴する選曲「ゼア・イズ・ザ・ライト」

さて、この『(500)日のサマー』で、エレベーターで主人公トムが聴いていた曲こそが「ゼア・イズ・ザ・ライト(There Is a Light That Never Goes Out)」です。

 二階建てバスに衝突されたって
 君のそばで死ねるなら幸せ

… という一見ロマンティックなサビの歌詞ですが、実は甘々のラブソングではなく、虐げられている人達の思いや、未来への希望の詩にも解釈できたり… もっと言ってしまえば、今の香港の学生たちのデモすら、この曲の解釈の1部だと感じさせる泣ける曲なんです。ロマンチストであり天の邪鬼、まさにザ・スミス、そしてモリッシー的な1曲です。ロマンテックな始まり方をして、どんなラブストーリーが始まるのかと思いきや… そんな映画を象徴する選曲だったんですね。

モリッシー似の彼とお付き合いできる大チャンスを逃したのは惜しかった! … のですが、こんなにもお膳立てが整えられても出会うこともできず、なにかを始めることもできなかったというオチではありますが、リアル “サマー” 的で、なぜか、モリッシーに仕組まれたような気すらする、私のザ・スミスにまつわる思い出でした。

カタリベ: ユリンベ

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