回復する米中の自動車需要、その生産を支える日本の先端技術企業に注目

春先から、世界の2大自動車大国である中国と米国で自動車の需要回復が進んでいます。中国では景気刺激策の一環として政府による販売補助金などの支援策が、米国では中央銀行が決定した低金利政策で購入時の自動車ローンの金利低下が、それぞれ自動車の購買意欲を刺激しているようです。

両国とも国策として自動車産業を支援していますので、当面、自動車の販売台数や生産台数の増加が続くものと考えられます。


世界の自動車産業をけん引する両国

国内の自動車メーカーは、新型コロナ感染症の影響のために厳しい業績数値を発表しています。しかし世界に目を向けると、自動車大国である中国や米国が自動車の販売台数や生産台数を急回復させています。

2019年6月から2020年6月までの中国と米国の自動車生産台数の月別推移をみると、中国では2月に底打ち後、生産台数を順調に増やしていることが分かります。同様に、米国でも4月に反転後の回復が見て取れます。いずれも国の政策が創出した需要ですから、7月以降も途切れることなく、右肩上がりに増えていくことが予想されます。

個別にみていきましょう。中国政府は、自動車産業は関連企業が多いため自動車の購買意欲の刺激が有効な景気刺激策である、と考えています。電気自動車の購入補助金や自動車購入税の免税措置を2022年までの2年間延長、地方政府も独自の補助金を支給するなどで、今年2月以降の自動車の生産台数を急増させています。

米国でも今年の4月以降、自動車の生産台数が増加しています。主な理由は、全米の経済活動が再開されたほか、自動車購入時に設定される自動車ローンの金利が歴史的な低水準にあるためです。一般に、米国では自動車の購入時には自動車ローンを組みますから、中央銀行が主導する低金利政策が需要を刺激しているとも言えそうです。

参考までに世界の自動車合計台数を見ておきましょう。2019年統計では、生産も販売でも年間9,100万台規模です。生産台数のトップは中国で世界シェア3割弱、次いで米国が1割余です。また販売でも中国が首位3割弱、2位は米国2割弱です。ただし中国は国内市場向けが多いのが特徴ですから、あくまで台数ベースでのシェアとなりますが、両国の自動車市場における影響力の高さを知ることができるでしょう。

需要回復の恩恵を受けそうな日本企業は?

当然、自動車需要が回復してくれば影響を受ける日本企業があります。今回はその注目企業としてファナック(6954)を取り上げてみたいと思います。

同社の売上の7割近くを占めるFA(生産工程自動化システム)事業とロボット事業からは、主に自動車産業へ製品が出荷されています。同社のFA事業は、工作機械の稼働や加工精度をコンピュータ制御するCNC装置を供給しており、世界トップ(シェアは世界5割、国内7割)です。さらに、産業用ロボットの作業制御を行うサーボモータも扱っています。また、ロボット事業は自動車工場の現場で使用される大型ロボットの取り扱いが中心です。

2020年4~6月期の業績は新型コロナ感染症の影響で減収減益でしたが、そのなかで自動車業が動き始めた中国の売上や受注は増加しています。期初計画には想定外の事態だった模様で、同社は上期の売上や利益を従来予想から、上方修正しています。

今後も米中のいわば国策による自動車産業の回復が想定される現在、同社業績の収益環境は、徐々に改善し始めた模様です。下期以降も順調な収益増加が予想されます。今期は大きく減収減益としている会社計画に対して業績の上振れが予想されますし、来期以降は新型コロナ感染症の影響が緩和するなど、外部環境の改善もあって業績成長が続く可能性が高そうです。

<文:投資調査部 西川裕康>

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