SBK第5戦:インディペンデントチームのリナルディがレース1で自身初優勝。レース2はレイが接戦制す

 スーパーバイク世界選手権(SBK)第5戦テルエルラウンドがスペインのモーターランド・アラゴンで行われ、レース1でマイケル・ルーベン・リナルディ(チーム・ゴーイレブン)が初優勝を飾った。レース2ではジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が優勝し、チャンピオンシップのランキングトップをキープしている。

 第5戦はホンダ CBR1000RR-Rで参戦するインディペンデントチーム、MIEレーシング・アルティア・ホンダ・チームの体制に変更が生じた。第4戦後、MIEレーシングとアルティア・レーシングが袂を分かつことが発表されたのである。これにより、第5戦は『MIEレーシング・ホンダ・チーム』として、高橋巧の1台体制で戦うことになった。

 スーパーポールの結果により、フロントロウにはポールポジションのジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)、2番グリッドのマイケル・ルーベン・リナルディ(チーム・ゴーイレブン)、3番グリッドのスコット・レディング(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が並んだ。前戦アラゴンラウンドのレース2で、今季初の表彰台を獲得したチームHRCのアルバロ・バウティスタは2列目5番グリッド、チームメイトのレオン・ハスラムは6番グリッドに続いた。

■レース1:リナルディが歓喜の初優勝

 レース1は気温28度、路面温度45度のドライコンディションで始まった。ホールショットを奪ったのはポールポジションスタートのレイ。3番手スタートのレディングが2番手で続いていたが、リナルディが2番手を奪還。さらにリナルディは2周目の1コーナーでレイをオーバーテイク。リナルディ、レイ、レディングのトップ3、そこに4番手のトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチーム)、5番手のバウティスタ、6番手のチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が続く状況だ。

 リナルディは2周目に1分50秒121のファステストラップを叩き出しながらトップをキープ。その約0.5秒後方にレイがつける。しかしレイとリナルディとの差は少しずつ開き始める。

 4周目、4番手のラズガットリオグルを、1コーナーでバウティスタがとらえた。バウティスタは4番手に浮上。約0.8秒前を走る3番手のレディングを追う。ラズガットリオグルはさらにデイビスにも12コーナーで交わされ、6番手に後退する。

 バウティスタは少しずつレディングとの差を縮めていき、7周目にはレディングの背にぴたりとつける。しかし8周目の5コーナーで、レディングがまさかのスリップダウン。レディングはここで戦線を離脱し、バウティスタが3番手に浮上した。

 トップのリナルディは少しずつレイに対するアドバンテージを広げていき、レース中盤の9周目を終えるころには3秒以上の差を築いた。2番手のレイと3番手のバウティスタとの差は約1秒。この時点では、トップ3はそれぞれ単独走行の様相を呈している。

 3番手をキープしていたバウティスタだったが、残り5周で4番手のデイビスに接近を許す。デイビスは残り4周1コーナーのブレーキングでバウティスタを交わすと、3番手に浮上。バウティスタはデイビスを追って4番手を走行していた。しかし14コーナーでフロントを切れ込ませてスリップダウン。バウティスタはここでリタイアを喫した。

 一方、トップのリナルディは序盤にレースリーダーとなってから1度もそのポジションを明け渡すことなく、優勝を果たした。自身としても初めての優勝で、ドゥカティを駆るインディペンデントチームのライダーとしての勝利。最後には2位のレイに対し5秒以上の差を築く独走優勝だった。

 2位に入ったレイは今季11度目の表彰台獲得。チャンピオンシップのランキングトップを守った。3位は終盤の追い上げでバウティスタを交わしたデイビスが獲得した。

 4位はマイケル・ファン・デル・マーク、5位はラズガットリオグルというパタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチームのふたり。フリー走行3回目には体調不良により走行をキャンセルしたものの、予選からは出走していたアレックス・ロウズ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)は、6位フィニッシュ。チームHRCのハスラムは7位でレースを終えた。

 高橋は15位フィニッシュを果たし、前戦アラゴンラウンドのレース1に続くポイントを獲得した。

■レース2:レイとリナルディによる接戦は5連覇王者に軍配

 日曜日に行われたスーパーポール・レースは気温21度、路面温度29度のドライコンディションでスタート。好スタートを切ってトップに立ったのはレイだったが、1周目に早くもレディングがレイをオーバーテイク。レディングとレイが接戦のトップ争いを展開し、3番手にレース1ウイナーのリナルディが続く。

 レディングはそのままトップでチェッカーを受け、優勝を飾った。2位はレイ、3位はリナルディが獲得。4位には中盤にロウズを交わしたバウティスタが入り、5位はデイビス。ハスラムは8位、高橋は21位でレースを終えた。

 レース2は、スーパーポール・レースの結果によりポールポジションにレディング、2番グリッドにレイ、3番グリッドにリナルディがフロントロウに並んだ。

2020年SBK第5戦テルエル レース2

 レース2は気温24度、路面温度40度となり、路面温度が大幅に上昇した。ホールショットを奪ったのは2番グリッドスタートのレイ。2番手にレディング、3番手にリナルディ、4番手にバウティスタ、5番手にデイビスがつける。レディングはオープニングラップで早くもレイを交わすと、トップに浮上。レディングがトップ、レイが2番手でオープニングラップを終える。

 5周目、13番グリッドスタートのトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)がピットに戻り、リタイア。技術的な問題によるリタイアと見られる。サイクスは前戦スペインラウンドのレース1でも、技術的な問題によりリタイアを余儀なくされている。さらに4番手を走行していたバウティスタが、9コーナーでスリップダウン。バウティスタはレースに復帰したが、その後、ピットイン。このレースをリタイアしている。

 バウティスタが4番手から後退したことでトップ集団はレディング、レイ、リナルディの3台が形成。6周目、レイがレディングに仕掛けて何度もオーバーテイクを試みるも、レディングがしのぐ。こうした争いを後方3番手で見ていたリナルディが、ふたりを上手く交わしてトップに浮上。トップ3のポジションはリナルディ、レイ、レディングの順に変わった。

 レース中盤の10周目を迎えるころになると、レディングはやや遅れをとり、2番手のレイとの差は1秒以上に開いていた。トップ争いはリナルディとレイによって展開されることになる。レイはリナルディの背後にぴたりとつけ、オーバーテイクの機会を伺う。

 13周目には4番手を走行していたデイビスが転倒。ハスラムが、3番手のレディングと約4秒差の4番手に浮上した。一方、リナルディとレイによるテール・トゥ・ノーズのトップ争いは、残り5周を迎えても続いた。

 残り4周、レイが7コーナーでリナルディにオーバーテイクを仕掛けるも、ややラインを外してゼブラゾーンに乗ってしまう。加速が鈍ったレイはリナルディの先行を再び許す。しかしすぐさまその差を詰め、残り3周の6コーナーでリナルディのインに飛び込み、そのまま先行して立ち上がった。これでついにレイがトップに浮上。2番手に後退したリナルディは少しずつ差を広げられてしまう。

 終盤にトップを奪還したレイは、そのままレース2を制し、今季8勝目を飾った。2位フィニッシュのリナルディは、今大会3度目の表彰台を獲得。3位にはレディングが入った。この結果により、チャンピオンシップのランキングトップであるレイと2番手のレディングとの差は36ポイントに広がった。

 4位はチームHRCのハスラム。今季ベストリザルト獲得となった。5位はロウズで、ヤマハ勢はファン・デル・マークの6位が最上位。高橋は15位まで約0.8秒差の16位で、惜しくもポイント獲得はならなかった。

 また、スーパースポーツ世界選手権(WSS)に参戦する大久保光(Dynavolt Honda)は、レース1でリタイア。レース2は出走しなかった。本人のSNSによれば、レース1はタイヤの問題によるもので、レース2は健康に問題があったためだという。スーパースポーツ世界選手権300(WSS 300)では、岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)がレース1、レース2ともにリタイアとなった。

2020年SBK第5戦テルエル ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)
2020年SBK第5戦テルエル レース2はジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が優勝

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